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ミュンヘン映画祭(1)Alanis:息子に乳を飲ませながらブエノスアイレスの野蛮を生き延びてゆく女性の姿を描く

一歳半の男の子を連れたブエノスアイレスの売春婦の話。警察のガサ入れに合ったり、客をとったりするシーンの合間に、繰り返し授乳のシーンが挿入される。男の子の役を演じたのは主演女優の本当の子供だったそうだ。乳離れする前に撮影を終えなければならないので大変だったとか。

「仕事場」にしていたアパートを失い、切羽詰まった挙句に路上で客を拾ったあと、その辺りを縄張りとする他の売春婦たちに追いかけられる。深夜のアスファルトに響くハイヒールの足音。まるで野獣の王国でも観ているかのような迫力だった。

セックスシーンでは男がひたすら卑語を連発しながら腰を振るのだが、スペイン語の単調だが熱を帯びた響きが、教会のミサでの祈祷の響きに似ていて、おかしくてやがて哀しい。

ドキュメンタリー風に淡々と母子の姿を追いかけた作品。ストーリーに救いはないのだが、それを描く眼差しには愛と優しさが感じられる。



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