K2-138g

既に5つの惑星が知られているK2-138系に、第6の惑星を確認したとする研究がarXivに掲載されている。

K2-138は太陽系から660光年の距離にある太陽に似た恒星で、2018年にNASAのケプラー宇宙望遠鏡の延長ミッション(K2ミッション)で6つの惑星またはその候補が見つかっていた。ただしそのうちの最も外側の1つ「K2-138g」は観測が不十分で、惑星候補どまりだった。今回の研究ではスピッツァー宇宙望遠鏡を用いた観測でこの惑星が存在することが確認(validate)された。

K2-138gは地球の3.3倍のサイズ(半径)を持つ惑星で、半径0.229天文単位(1天文単位=地球と太陽の距離)の軌道を41.97日で一周している。他の5つの惑星は全てK2-138gよりも内側の軌道にある。主星のK2-138は太陽と同じ「G型主系列星」だが、太陽より少し小さく、質量は92%・サイズは84%だ。表面の温度も太陽より500℃ほど低い。

ケプラー、K2とスピッツァー

「ケプラー」は2009年にNASAが打ち上げた太陽系外惑星観測用の宇宙望遠鏡で、惑星が恒星の手前を通り過ぎる時に一時的に恒星の光を遮る現象を捉える「トランジット法」を通じて観測を行った。ケプラーは2013年に姿勢制御装置が故障したものの、計画を変えた上で2014年から2018年の運用終了まで延長ミッションとして「K2ミッション」が行われた。

スピッツァー宇宙望遠鏡は2003年にNASAが打ち上げた赤外線宇宙望遠鏡で、望遠鏡本体を冷却しながら遠赤外線を含む波長で観測を行った。2009年に冷却剤切れ伴って遠赤外線観測を終えたものの、以降も2020年まで近赤外線での観測を続けた。今回の研究では2018年にK2-138gが起こすトランジットを観測するために用いられた。

K2-138系の発見

惑星が発見される前、K2-138は「EPIC 245950175」と呼ばれていた。K2ミッションは「キャンペーン」と呼ばれる期間で区切られ、そのうちの1つである「キャンペーン12」でケプラーは78日間に渡ってK2-138を含む領域を観測した。この時のデータはアマチュア科学者らによる分析に回され、K2-138系に少なくとも5つの惑星が存在することが明らかになった(下記ニュース参照)。

6つめの惑星候補K2-138gは、公転周期が42日と長いため、78日のキャンペーンの間に2回しかトランジットを起こさなかった。等しい間隔で3回のトランジットが続けば1つの惑星によるものとほぼ確かめられるが、2回だけでは1つの惑星が2回のトランジットを起こしたのか、2つの別々の惑星がそれぞれ1回のトランジットを起こしたのか見分けがつかない。そのためK2-138gの扱いは宙に浮いたままだった。

研究チームは2018年にスピッツァー宇宙望遠鏡の観測割り当てを得てK2-138系に望遠鏡を向けた。その結果、K2-138gが1つの惑星だった場合にトランジットを起こすと予想される時刻ちょうどに、惑星トランジットの特徴に一致する減光が観測された。このためK2-138gは惑星だと確かめられた。

confirmとvalidate

太陽系外惑星の「確認」に対してはconfirmとvalidateの2種類の言葉が使われる。confirmは確度の高い確認で、誤検知の可能性が十分に排除され、複数の観測設備や複数の異なる観測方法で証拠が得られる、などの状況で使われる。validateはconfirmよりも確度の低い確認で、誤検知の可能性は十分排除されているが、一つの設備でしか観測できていなかったり、複数の設備で観測していても証拠としては完全ではないない、などの場合に使われる。

ケプラー宇宙望遠鏡が見つけた惑星の中には、confirmではなくvalidateに留まっているものが多くある。これはケプラーが比較的暗い星を観測ターゲットにしている特性上、地上設備でフォローアップ観測を行うのが難しいからだ。

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