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隠れ家の不良美少女 178 奏太くんの敬礼

今日もSONEレコードのスタジオでは、レコーディングとリハーサルが続けられている。キナコは気になる音があるとメンバーをチラッと見た。
その瞬間、メンバーは必死にキナコが納得する音やフレーズを探す。
アレンジャーさんも様子を伺いいながらアドバイスしている。
一曲一曲がキナコが求めるサウンドと構成になってきた。

リハーサルになるとキナコはリズムにのって動きながら歌うようになっている。
バンドのメンバーもキナコに引っ張られるように楽しそうに動き出した。
まるで何年も一緒にやってるメンバーのようだ。
既にメンバーとの信頼関係は深くなっているように見える。

スタジオの外では紹介された友里香さんが早速長谷川さんと色々と計画を練っていた。
奏太くんもリハーサルの様子を撮影している。

「良い方にマネージャーになって頂きましたね」長谷川さんが微笑んだ。
「ありがとうございます」友里香さんはニッコリお辞儀した。
俺は友里香さんが上手く長谷川さんと繋がってくれた事にホッとする。

「では早速配信の予告を作って頂きましょう」長谷川さんは俺と奏太くんを見た。
奏太くんは少し驚いたが、「はい、良いものを作らせて頂きます」そう頷いた。

「それから、SONEグループの映画配信でキナコちゃんのドキュメンタリーを配信できるように申請しておきます、今の話題性と実績なら問題なく許可が降りるでしょう」長谷川さんが力強く頷いた。

「良かったわね奏太くん、初めての監督作品が世の中に出るわね」友里香も微笑んだ。

「ええ!…………」奏太くんは声を失って立ちすくんだ。
「友希さん………俺………夢が叶うんですね………」涙をポトポトと落とし、拭く事も忘れて俺を見た。
「やったね奏太くん!」俺は親指を立てる。
「友里香さん、ありがとうございます」友里香さんの手を握った。
「頑張って『ドキュメンタリー賞』を受賞できるような作品を作ってね」友里香はニッコリ頷く。
「………………」奏太くんは言葉に出来ず、敬礼した。
俺は少し可笑しくなって目を逸らした。

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