GJ 740 b

太陽系近傍の赤色矮星(低温の小さい恒星)に太陽系外惑星を発見したという研究が掲載されている。

発見された惑星 GJ 740 bグリーゼ740b)は少なくとも地球の3.0±0.5倍の質量を持ち、2.38日周期で半径0.03天文単位(1天文単位=地球と太陽の距離)の軌道を公転している。惑星は主恒星にあまりにも近い軌道を公転しているため、表面温度は560℃にも及ぶと計算されている。主恒星の GJ 740グリーゼ740)は太陽の0.56倍の半径と0.58倍の質量を持ち、表面温度は3910ケルビンで、太陽と比べて約1900℃ほど温度が低い。

一般的に、赤色矮星では恒星黒点などが活発に生じるため、惑星の兆候を捉えるのが難しい。今回の研究では、恒星の活動を慎重にモデル化し、惑星を見つけることができた。分析によるとGJ 740には7.7年周期と36~37日周期の2つの活動周期があり、前者は太陽活動周期に似た長周期サイクルに、後者は恒星の自転周期に対応するものだと見られている。

また観測データには活動サイクルとは異なる9.2年周期の変動が見つかっている。これは公転周期9.2年で質量が地球の約100倍(およそ土星質量に相当)の惑星 GJ 740 c が巡っていると考えれば説明できる。ただし何らかの活動サイクルに対応した変動の可能性もあり、現時点では惑星だとの確証は得られていない。

HADESとCARMENES

発見に携わったHADESCARMENESは、いずれも赤色矮星の惑星系をターゲットに、視線速度法と呼ばれる技法で観測を行っている研究プログラムだ。視線速度法では惑星の公転に伴い変動する主星の視線速度(奥行き方向の速度)をドップラー効果の変化として捉える。

HADESプログラムは、カナリア諸島ラパルマ島にあるガリレオ国立望遠鏡(口径3.58m)と、そこに設置された「HARPS-N」分光器を使って行われている。HARPS-Nは、南米チリ・ラシヤ天文台で使われている「HARPS」分光器の同型機で、2012年の観測開始当時はHARPSと並んで世界最高精度の分光器の1つだった。今回の研究では、HARPS-Nに加えて、以前にHARPSが記録していたGJ 740のデータも活用された。

CARMENESプログラムは、スペインのカラル・アルト天文台CAHA 3.5m望遠鏡に設置された同名の「CARMENES」分光器を用いて行われている。CARMENESの運用が始まったのは2016年で、可視光のみで観測を行うHARPS-Nとは異なり、可視光から波長1.7マイクロメートルまでの近赤外線を記録できるのが特徴だ。赤色矮星の観測ではHARPS-Nと同等の精度を発揮できるのに加え、赤色矮星それ自体の研究にも大きく貢献している。

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