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【創作】Iris

こんばんは。

今日は急にちょっと創作をしたくなってPCに向かっています。

今回はずっと前から書きたかったとある楽曲をモチーフとした作品です。

この楽曲を知っている人であればかなりすぐピンとくるのではないでしょうか。

久しぶりの創作ゆえ、色々と粗が目立つかもしれませんが、よろしければ読んでみてください。
もし感想とかコメントいただけましたら、今後の励みになりますのでお願いしたいですっ

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「君、面白いね!」
「ぷっ…… あははははは!」

ふわふわと揺れ動く柔らかな光は、腹の底から楽しそうに笑い声をあげた。

「どうしてそんなに笑うのですか?」

「いやいやごめんね。いままでにない種類の願いだったもので」

ひぃひぃと喘ぎながら光は言った。

「ボクは真面目なんです」

「わかってる。わかってるよ。君のその願いに嘘偽りはないことは私が一番知っている」

「じゃあどうして」

「念の為聞くけれど、君は私がどういう存在か知っているのかい」

「はい。あなたは世界を滅ぼす力を与えてくれる存在です」

「そう、ちゃんと理解しているね」
「そして君は、私に"その力"を与えるように懇願した」

「そうです」

「その理由は?」

「ボクが、ボク自身を信じられる自分でいられるように」

「…………き……君は…… そんなにまっすぐな目で私をみ……みるんだね」

柔らかな光は、より一層揺れを大きくして、
吹き出すのを必死に堪えながら言った。

「ボクは、心からそれを望んでいるから。 それの何がおかしいんですか」

「あのね。この世界を滅ぼすっていうのは、とってもオオゴトなんだよ。
 罪もない人々が大勢死ぬことになる。
 今まで私は2,954,769個の世界を滅ぼすのを手伝ってきた。
 力を欲した人たちは、その世界の人々に恨み憎しみを持っていたり、
 世界の真実に絶望したり、残酷な輪廻の世界を救うためといった
 ある種の大きな使命を持っていたんだ。
 どんな犠牲を払ってでも、それを遂行するという覚悟とともにね」

「でも君は違った。
 本当に澄んだ目だ。
 そしてその理由が、自分自身を信じられるようになんて、
 あまりにも恥知らずで、世間知らずで、向こう見ずで、
 独りよがりで。
 あまりにも純粋だ」
「畜生の分際で、よくもまぁそんな願いをまっすぐな目で言えたものだね」

その光の姿はみえない。
けれど、もし人間の形をしていたのなら、腹を抱えて床をのたうち回ってるんだろう。
でも、畜生なんて言い方はひどい。

ボクはこの世界を本気で滅ぼそうとしている。

ボクを大事にしてくれていたであろうあの子が、
この世界の痣になってしまった。

あの子は最期まで、自分にだけ矛先を向けた。
あの子が弱かっただけなのかもしれない。
でも、どれだけの苦痛を与えられても、その矛先だけは外に向かなかった。

あの子はずっと泣いていた。

ボクがあの子の近くに行くと、どんなときでも、優しく抱き上げてくれた。

あの子は、なにもしていないボクに「ありがとう」と何度も言った。

ボクは最初はよくわからなかった。

『ボクはなにもしていないよ』

そういってもあの子は、ボクに毎日「ありがとう」と言った。

あの子はボクに毎日ご飯をくれる。

あの子はボクを毎日なでてくれる。

あの子はボクに毎日語りかけてくれる。

だからボクはあの子が大好きだ。

でも、世界はあの子が嫌いみたいだった。

あの子は「いつかきっと」「我慢すれば」って言ってた。

でもボクが最期にあの子にあったときに「どうして」って言ってた。

そして「さよなら、またね。 ごめんね」って言って、世界の痣になった。

ボクはこの目に映る全てが憎く感じた。

ボクはそれを最初は怖く感じた。

だって、あの子は最期までだれかを憎んだりしなかった。

ううん。 憎んでたのかもしれない。

でもそれを、ボクには言わなかった。

それをボクが口にするのは怖かった。

だけど思ったんだ。

あの子がこの世界から嫌われる理由なんてないはずだって。

そう思ったら、この変な世界を憎むのは当然なんじゃないかって。

ボクの心がそう言ってる。

いまここであの子がいなくなったことが正しいなんて思いたくない。絶対に。

ボクはこの気持ちを誇りに思う。

だから、ボクがボク自身を信じられる自分でいられるように。

この世界を滅ぼしたい。

あの子がいたんだって。

あの子が辛かったんだって。

声を上げてこの世界に教えてあげるんだ。

この世界がかき消してきた、
あの子の笑い声も。
泣き声も。叫び声も。

全部全部この世界に聞かせてあげる。

迷いなんてない。

「いつかこの日を悔やむことがあるかもしれないけど、ボクはこの世界を滅ぼしたい」

「あっはっはっはっはっは!!!!
 いつかこの日を悔やむときがくる?
 あのね、君はこの世界を滅ぼすんだ。
 それを悔やむことすら、君はもうできなくなるんだよ」

あ、そっか。

「最初は憎しみから滅ぼそうと思ったんだろうけど、
 最終的に自分自身を信じたいなんてエゴ丸出しでくるもんだから、
 おかしくておかしくて」
「いいよ。こんな滅ぼされ方をする世界があってもいいだろう。
 その願い、叶えてあげる」

ボクの願いは叶えられる。

ボクのせいで、沢山の人が死ぬんだろう。

でもボクはそれで構わない。

ボクは信じられる自分でいたい。

『さよなら、またね』

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