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隠れ家の不良美少女 111 寂しさを……

希和は嬉しそうにたこ焼きを焼き始めた。
たこ焼きの材料と一緒に買ってきたオードブルを出してハイボールで乾杯する。
「こんな時は希和もお酒を飲んでみたいなあ」
「ダメだよ、まだ」俺は笑った。

「希美子さん、さっき車の中で希和ちゃんから色々と話を聞いたよ、御免なさい何も出来なくて」
「そんなこと言わないで、私はずっと幸せだったから」
「そうだよお父さん、希和もお母さんも幸せだったよ」
「ありがとう」和也さんは目頭を押さえた。

それから和也さんはあの後の大変だった事や、今の家族の事を話した。
希美子さんは少女の様な顔でそれを聞いている。
お酒も入り、和やかになってきた。
希和は、俺との出会いや不良から救ってくれた事などを話した。
「そうだったんだ、友希くんありがとうね」和也さんはお父さんの顔になった。

「友希さんはお酒飲んだから今日も希和の部屋に泊まるでしょう?」
和也さんはチラッと俺をみる。
「あのう…………」俺は言葉に詰まった。
「お父さん、心配しなくても大丈夫、だって友希さんは何にもしてくれないもん」
頬を膨らしている。
「希和!何を言い出すの」希美子さんが恥ずかしそうだ。
「お父さんは……お母さんの部屋に泊まる?」
「いや……それは……」和也さんが言葉に詰まるた。
「希和、何言ってるの!奥さんに申し訳ないでしょう」
「寝るだけだったら良いじゃん、いっぱい話したい事があるんじゃないの?」
「それは……………………」

結局和也さんは近くのビジネスホテルに泊まる事になった。
「今夜はとても楽しかった、ありがとう」和也さんは深く頭を下げる。
タクシーが来た。
希美子さんは名残惜しそうだ。
「お母さん、一緒に行けば」
「そんな事………………」
希和は希美子さんを座った和也さんの横に押し込んだ。
「お父さん、お母さんをよろしくね」
「和也さんは恥ずかしそうに頷いた」
「希美子さんは頬を赤く染めたまま」固まっている。

希和はタクシーを見送くりながら漏らした。
「お母さん、今まで寂しかった分を一杯埋めてもらうんだよ」そう言った。

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