Camino Finisterra: 〈地の果て〉まで歩く 4 四元康祐 2019年5月5日 19:08 スペインの巡礼路 Camino de Santiagoは、一般にはガリシア州の州都 Santiago de Compostelaの大聖堂を最終目的地とするが、 実はそこからさらに西へ90キロ、大西洋に突き出した岬の突端まで歩くというルートがある。 いわばそれが有終の美、そこまで行かなければ画竜点睛を欠く。 10数年前に歩いたときにはSantiagoでもうへとへとだったので諦めたけれど、 いつか機会があればとずっと思っていた。 西の果ての海の彼方を目指すのは、 仏教の「西方浄土」の考えにも通じるのではないか。 その向こうにまだ新大陸アメリカがあるなんて夢にも思わなかったころの、 人の眼でその海を見てみたい。 道沿いに絶え間なく現れる巡礼路のトレードマーク、黄色い矢印を追った。 巡礼者用の宿舎は Albergue と呼ばれる。共同のキッチンや洗濯場がついていて、一泊数千円で泊まらせてくれるのが有り難い。 二段ベッドが並んでいる共同部屋が基本だが、予算に余裕があれば個室も可能だ。 平均すると10キロ間隔くらいで集落があるので、体力と日程に合わせて10キロの日、20キロの日、覚悟を決めて30キロの日。 ずっと歩き続けていると、 自分が自分の中から歩みだして、 あたり一面に遍在するみたい。 小川の水の流れる音や、 車道の道端で排ガスに吹かれて揺れる雑草に、 小さな自分(たち)が宿っている。 着いたら何を食べようか。 花びらの模様が出来るワインがいいワイン。 どんな旅も、いつかは必ず終わるということを知るために、 歩く旅。 これは道中で知り合ったドイツ人から貰った枝、でも 結局名前は聞かなかったな。 墓地を行き過ぎ、 地の果て(Finisterra)を、 故郷と呼ぶ人とすれ違い、 旅するサンチャゴ、サンテティアゴ、聖ヤコブ、 3時間かけて陽が沈むのを見送った。 4 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート