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えのぐのえのぐから一年経ったというわけで、えのぐ全楽曲を語りたい。

2018年5月5日 20時30分。
VRアイドルえのぐの、初のオリジナル楽曲「えのぐ」のお披露目ライブが開催された。
最先端のVR技術によって実現された、リアルタイムでの歌とライブパフォーマンスは多くの人を魅了し、感嘆させ、VRとアイドルの新時代の幕開けを予感させるものであった。
文字通り、あの日のライブこそがVRアイドルえのぐの、ひいてはVRアイドルという概念そのものの、培ってきた集大成にして、第一歩であったように思う。

あの日から、一年がたった。
VRアイドルえのぐは、この一年間様々な活動に精力的に取り組み、新たなことに挑戦し、向上心をもって突き進んできた。その中でもやはりアイドルとしてのえのぐの真髄は曲であり、ライブであると思う。
今回は、2018年5月5日から現在までに発表された、えのぐの全楽曲を紹介しつつ、えのぐの駆け抜けたこの激動の一年間の足跡をたどってみようと思う。

などと御大層なことを言ってみたが要は
私がひたすらえのぐの楽曲を紹介し「この曲、いいよね……」と語るただそれだけの記事である。
そして最初に言っておくと、めちゃくちゃ長くなった。
目次から各曲ごとに飛べるので、ぼちぼち読んでってください。読むのが面倒なら曲だけ聴いてって。

えのぐを全く知らないという人向けに、概要を紹介しておく。
VRアイドルえのぐとは、岩本町芸能社に所属する5人組アイドルグループである。メンバーは鈴木あんず、白藤環、日向奈央、夏目ハル、栗原桜子。
普段はYouTube等で配信活動をしつつ、これまでにバーチャル空間でのライブイベントや、VR体験イベントなどを幾度も開催している。ユニバーサルミュージックよりリリースされた1stシングル「ハートのペンキ」でメジャーデビュー。世界一のVRアイドルを目指し、日々邁進している。


えのぐ / えのぐ

作詞:風戸ヒカリ 作曲/編曲:Yoshihiro Suda

記念すべき、えのぐ初のオリジナル楽曲。先述の通り2018年5月5日のお披露目ライブにて披露された。
まず、何と言ってもデビュー曲の曲名が、グループ名と同じというのが最高にカッコいい。いわゆるセルフタイトル、それも曲名につけるのがいい。まさに「えのぐ」の始まりの曲という感じだ。
曲が始まると、暗いレッスンスタジオの中、静かなピアノのイントロが流れる。そしてぱっと明かりがついた瞬間、5人が歌い出し、やがてそれぞれのソロパートへと移る。
全体の曲調としては、かなりクールでカッコいい曲だ。ソロパートの静かで張り詰めた感じと、サビの躍動感にあふれた様子、そこへ重なる神秘的なコーラスが、静と動のリズムを生み出している。

ゆっくりと前面へ歩み出て来る鈴木あんずのソロで始まり、最後は奥へ歩み去って余韻を残すという構成も、ドラマチックで見事だ。
2番Aメロの、白藤環のソロで他の4人がピタッと止まっていたのが、間奏で一気に動き出し、激しいギターソロの中でカノンへ繋がる流れも見ごたえがある。
このライブでの5人の歌声は、思いの丈を込めて渾身の力で歌っているような力強さがある。特にサビでの鈴木あんずの、「その全て 受け止めたいんだ」の箇所は圧巻で、初めて聴いたときに心を揺さぶられた感覚を覚えている。
このお披露目ライブの「えのぐ」は、正直まだ荒ら削りだった。ダンスもまだ綺麗には揃っておらず、声も緊張で震えていた。だが、この時の「えのぐ」には、魂そのものを全力でぶつけてくるような迫力があった。それはきっと、えのぐの5人がこれまで歩んできた軌跡がついに形になったこの瞬間だけの、特別なものだったのではないだろうか。
「えのぐ」はこれ以降、何度もえのぐのライブで披露され、そのたびに歌もダンスも、着実に上達し、洗練されていった。ただ、技量的な成長とはまた違った点で、このお披露目ライブでの「えのぐ」は、この時だけのものだったように思う。同様に、他のライブでの「えのぐ」も、聴くたびにそれぞれ印象が異なるような気がする。披露されるたびに、新たな絵として描かれているような歌に思えた。

