見出し画像

閉じ込められた美少女たち

 資料集めは大事だと思う。やっぱり頭の中で組み立て切るのは限界があるし、どうやら人間の脳はおもったよりも信用ならないからだ。例えばいつも使っている水道だとかマウスだとか、そういうものですら意外とちゃんと描けなかったりする。

 数年前から好きな絵描きさんの絵を保存してファイリングするようにしている。もちろん分析とか、リファレンスにしたりインプットに使ったり、そういった用途の側面もあるけれど、一番の理由は違う。絵師は急に絵やアカウントを爆破するからだ。昨日まで見れてた絵を見ようとしたとき、メディア欄が虚になっていた時の絶望感を諸君らは味わったことがあるだろうか。あれはとてもひどい気分だし、二度と味わいたくない。私が初めてそれに遭遇したときは知らない外人ニキが何故かアーカイブしていてそれをgoogle driveかなんかで共有してくれたから事なきをえたが、とにかくそういうことがあってから保存するようにしている。元々収集癖があるから性にはあっていて楽しいし、たまに振り返るとこんな絵あったなぁ、これめっちゃいいよなぁなんて思える。まるで卒業アルバムをめくるように。あとは、意外と自分の好きな絵の傾向が保存している絵から見て取れたりするのは面白い。インターネットをやる人の中には自分のいいね欄をショーケースの様にしていて、厳選したものだけにいいねをし、あまつさえそこから時々削ったりしたりする人もいるらしいがあいにく私はそういったことをしないので、ダウンロードして並べるのはやっぱしぴったりあっている。
 大体は好きな絵描きさんのHN、それから一部はジャンルと、それからキャラ名(芹沢あさひだけがアイマスフォルダを侵食しつくしたので独立した)で分類している。部屋は取っ散らかっているのにこういうとこは妙に几帳面なのだからおかしな話だ。で、その中に「Photo」ってフォルダがある。良いなぁって思った写真とか資料につかえそうな写真とかを適当にしまっているフォルダなのだが、その中身がこんな感じだ。

 なんか露出が高い写真が多いのは別にやましい意味ではなく本当に参考資料として強いからだ(こう言い訳がましいと逆にやましい意味しかなさそうだが)。それで、最近気づいたことがある。このフォルダの中身、顔がいい女性の写真ばっかになりつつあるのだ。まぁ当然といえば当然の結果なのではあるが、私はそれに思い至った時、ひどく怖くなり、自分の立っている場所の危うさを自覚した。だってこれ、シリアルキラーが次のターゲットの目星をつけているみたいだったから。猟奇犯は丁寧に次の標的を選ぶ、大体なにかしらの強いこだわりやコンプレックスを抱えているからまずは容姿を選別し、そして実行に移すにあたる周りの人間関係を鑑み、資料をあつめていく。フィクションに出てくるシリアルキラーのテンプレートだが、私のこういは完全にこれをなぞっていく。見かけが好みの女性の画像を保存し、その周りのアカウントを見たり、そのアカウントの普段のツイートを見て居たり。手が血濡れになっていないだけで、完全に異常者のそれと一致している。それに気が付いた時、正常(に見える人間)と異常(になってしまった人間)の紙一重さ。立っている崖のもろさ危うさをひしひしと感じ、恐ろしくなったわけだ。

 こうやって我が身に潜む化け物におびえながら、今日も私はインターネットを眺めている。気になる絵を保存する。かわいらしい女性の写真を保存する。震えた指先と、半分は沈んでいる脳が、ツラのいい女を堆積させていく。来るべき終末に、巻き込まれる候補を増やしていく。

 手枷をはめられたのち、HDDを確認されたならば、それは確固たる証拠の一つへと変貌することだろう。

(1538文字)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?