アイスキューブちきゅう 水無川渉氏感想

ウィスキーの中に浮かぶ丸氷。
飴色の液体に仄かに漂う燻ぶりを
次第にゆるやかに、まろやかにして、華やかにする丸氷。
それは、地球の歴史における琥珀の位置と似ている。

透明な氷漬けの地球は
銀河の透き通る黒や、星の瞬き、他の惑星の一粒の艶やかな姿を
透過させて、その姿を映し返す。
銀河系と呼ばれた姿は、人間の想像の限界で
さらにその先に進む〇〇系を映し出すことはできない。
内包されたものが、外側の姿を映し出すことはできないからだ。

凍れるアースボールは
恐竜を絶滅させたり、
人々に火を灯らせて、囲み、手を繋ぎあい、物語を作る余白を与えたかもしれない。
丸氷の白い部分はきっと物語。
化石は黒板。みんなで物語を共有するんだ。

凍れるアースボールと、限りなく透明に近い青の惑星は似ているようで似ていない。
紡がれた軌跡はどちらも短いかもしれないが。
生命たちはそっと手を繋ぎあう。
火を囲んで、マンモスの燻製、未来に伝わるウィスキーを酌み交わしあい、ずっと僕らが話し合ってきた物語を
花束にして、地球に捧げるんだ。

水無川渉氏感想

松本さん、こんにちは。初めての方なので、感想を書かせていただきます。

私は下戸なのでオンザロックを飲んだことがないのですが、グラスの中で琥珀色のウィスキーに浮かぶ氷塊を地球に見立てるという視点は面白いですね。語り手の想像力は空間的にも(銀河系の彼方)、時間的にも(地球の歴史)広がっていきます。しかもそれだけでなく、そこで語られる「物語」に意味を見出そうとすることで、内容に一層深みが出たと思います。

一つ気になったのはタイトルですが、「キューブ」は立方体ですので、本文に出てくる丸氷とは形が違い、別物になってしまいます。そこは本文に合わせて「アイスボールちきゅう」のようにした方が良かったかと思います。

蒸し暑い夏の夜には、氷の入った涼やかなグラスを手に、果てしない時空に思いを馳せ、親しい人と語り合うのもいいかもしれませんね。またのご投稿をお待ちしています。

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