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隠れ家の不良美少女 11 泥棒

翌週土曜日の昼にまた天空カフェへやって来た。
今日の天気予報で午後は雨の予想が出ている。お客さんもまばらだ。
「おっ、泥棒さんが来たな」新くんがニヤついている。
今日は希和も来ていないようで少しホッとした。
「聞いたよ希和ちゃんから」
「えっ?何を」
「不良を叩きのめしたらしいじゃん、しかも『希和は俺の彼女だから手を出すな!』なんて言っちゃって」
「そう言わないと不良から解放されないと思ってさ」
「確かに不良からは解放されたみたいだね、でも希和ちゃんの心を掴んじゃったちゃったみたいだぞ」
「何それ?」
綾乃さんがコーヒーを持って来てくれた。
「おはよう泥棒さん」
「何ですかそれ?」
「希和ちゃんのハートを盗んだでしょう?ちゃんと責任とってあげてね」笑って戻っていった。
「しかも高卒認定受かったら(仮)取ってあげると言ったらしいじゃん」
「まあね、もし大学にでも行ったら視野が変わるかなあって思ってさ」
「真面目に勉強しようとしてるよ」
「へー、そうなんだ」
「おかげで家庭教師の仕事が増えちゃったよ」
「えっ……ごめん、俺が何とかするよ」
「別に暇な時はいいよ」

「綾乃パパの会社の方は大丈夫?」
「ああ、大詰めになってるから、来週は高崎に泊まり込みかも」
「そうなんだ、大変だね……色んな意味で」
「うん」

綾乃さんがちまきを持って来てくれた。
「友希さんさあ、希和ちゃんを彼女に昇格してあげたら?」
「何言ってんですか、まだ16歳ですよ、犯罪じゃないですか」
「大丈夫よ、もう親の承諾があれば結婚出来る年なのよ」
「勘弁してくださいよ」
「希和ちゃんは可愛いし一途よ」
「年が離れてるし…………」
「あら、若い方がいいじゃない」
「そんな無茶な」
綾乃さんはニッコリと戻っていった。

少し雨が降り出し始めた。ひどくなる前にガレージハウスへ戻る事にする。
「じゃあまた」新くんに手を振ってバイクに乗り戻ってきた。
雨がバラバラと音を立てて降り出す。
空は灰色になり憂鬱そうにしている。
中に入って珈琲を入れた。
ポトポトポト……バイクの音が聞こえる。
「まさか…………」嫌な予感がした。
「友希さーん!」予感は的中だ。
黄色いレインジャケットを着た希和が立っている。
「何やってんだよこんな雨の日に」
「だって会いたかったんだもの、中に入れてよ」
「たく…………」バイクごと中に入れる。
レインジャケットを脱ぐと中はセーラー服だった。
「何だその格好は?」
「友希さんJKは好きかなあって思って」少し微笑む。
「殴るぞ!」苛立って思わず不機嫌になる。
「嘘ですう!だって洋服いっぱい持ってないもん、だからせっかく買ったセーラー服がもったいないと思って普段着にしてるの」
「そうなんだ、でもお前洋裁ができるから自分の服は作れるんじゃないのか?」
「ええ、洋服の生地とか高いしいろんな物もいるし、手間も考えたら既製品の方が絶対安いよ」
「そういうもんなんだ……」何となく納得した。

「濡れちゃって少し寒い」
おれはコーヒーを入れるとミルクを足して希和に渡した。
「ありがとう」両手で温まるようにして飲んでいる。

「この家の中を全部掃除してくれたら5000円なんてアルバイトはどうだ?」
「本当?」
「ああ、週に一回でも無理じゃなければやってくれ、そしたら1ヶ月もあれば1着くらいは服が買えるだろう?」
「ううん、もっといっぱい買えるよ」
「じゃあ、そうしな」
「ありがとう」嬉しそうに微笑んだ。

雨は本降りになってきた。

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