アルセーヌ・ルパンを語りたい〜獄中のアルセーヌ・ルパン〜

アルセーヌ・ルパンの逮捕が予想以上に反響を呼び、続編を書かざるを得なくなった作者モーリス・ルブラン。1作品目で主人公を逮捕させてしまった彼が書いた2作品目の短編が「獄中のアルセーヌ・ルパン」である。この作品においてルパンの犯罪のスタイルが確定したと言って良いだろう。そのスタイルというのは劇場型犯罪だ。

この作品でルパンは狙った屋敷に予告状を送り付ける。今でこそルパン三世やら怪盗キッドやらが使いまくってる手口だが、あなたの屋敷に盗みに入りますなんて宣言するのは大胆不敵だ。そして何よりこの予告状はお遊びで送り付けているのではない。この予告状そのものが事件のトリックになっているのだ。シリーズでルパンが予告状を出すのはイメージに反して少なく、「獄中のアルセーヌ・ルパン」、「戯曲アルセーヌ・ルパン」、「白鳥の首のエディス」くらいのものだがどれも予告状が重要な意味を成している作品だ。

ルパンの機関誌、エコー・ド・フランスもここで初登場している。ルパンしか知りえないはずの情報を流したりして世間や司法当局を揺さぶるわけだが、これは正に劇場型犯罪をルパンがしたがっているとしか思えない。数ヶ月前から名を上げ始めたルパンにとって今作の犯罪は更にルパンの名声を高めるための事件だ。わたくしルパンは獄中にいながら事件の指揮を取ってみせました。ルパンに不可能なんてありませんよ。というアピールだ。ルパンはこうして「アルセーヌ・ルパン」という名前に価値を付加させ続けていくのだ。それにしても、時代が違えばルパンは自分専用のテレビ局でも買収していたのだろうか??笑笑

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