見出し画像

原田仁・沼田順@Bar Isshee 雑感

この日の昼間は勝井祐二さんのランチライブに行っていたんだけど、夜も暇だったのでハコのスケジュールをいろいろと調べてみた。興味深い現場がたくさんあるなかで選んだのがこのライブである。沼田さんは例の一件があったが、今では音楽活動も無事に再開されている。先日の秩父4Dでもライブを拝見したがソロでもじっくり観てみたいと思っていたし、仁さんはやっぱりこのエピソードに尽きる。

その後すぐにCDを購入していつか生で体感する機会をとうかがっていたのだ。

移転前も移転後もまったく行ったことがなかったBar Issheeに初潜入。とりあえず勝手がわからないので開場時間に合わせて入店したら、まだ出演者とマスターしかいなかった。出足が鈍いのか?と思いつつとりあえず席に座って開演を待つ。店内ではgoat「New Games」が流れていた。大好きな曲なので心がぴょんぴょんした……のもつかの間、次第にその音楽は俺の精神を蝕みはじめた。何故か?お客さんが全然こないのである。このままだと俺は一人でノイズパフォーマンスと対峙しなければならないのか?沼田さんも仁さんも俺だけのために演奏をしなければならないのか?そもそも今回のライブは投げ銭制である。これはもうお二人に恥をかかすわけにはいかないんだから、終演後には財布ごと置いていかなければならないのか?佐々木敦が言うところの痙攣する反復と増殖するズレがクールに発狂するgoatのグルーヴは、閑散とした店内でひたすら無慈悲に鳴っていたし、ポツネンと一人佇む俺の緊張感がえげつない。ちなみに開演時間くらいには他の客もちゃんと来たんだけど。それではここで1曲どーぞ。

話を戻そう。
先行は仁さん。机の上にはカオシレーター。ノンエフェクトのマイク1本で声だけでノイズパフォーマンスをするんだけど、殺傷能力の高さが尋常じゃなくてヤバかった。ダミ声、デス声、破裂音、ホーメイなどをごちゃまぜにして強力な衝撃波を生み出していたと言えばいいのか。形容しがたい怒涛の叫び。しかも、腹筋すげえピクピクしてる。この日の音の大きさは調べによると120db。飛行機の爆音に相当するとのこと。先日、ハコで耳を痛めて以来、個人的に耳を大事にしようキャンペーンを実施していたのに。まあ、目の前であんなに喧嘩上等!山をも砕きかねないノイズを聞かされたら耳ふさげないよね。むしろカウンター覚悟で突っ込むよね。血が滾るよね。で、死ぬよね。あーうー。大往生。ちなみに、机の上には譜面らしきものが置いてあって、たまにそれを見ながら演奏してたんだけど、てっきり歌詞でも書いてあるのかと思ったらこうなってたんだ…Σ(゚д゚lll)

後攻で沼田さん。対称的に机の上にはエフェクターてんこ盛り。で、のっけからクソでかい砂嵐ノイズが襲いかかってくる。退院したとはいえここまで大音量を鳴らして大丈夫なのかと心配するも、御本人はどこ吹く風とばかりに音の粒子の密度を増していく。ノイズって基本的には終わるまではずーっと爆音が鳴りっぱなしで、完全に音が消えてなくなった時にはこちらも緊張の糸が切れてふにゃっとなるんだけど、今回のライブでは途中でザクっと音が消える瞬間があった。で、案の定俺がふにゃっとなったのを見越して爆音のリターン喰らった時は、豪快に耳から血が噴き出した。後述によるとこれは狙ったものではなくて、エフェクターがコントロール不能になったゆえの奇跡だったらしいんだけど、結果として、ノイズ拡張姿勢とノイズ抑制姿勢を交互に繰り返すストップゴー政策としてばっちりハマっていた。

最後に行われた両者のセッションは、あらゆるものを覆い尽くす巨大な砂嵐と、どんなものでも貫くことのできる波動と、どっちが強いでしょうという「ほこたて」のような展開でおおいに脳天を派手にひっかかれた。凄まじい夜だった。

終演後にはマスターからちょっとしたものをもらったりして、いい気持ちのまま帰ろうとした時に沼田さんが声をかけてくれた。
「うるさい音ですいませんでした。今日はありがとうございました」
あのー、俺はそのうるさい音が好きで来てるんですよ…Σ(゚д゚lll)沼田さんの人柄に萌えちゃうじゃんか。また、遊びに行きますね。

(今回の投稿では、出演者、マスター、当日いたお客さんのツイートも参考にさせていただきました。もし不都合とか事実の捏造があればご一報ください)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?