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隠れ家の不良美少女 211 希美子さんの話

K Kステージでは忙しく衣装作りが進められている。
希美子さんは細かい指示をしている。その様子を奏太くんは撮影した。
未来ちゃんは業務用ミシンや設備を驚いて見ている。
希和の部屋からK Kステージに来るとかなりギャップがある。

デザインルームの広いテーブルで希美子さんは奏太くんのインタビューを受けた。

「キナコさんには父親の事は話されなかったんですか?」
「はい、大人になって話せる時が来たら話すつもりでした」

希美子さんはロブスターズとの出会いから現在に至るまでを淡々と話した。
親に大反対されても希和を産んだこと、そして生きる為に必至だった事。
幼い希和に色んな事を我慢させ、何とかこれまで生活してきたことなどを話してくれた。
奏太くんと未来ちゃんはやはり涙を滲ませて聞いている。
希和も自分を苦労して産んでくれた事に少し涙ぐんだ。

撮影が無事に終了した。

「友希さん、キナコちゃんのドキュメンタリーを見た人は泣いちゃいますよ」
「そうだな…………俺も始めて希和の部屋に入った時は言葉を無くした、それに唯一の贅沢が安いしゃぶしゃぶ屋さんだったときは胸が詰まって食べれなくなりそうだった」
「そうだったんですか」奏太くんと未来ちゃんはまた涙ぐんだ。

希美子さんと希和は不思議そうにしている。

「希和は何だか恥ずかしくなってきたよ」
「そうなの?」希美子さんが不思議そうに聞いた。
「だって写真集では水着なんだけど、下着に見えるやつでパンツを見られてるような気がしたし、今度は自分の部屋を見られてしまうし、なんか裸にされてく感じ」
「そうね………でも表舞台に上がると言う事は、どこか自分を切り売りするようなものよ」
「そうなんだ…………自分を切り売りする事なんだ」
希和と希美子さんはお互いを見て納得したようだ。
俺は何も口を挟まなかった。

「友希さん、心配があるんですが…………」
「何?」
「おそらくドキュメンタリーを見た人はキナコちゃんを希和ちゃんだと分かると思います」
「多分そうなるだろうね」俺は頷く。
「そうなると、自宅にマスコミや色んな人が集まって来ますよね」
「そうなるだろうね…………」
「大丈夫ですか友希さん?」
「実は、そうなると思って考えてた事があるんだよ」
俺は希和と希美子さんを見た。
二人は不思議そうに首を傾げる。

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