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”黒岳石室と僕たちを巡る話” 第6話 公衆電話ありませんよ

黒岳石室Q&A5

夏山シーズン真っ盛りですが、黒岳石室へは行きましたでしょうか?今回は本題に入る前に黒岳の様子をお届けします。

黒岳ロープウェーの五合目駅では100周年記念のパネルが展示されるなど、100周年仕様となっいます。

100周年記念木札(¥770-)が売られていて、売上の10%は登山道整備に寄与されるそうです。

黒岳石室まで行くと、ここでしか買えないオリジナルグッズも販売しています。


公衆電話ありました

さて、それでは今回の本題に入りましょう。黒岳石室に実際に訪れた人は見たことがあるかもしれませんが、石室の受付のある部屋の壁に「公衆電話(ありませんよ)」という謎の看板が飾られています。いったいこれはなんなのでしょうか?実は、かつて黒岳石室に公衆電話が設置されていた時期があったのです。

この公衆電話が最初に設置されたのは、『上川町史』によると1963(昭和38)年のことだそうです(1962年とする資料もあります)。この時に公衆電話とあわせて遭難防止灯と遭難防止サイレンも設置されたようです。少なとも1984(昭和59)年までは毎年設置されて、夏山シーズンの風物詩だったようです。

黒岳石室の公衆電話を物語る資料として当時の新聞記事が残されていますので見てみましょう。

黒岳から”声の便り”OK
本格的な夏山シーズンを迎えて、上川電話局(上川町本町)は五日、大雪山系黒岳の石室(標高一、九〇三メートル)に恒例の臨時公衆電話を設置した。
夏山から「声の便り」と事故発生時の緊急連絡用に、毎年置かれており、石室と同局間約二十一キロは、持ち運びできる無線機によって電波で運ばれる。常設機として道内で一番高い場所にあるのは東川町旭岳温泉の旭岳ロープウェー姿見駅(一、六〇〇メートル)の公衆電話だが、石室の臨電はこれより三百メートル余り上回っている。
開設期間は初雪が降って石室が閉鎖される九月上旬までで、昨年は三四〇回利用され、料金は約八万円だった。一件当たり二百三十五円という勘定。道内向け五七%、道外四三%の比率。五日はさっそく、訪れた登山客らが受話器を持ち「雪渓やお花畑がきれいよ」と親元や友人宅に声を弾ませていた。電話番号は上川01658(2)1598。石室からかけるときは、管理人に申し込んだうえ、同局管内の上川、愛別両町へはダイヤル直通、それ以外には100番(交換手扱い通話)を通してかける。

北海道新聞 1984.7.6

今となっては街中でも、見かけることが少なくなった公衆電話ですが、当時に無線を使った公衆電話があったということも驚きです。具体的に何年まで設置されていたのかは定かではありませんが、もともと緊急連絡用に設置されもののようなので、無線機などが普及するにしたがって設置する意義が薄まって、設置されなくなったのだろうと想像できます。

今となっては黒岳山頂であれば携帯電話で電話をかけることができるので、あまり新鮮味はありませんが、当時山の中から電話をかけるというのはなかなかできなかった体験だったでしょうから、登山客にも利用できるようにしていたというのは粋な計らいですね。

ということで、黒岳石室にかつてあった公衆電話の紹介でした。また、次回をお楽しみに!

▼ 第7話 ▼

(準備中)


参考文献

『上川町史』
『北海道新聞』
吉田友好『出典準拠[増補]中央高知登山詳述年表稿』


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