その瞬間のえのぐにしか歌えない「えのぐ」があって、「えのぐ」はえのぐと共に進化し続ける。まさにえのぐの名を冠するにふさわしい曲であると思う。

私が個人的にこの曲で一番好きな歌詞は「ちゃんと現実と 同じ色合い」の箇所だ。
史上初のVRアイドル、その史上初のライブは、全てリアルタイムで動き、歌い、まさに現実と同じようなステージパフォーマンスとして行われた。
そしてそれ以上に、活動の中で垣間見える、えのぐの5人の想い、熱量、決意、そこに確かにあると感じられる人の心こそが、実在感を放っていた。

ちゃんと現実と、同じ色合い。この歌詞は、VRアイドルえのぐの在り方を示しているように思える。

ショートカットでよろしく! / えのぐ

作詞:風戸ヒカリ 作曲/編曲:Wiggy

えのぐのオリジナル曲第二弾。クールでカッコいい系の曲だった「えのぐ」とはうってかわって、「ショートカットでよろしく!」は正統派でかわいらしい曲。曲調は明るくポップな印象で、歌詞も爽やかな恋愛ソングといった感じだ。
この曲の一番の特徴はやはり、前奏とサビで入る「Hey! Hey! Hey! Fu Fu!」のコールであろう。
コールのある曲は、楽しい。聴いていてテンションが上がるし、間違いなく盛り上がる。
また、もう一つ特徴として、この曲はフォーメーションが目まぐるしく変わっていく。誰か決まったセンターがいるという印象は薄く、またカラフルな衣装でどんどん立ち位置が移り変わっていくのは、見た目にも華やかだ。
ダンスも、間奏の細かく刻むようなステップや、最後のサビの「恋の時計 針はチックタック 動いたら」の箇所で時計まわりに回るなど、振り付けもかわいらしくコミカルなものになっている。

「えのぐ」がえのぐらしさを追求した曲だとすれば、「ショートカットでよろしく!」はアイドルらしさを前面に出した曲という印象だ。アイドルらしい華やかさにあふれ、場の空気を盛り上げるのに長けた「ショートカットでよろしく!」を得て、えのぐはアイドルとしてのバランスが非常に良くなったと思う。

絵空事 / えのぐ

作詞:福田うまる 作曲:川崎里実 編曲:アオヤマイクミ(monoralism)

えのぐ3曲目となるこの楽曲は、2018年8月10日に開催された「岩本町劇場プレオープンライブ〜このえのぐセットやばい〜」にて初披露された。
イントロからカッコいいギターサウンドの響く、軽快でアップテンポなロック曲だ。歌詞も爽やかで前向きになれる、疾走感とエネルギーに溢れたものになっている。
この曲の珠玉は、Cメロのあんたまパートだろう。ステージ前面にぱっと飛び出してきたあんたまの二人が、アイコンタクトを取りながらユニゾンを歌う様は、あんたまのこれまでの道のりと重なるような歌詞も相まって胸が熱くなる。
その後に来る夏目ハルと日向奈央のハモリも、とても美しい。えのぐのハモリ曲といえばこれだという印象だ。

また、BメロはOne time, Two thingと、サビへ向けて数字が上がっていく。特捜戦隊デカレンジャーのOPっぽくて、個人的に好きだ。
このように、えのぐのライブ曲として爽やかに盛り上げてくれるナンバーに仕上がっているのだが、これに加えてもう一つ述べるなら、この曲が「岩本町劇場プレオープンライブ」で披露されたというのが非常に熱い。
バーチャル空間に存在する、世界初のVRタレント専用の劇場として作られた「岩本町劇場」、その初めての公演であるこのライブは、ヘッドマウントディスプレイ着用でのVRライブ、秋葉原UDX THEATERでのライブビューイング、YouTubeでの中継という三種類のライブ体験を提供した。VRアイドルという存在が、本格的に始動したのである。
そして、上記2曲のお披露目の時は制服姿で、レッスンスタジオからの中継だったえのぐが、このライブで初めて劇場のステージに立ち、華やかな衣装を身にまとった。
えのぐが、本当の意味で「アイドル」になったのは、この時であったように思う。
「VRアイドル」と、「VRライブ」の歴史が変わったこのライブの最後には、えのぐ公式ファンクラブ「No.6」の設立と、えのぐ1stシングルの発売日の発表があった。
文字通り、絵空事が形になった日だった。

