小説 田舎行政書士 BCP策定第9話

小説 田舎行政書士 BCP策定第9話
ついに、江尻は「小説 ペスト」に「解決」を見つけた。

奇しくも、福島の感染症対策センターへ出発する日だった。江尻は「解決」を自分の心の中に固く封印した。

「あなた、自分が一番大切なのよ。死んでしまったら、元も子もないわよ。」車のエンジンをスタートさせ、車のドライブ席の窓をあけると妻が心配そうに言った。彼女は「実存的に生きる」人だった。

https://www.youtube.com/watch?v=ac--3anyeAI
江尻は車をスタートさせると、カーステレオのスイッチを入れた。テレビドラマ「白夜行」のOSTが流れ出した。

小雨が降りだした。インターチェンジから常磐道から磐越道へ。途中、阿武隈高原パーキングで休憩。郡山インターで東北道へ。

安達太良パーキングで再度休憩。福島の感染症対策センターに着いたのは午前10時半。感染症対策センターは県庁正庁の5Fにあった。会議室を急遽、感染症対策センターに急ごしらえしたようだ。

感染症対策センターに入ると、江尻は、東日本大震災の時のオフサイトセンターを思い出した。この時も江尻はオフサイトセンター県出向職員の最高責任者に任命された。また、貧乏くじを引いたわけだ。

「行政書士の江尻先生ですね。」事務員の若い女の子がやって来て、江尻を事務机に案内した。事務机には、真新しいパソコンがあった。

「江尻君じゃないか。」パソコンを操作していると、背後から声がした。

「渡辺君かい?」江尻は声をかけた男の顔を見た。
「そうだよ。」
高校の医学部進学コースの同級生渡辺だった。渡辺は1浪して県立医大に進学した。

「へぇ~ 県立医大の教授をしているのか。」江尻は差し出された名刺を見て驚きの声を上げた。渡辺は江尻の席の隣の席に腰を降ろした。

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