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軽い靴こそが正義だと信じ込んでいた。

中学生の思考では、「足を速くするには?」の問いに対して「1番軽い靴を履く!」と元気に答えるのが精一杯だったのだ。


運動靴に限らずバスケットシューズもメッシュの多い、軽いタイプを選んで使っていた。


受験シーズンには少し足元が冷えてきて、正直履きたくなかったのだが、「足が速くなる」という信条のみで靴紐を結んでいた。


東京の私立校の受験会場でも変わらず、メッシュの靴を履いていた。
私立だが5教科受験であり、県立志望の私にとって練習になると塾で勧められた学校だった。


順調にテストをこなし、昼休憩になった。

ご飯を食べた後、トイレへ向かい残りの教科に備えようとチャックを下す。

受験結果を左右する大事な休憩であることもあり、みんなどこか急いでいる雰囲気が漂っていたのも原因だったと思う。



「ピチャ!w」


私の足元から何か、トイレで一番聞きたくない音が聞こえた。


右隣、急ぎ気味でトイレを済ましていた男子学生が小便を切るのと、便器から体を離すのをあまりにもノータイムで行おうとするものだから、
彼から生まれた老廃物が便器から少し外れ、地面に落ちていった。


そして、私の靴のメッシュは、その軽量化の代償として失った耐水性のなさを遺憾なく発揮し、受け取った水分を確実に靴下まで届けた。



終わった。




休憩が終わってからの、国語の時間は全く手につかなかった。



それもそのはず、足についているのだから。



は?




誰よりも速く、走って帰った。

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