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ミュンヘン映画祭(9) M:字の読めない男と声を出せない女の愛の物語


女はバカロレアの受験を控えている高校生。通学の途中、同級生に吃音を嘲笑されているとき不良っぽい男に道を訊かれる。女は手帳に道順を書くが、男はそれを受け取ろうとしない。観衆はその理由が男の文盲にあることを知っているが、男は女に対しては頑なに隠し通そうとする。その代わり、女が吃音を乗り越えて喋れるようになるよう親身に励ます。

吃音の女を演じるSara Forestierが監督も務めている。自身の若い頃の経験に基づく話のようだ。文盲の男を演じているのは、本業がコメディアンだそうが、女を助けることはできてても、自分自身が密かに抱える問題をどうすることもできない男の優しさと怒りと悲しみを見事に演じている。

二人が近づき、助け合い、そして傷つけ合う過程の中で、それぞれの問題の背後にある心理的な傷跡が明らかになる。「自分について語ろうと思うと、舌が縛られるようになる。相手のことだけを考えているときは、自由に喋れるのに」という女の言葉が印象的だ。言葉を中心に、心と声と文字の縺れ合う様を描いたドラマ。タイトルの「M」一字の意味は、観てのお楽しみに。



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