僕たちの青春ロード / ひなつくり

作詞:風戸ヒカリ 作曲/編曲:板垣祐介

4曲目となる「僕たちの青春ロード」は、えのぐの中でも日向奈央、夏目ハル、栗原桜子の三人でのユニット「ひなつくり」の楽曲。
曲そのものとしては、青春の中での迷いや葛藤、不安と、それでも乗り越えて力強く歩んでいく決意を歌い上げたものになっている。
この曲は何と言っても、歌詞がいい。深く心に突き刺さるような鋭さと、それでも前を向こうという勇気がある。言葉ひとつひとつは強めだが、曲調が明るいので、すっと胸に染み込んでくる。MVに収録されているのはショートバージョンで、それはそれでちゃんとまとまっているのだが、フルで聴くとまた格別の感動がある。
そして、この曲を語るうえで、どうしても欠かせないのが、ひなつくり自身のことだ。
えのぐのメンバーの内、元々は鈴木あんずと白藤環が、ユニット名「あんたま」で活動していた。そこへひなつくりの3人が合流する形でえのぐが結成されたのだが、この時点ではひなつくりの3人は、えのぐの仮メンバーという立場だった。
CDデビューに際し、「岩本町芸能社公式Twitterフォロワー数10000人」という条件があった。あんたまの2人はその条件を見事達成し、デビューを勝ち取ってみせた。
ひなつくりの3人も、ただ合流するのではなく、大きな目標や課題を設定し、それをクリアした時に晴れてえのぐの正式メンバーになりたいという希望があった。そして、その目標というのが、「『僕たちの青春ロード』MVの再生数100000回」である。
そういった経緯を知って、改めてこの曲を聴くとき、歌詞に込められた想いは、ひなつくりの3人の想いと重なり、いっそう心に響くものになる。
また、MVでは歌詞に色がつく演出があるが、「絶対に諦めない」や「青春ロード」の歌詞が、3色でなく5色に色づいていることに、胸が熱くなる。

余談になるが、実はこの曲が初めて披露された時、現行のものとは歌詞が少し違っていた。変更の経緯などは知る由もないが、初出で「ずっと 負い目なんだよ」となっていた箇所が、MVやCD収録版では「ずっと 負い目だったよ」と、過去形に変わっているのに気づいた時、私は心のどこかで、救われたような心地がした。
少なくとも、MVの再生数100000回を見事達成し、ひなつくりの3人が正式なえのぐのメンバーになった今では、この歌詞の変更は正しかったと思う。


ハートのペンキ / えのぐ

作詞:風戸ヒカリ 作曲/編曲:太田貴之

えのぐ第5曲目にして、記念すべきえのぐのメジャーデビュー1stシングル『ハートのペンキ』のリード曲。
メジャーデビュー曲ということで、管弦をふんだんに使ったオケもひときわ豪華……な気がする。明るく、少し切なく、それでもやっぱり前向きになれるような歌。「ショートカットでよろしく!」の甘酸っぱい青春な感じとはまた違った、少し大人びた感じのラブソングだ。
この曲はライブの時、最後のサビへ向かう「愛は深い色になってく」の箇所で、画面が5分割されて5人のカットインが入るカメラワーク演出がある。

カットイン演出、無条件でカッコいい。
また、これはYouTube側の仕様だが、YouTubeで使えるハートの絵文字の色がちょうど赤青緑黄紫の5色で、えのぐのイメージカラーに対応している。ハートのペンキが歌われている時は、YouTubeのコメント欄がこの5色のハートの弾幕で埋め尽くされ、とても綺麗だ。そういったリアルタイムでのライブならではの楽しみもある。

そして、この曲を語るのなら、MVも外せない。
UNIVERSAL MUSIC JAPANのチャンネルに上がっているこのMVは、鈴木あんずが控室から出て来るところから始まる。
イントロからは、岩本町劇場のステージ。そして一瞬で真っ白なバーチャル空間へと舞台が変わる。ステージの場面ではしっかり臨場感も出し、一方で白い空間内を自在に彩る色彩は、まさに「バーチャル」というイメージにぴったりな映像表現だ。
ひとりひとりのソロパートでは、しっかりとアップで映る。普段以上にバッチリ決めている表情は必見であり、一人一人順番に控室から出て来る演出とも合わせて、メンバー紹介的な役目も果たしている。
また、レッスンの休憩中にメンバーが見ている動画が、5月5日のえのぐお披露目ライブの映像であることや、ベンチにあんたまの2人が座っているところへ、ひなつくりの3人がやってきて5人になるという流れも、ファンには嬉しい粋な演出だ。

このベンチだが、ハートのペンキのCDのジャケ写にも映っている。えのぐの5人が並び、5色のペンキで鮮やかに塗られている。


このCDが、2018年11月28日にリリースされ、全国の店舗や通販・配信サイトに並んだ。名だたるアーティストの名盤に並んで、ユニバーサルミュージックストアの棚を飾ったのである。
えのぐ1stシングル「ハートのペンキ」。CDとして確かな形ある実績となったこの作品は、きっといつまでも色褪せることはない。

そういえば、ハートのペンキの歌詞に「RADIOから流れる あの頃のLOVE SONG」という歌詞があるが、ここの読みは「ラジオ」ではなく「レイディオ」。えのぐ界隈でレイディオといえば……。

ちょっとした小ネタだったりするかもしれない。

君がいてくれれば / あんたま

作詞:風戸ヒカリ 作曲/編曲:後藤康二(ck510)

「ハートのペンキ」のCP曲として発表された「君がいてくれれば」は、鈴木あんず、白藤環のユニット「あんたま」のデュエット曲にして、えのぐ初のバラード曲だ。
美しく安らかな旋律のなか、あんずと環が歌いあげるのは、無二のパートナーに対する、信頼と感謝の想いだ。苦難の道のりを共に歩んできた、大切な人との、これまでを振り返り、これからを想う。そんな心がじんわり温まるような歌である。
MVでは、水彩絵の具のにじむような質感が、曲調と調和して繊細な映像美を作り上げている。あんずと環の、優しく柔らかな歌い方も合わせ、心の奥底まで染み入るような感動がある。
そして、このMVのなかで、「制服姿の鈴木あんず」と、「衣装姿の白藤環」が邂逅する場面がある。
その映像が描き出しているのは、ずばり「時間」、これまで歩んできた、鈴木あんずと白藤環自身の道のりだ。

えのぐが、まだえのぐでなかった頃。あんたまですらなかった頃。2017年夏コミの初日、プロジェクトの始まりは、鈴木あんず一人だった。

たった一人で、アイドルへの道を歩み始めた鈴木あんずの元へ、白藤環がやってきて、「あんたま」が生まれた。そこからの、長く険しい道のりを、あんたまの2人は、力を合わせて乗り越えてきた。
だからこそ、「君がいてくれれば」という、あまりに率直で、そして生々しい実感の籠った歌。その優しさと温かさの裏に、「もし君がいなかったら」という、心の冷えるようなIFのある歌を、あんたまの2人は歌いきれるのだと思う。


やがて「あんたま」は「ひなつくり」と共に「えのぐ」になり、「えのぐ」は「VRアイドルえのぐ」になった。その先に、今がある。

あんたまの「君がいてくれれば」と、ひなつくりの「僕たちの青春ロード」に共通して言えることがある。この2曲の歌詞は、容赦ないほどに鋭く、心に突き刺さる強い言葉を使っているのだ。
僕たちの青春ロードでは「ずっと 負い目だったよ」という、痛切なまでの不安と迷い。「君がいてくれれば」の2番では、「もし君に 辞めたいって言われたら 頷いていた」という、ありえたかもしれない「終わり」を歌っている。
どちらも、あんたまやひなつくりを深く知っている人ほど、心がヒヤリとしてしまう歌詞だ。
それでも、この歌詞はただ強い言葉を振りかざしているのではない。彼女たちが実際に歩んできた、これまでの歴史と重なるところがあるからこそ、その想いは「嘘」にはならない。作品としての歌に、血を通わせるための真実となるからだ。
そして何より、今まさにステージの上で歌っている、あんたまとひなつくりの姿こそが、その想いの先に確かに希望があることへの、これ以上ない説得力となるからである。


Brand new stage / えのぐ

作詞:唐沢美帆 作曲/編曲:佐藤純一  (16:57から)

