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CLASS-KJ

「JK?」
「KJだ」
 拳を上に向ける形で見せるから袖のマークが逆さなのだけど、そんなことには頓着せず犀乃さんは言った。
「これが「ウチら」の制服にだけついてる」
 そういえばクラスの誰かがそんなことを言っていた気がする。興味が湧かなかったので忘れてた。だって、印なんかなくても犀乃さんたちは十分他と違ってたから。
「“問題児”の印だな」
「え、あ、いや」
 冗談とも自虐ともつかない顔で言うから、反応に困る。基本的に犀乃さんの表情は読みにくいのだけど。
 でも犀乃さんはなんで、こんな場所でこんな話をしているんだろう。「復興途上地区」の廃墟で、しかもこんな状況の中で。
 階下で何かが砕ける音がして、建物が揺れる。アレが私たちを探して暴れているんだ。
「大丈夫だ。今、部分展開の許可が出た」
「ぶぶん……?」
「あたしは強制的に折り畳まれて今の形をしている。琥珀色の巨人が人間体をとる時と同じ技術で」
「琥珀色の巨人……ビヨンドマン?」
 二年に渡る連続超越生物災害から人類を救った、謎の巨人。この廃墟街も、その超越生物、一般的には怪獣と呼ばれる存在の被災地で、その怪獣もビヨンドマンによって駆除された。
「何の話を……」
 私は青い顔が奥の闇から現れたのを見て言葉を飲んだ。
 アレだ。全長数メートルの、異形の怪物。
「ひっ」
 それは大きさこそ違え、かつてここで破壊の限りを尽くした怪獣にそっくりだった。
「肉片でも残ってて、さっき食われた連中がここで「育て」てたのだろう。人間は意味不明なことをする」
 この状況でも淡々としている犀乃さんの額と両腕が光りだして、私は目を剥いた。
「角と腕……十分だ」
 犀乃さんの口元が少し歪んだ。笑み?……初めて見た。
「犀乃さんてビヨ……」
「ちがう」不服そうな顔も初めて見た。
「あのマーク、KJは」
 額から伸びた光が大きな角を形づくる。太い光の腕から五本の爪が伸びる。
「怪獣って意味だ」
【続く】

#逆噴射小説大賞2022

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