激動の2018年えのぐライブの締めくくりとなる、えのぐ5thライブ。神田明神ホールでのライブビューイングのなかで披露された、2018年最後の新曲が、「Brand new stage」だ。
この曲を一言で言うならば、「2018年のえのぐの集大成」だろう。
様々なアニソンの作詞を手掛け、「TRUE」名義で歌手としても活躍する唐沢美帆氏。音楽ユニット「fhána」のメンバーであり、その作曲のほとんどを担当している佐藤純一氏。非常に強力なタッグから提供された楽曲だ。
曲調は、金管の威勢よく響く、思いっきり明るく元気が出る曲。ノリのいいビートでどんどんテンションが上がっていく、心の踊るようなサウンドに仕上がっている。
歌詞もまた、前向きになれるような、希望に満ちたものになっている。そして、この歌詞がえのぐの辿ってきた軌跡や、その在り方とシンクロし、いっそうの輝きを放っているのだ。
「それぞれのカラー」と「お揃いの勇気」という、えのぐの5人のメンバーを体現するようなフレーズ。
「夢が夢で終わらないストーリー」という、えのぐの辿ってきた軌跡をなぞるようなフレーズ。
「色褪せないえのぐで ライブを始めよう」という、アイドルとしてステージに立つ高揚感溢れるフレーズ。
「時代の幕開けだよ 最初の一歩見てて」という、世界初のVRアイドルとして、VRの歴史を刻んできた矜持の込もったフレーズ。
フレーズのひとつひとつが、2018年を歩んできたえのぐの姿へとオーバーラップし、歌の持つポジティブなエネルギーは何倍にも増して心に届く。
また、この曲では「5色の奇跡」「5つの願い」や、「5つのピース繋げて 星を結んだ」といったように、「5人」を強調する表現や演出が特に多くみられる。
えのぐ5thライブから遡ること2018年11月12日、ひなつくりの楽曲「僕たちの青春ロード」のMVの再生数が100000回を突破している。この5thライブが、えのぐが正式に5人になってから初めてのライブだったことを思うと、5人の絆を歌い上げるような歌詞はいつにもまして胸が熱くなる。


そして何より、この2018年の集大成と言える曲のタイトルが「Brand new stage」というのが、最高にカッコいい。2018年を全力で駆け抜けたえのぐは、これからさらに新たなステージへ向かおうとしている。

それぞれのカラーとお揃いの勇気を持った5人が、「さあ、どこまでも行こう」と高らかに宣言するこの曲は、「VRアイドル」と「えのぐ」の未来への希望に満ちた曲だ。

YeLL for Dear / えのぐ

作詞:山崎あおい 作曲:俊龍 編曲:よる。

2019年4月7日、えのぐ結成一周年を記念したARライブ「enogu 1st Anniversary Live ~ARe You Ready?~」が開催された。このライブで披露された、えのぐの最新楽曲が「YeLL for Dear」である。
今回も豪華な面子による提供曲。特に数多くのアイドルソングを手掛けている俊龍氏の、華やかなポップサウンドが光る曲となっている。
「YeLL for Dear」のタイトルが示す通り、この曲はド直球な応援歌だ。がむしゃらに頑張っている人へ、自分の道を、精一杯生きている人へ、なかなか報われなくて、くじけそうな人へ、全力のエールを送る歌だ。
「アイドルは、人に元気を与える」というような言葉をよく耳にするが、この曲はアイドルのそういった一面を、ぎゅっと凝縮したような曲になっている。

応援歌、と、一言で言ってしまったが、応援というのは、本当はとても難しいことだ。
「がんばれ!」の言葉は、時に人を追い詰めてしまう。頑張っている人に、無理をさせてしまったり、思い悩んでいる人を急き立ててしまったりする。
未来はいつだって不確定で、その先の見えない道は、他ならぬその人自身の足で歩んでいくしかない。その不安や迷いを無視した応援は、ただの無責任になってしまいかねない。
それでも、心からの応援には、誰かの元気へと変わる力がある。そんな力が、えのぐの「YeLL for Dear」には、確かに存在する。
何故なら、彼女たちは「世界初のVRアイドル えのぐ」として、一年間を駆け抜けてきた者たちだからだ。
時代の最先端を、未来に向かって進み続けるということは、世界そのものへ挑戦し続けることに他ならない。えのぐの道のりは、常に強い逆風の中でもあった。
その道のりを歩んできたえのぐの歌だから。誰よりも、未来へ進む不安や迷いを知っているえのぐの歌だからこそ、その応援は確かな力となる。人の心に届き、不安や迷いに寄り添い、未来へ進む勇気をくれるのである。


そして、大事なことがひとつ。エールというのは、一方通行のものではない。
このえのぐ結成1周年記念ライブは、えのぐ初となる単独ARライブだった。
バーチャル空間内に現実性を作り出すVRとは異なり、ARはリアル空間へ情報を投影し、現実を拡張する技術だ。今回のえのぐARライブでは、DMM VR THEATER YOKOHAMAのステージ上へホログラフィックでえのぐのメンバーが投影され、そこへ映像演出が重なるという方式だった。(具体的な技術はリンク先参照)
重要なのは、DMM VR THEATER YOKOHAMAというリアル空間を、えのぐのメンバーと観客が共有していたという点である。同じ一つのライブ空間にいることで、「YeLL for Dear」の持つもうひとつの真髄が見えてくる。
それは、サビの場面で起こるコールだ。
えのぐの「フレフレフレ!」の歌声に合わせ、会場の観客たちも「フレフレフレ!」と、サイリウムを振りながらコールをしている。観客もまた、エールを送っているのである。
エールは、一方的に与えるものではなく、交換するものだからだ。
受け取った元気は、また応援に変えて、誰かへ送ることができる。人から人へ、心から心へと巡っていき、やがては皆の力になることが、応援の真価である。
このライブ空間で沸き起こる「フレフレフレ!」の歓声は、まさにエール交換に他ならない。えのぐから観客へ。観客からえのぐへ。えのぐからえのぐへ。観客から観客へ。えのぐと観客から、それを聴く全ての人へ。
何故なら、「歩き続けた強さ 私知っているから」。その言葉は、双方向のものだからだ。
会場を埋め尽くす歓声と、色とりどりの掲げられたサイリウムが、それを物語っている。えのぐが一年かけて掴み取った、この5色の光に溢れる景色こそが、一番の証明であり、証人だ。


リアルのライブ空間で、面と向かい合っているARライブだからこそ実現できたエール交換は、もう一つの「YeLL for Dear」。親愛なる人への、心からの応援である。

そして、今。この曲について、一番の願いを挙げるなら。
5人そろったえのぐの「YeLL for Dear」が聴ける日を、楽しみに待つ。


あとがきと、これからのえのぐへ。

「えのぐ」から「YeLL for Dear」までの、全8曲を一気に紹介してみた。
ほんの一年前まで、衣装も、劇場も、オリジナル曲もなかった。そんなえのぐだったが、一年間を全力で駆け抜け、たくさんの楽曲と、華やかな衣装と、立派な劇場と、そして何より、アイドルとして自らの足で歩んだ歴史を手にした。その足跡の中で、アイドルとしてのパフォーマンスを磨き、VRの可能性を拡げ、大勢の人の心を掴んできた。
私もその一人だ。
あの日、5月5日のお披露目ライブで「えのぐ」を見た時、私はただ純粋に圧倒された。伝わってくる本気の熱量に心が震え、これから凄いことが始まるんだと、胸がドキドキした。
そのドキドキを信じて、この一年間えのぐを追い続けて良かったと、心から思う。

VRアイドルえのぐは、凄い。それを伝えたくて、この記事を書いた。
えのぐは凄い。高いVR技術がある。心に響く楽曲がある。関わる人々の熱量がある。人の心を動かす真摯さがある。
そして何より、鈴木あんず、白藤環、日向奈央、夏目ハル、栗原桜子という、最高の5人がいる。

VRアイドルえのぐは、この一年間様々な活動に精力的に取り組み、新たなことに挑戦し、向上心をもって突き進んできた。そして、その歩みは、これからも続いていくだろう。一歩ずつ、一歩ずつ。今も、5人はそれぞれ、懸命に今日を生きている。そうやって進んで行った、今と地続きにある遥かな高みこそが、「世界一のVRアイドル」だと、私は信じている。
VRアイドルえのぐなら、この最高の5人なら、必ず世界一のVRアイドルになれる。それが、私がえのぐを一年追って得た率直な確信である。

この記事が、これまでのえのぐへのお礼と、これからのえのぐへのエールになったのなら、この上ない幸いであることを述べ、この長い長い語りの結びとする。


P.S.

えのぐ全楽曲語りとして、この記事ではえのぐのメンバーを中心に焦点を当ててみた。しかし無論、えのぐの楽曲は、5人だけで作っているのではない。作詞作曲編曲家に、ダンスの振付師、撮影カメラマン、VR技術者、そして日々の活動を支える岩本町芸能社のスタッフたちの尽力によって成り立っているものだ。
この功労者たちへも感謝を述べると共に、こうして全楽曲を並べた時、どうしてもひとつ、気になってしかたがないことがあるので、最後にこれだけ言わせてほしい。


風戸ヒカリ、一体何者なんだ?

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