見出し画像

障害者に対する合理的な配慮

障害者に対する合理的な配慮というものは、障害自体の定義を含めてどう、認識すべきでしょうか?

障害者に対する合理的な配慮とは、障害を持つ人々が社会のあらゆる側面に参加し、同等の条件で生活できるように必要な調整をすることを指します。この配慮は、障害のある人々が直面する障壁を減少または排除するためのものです。

障害自体の定義については、一般的には身体的、知的、精神的、感覚的などの障害が含まれると認識されています。それぞれの障害の性質や程度に応じて、個々のニーズに合わせた配慮が必要です。国際的には、国際連合の障害者の権利に関する条約(CRPD)がこれを定義し、推進しています。

合理的な配慮は、単にアクセスを改善することだけでなく、教育、雇用、交通、情報アクセスなど、生活のあらゆる面で平等を実現するための措置を含みます。これには物理的な改善のほか、技術的な支援や個別の支援が必要な場合もあります。

国際的に共通の定義やガイドラインができないのはなぜでしょうか?

国際的に共通の障害の定義やガイドラインが確立しにくい理由はいくつかあります。まず、文化的な違いが大きい点が挙げられます。障害に対する認識やアプローチは、文化や社会の背景によって大きく異なります。例えば、一部の文化では障害を医学的な問題と見なす一方で、他の文化では社会的な障壁が障害を生じさせると考えるなど、障害の定義自体が異なる場合があります。

次に、政治的および経済的な要因も影響します。各国の政策や資源の配分、経済状況によって、障害者支援の優先度や実施可能な対策が変わってくるため、国際的な一致を見ることが難しいのです。

さらに、障害の種類が多岐にわたり、その影響や必要とされる支援が個々で大きく異なるため、すべての状況に適用可能な一つのガイドラインを作成することが非常に困難です。そのため、国際的な枠組みとしては、原則や大枠を提供しつつも、具体的な実装は各国の状況に合わせて調整される必要があります。

これらの課題にもかかわらず、障害者の権利に関する条約(CRPD)など、一定の国際的な基準や枠組みが存在しており、これにより障害者の権利の向上に向けた基本的な方向性は定められています。

国際連合の障害者の権利に関する条約(CRPD)について、要約してください。

国際連合の障害者の権利に関する条約(Convention on the Rights of Persons with Disabilities、略称:CRPD)は、障害者の権利を保護し、全ての人々が平等に社会に参加できるようにするための国際条約です。2006年に採択され、2008年に発効しました。この条約は、障害者が人間として尊重されるべき全体的な権利と自由を認識し、社会のあらゆる側面で障害者が差別されないことを保障することを目的としています。

主な内容

  1. 平等と非差別 - 障害者は差別されることなく、すべての人権を享受する権利があります。

  2. 参加と包摂 - 社会のすべての側面での完全な参加と包摂を促進します。

  3. アクセシビリティ - 物理的環境、交通、情報通信技術(ICT)のアクセス向上を求めています。

  4. 個人の自立 - 自分の選択に基づいて生活し、個人の自由を保証することを支援します。

  5. 健康と教育 - 教育と健康サービスへの平等なアクセスを保証します。

  6. 雇用 - 労働市場および職場での平等な機会を促進します。

  7. 法的認識 - 法の前の平等を保証し、法的能力を全面的に認めます。

実施機構

  • 国家レベル:各締約国は国内法をこの条約に沿うよう改正し、実施を保証するための措置を講じる必要があります。

  • 国際レベル:障害者の権利委員会が設置され、各国からの進捗報告を受け取り、推奨や指導を行います。

CRPDは、障害者が社会の他のメンバーと同様に人権を享受し、完全かつ有効な参加が保証される環境を推進することを目指しています。

平等性が優先されますか?公平性が優先されますか?

障害者の権利に関する国際的なアプローチにおいては、「平等性」と「公平性」の両方が重要ですが、それぞれの意味するところには微妙な違いがあります。

平等性(Equality)

平等性は、すべての人が同じ条件下で等しく扱われるべきであるという原則です。この観点からは、障害の有無にかかわらず、すべての人に対して同一の権利と機会が保障されるべきです。障害者の権利に関する条約(CRPD)においても、法の前の平等や機会の均等が強調されています。

公平性(Equity)

一方で公平性は、異なるニーズや状況を持つ個人に対して、それぞれのニーズに応じた特別または追加のサポートを提供することで、実質的な平等を達成することを目指します。このアプローチは、障害がある人々に「合理的な配慮」を提供し、物理的、社会的、経済的障壁を取り除くことに重点を置いています。

優先順位

障害者の権利を扱う際には、通常、公平性の観点が優先されることが多いです。なぜなら、単に同じ条件を提供するだけではなく、障害者特有の障壁を理解し、それに応じたサポートを提供することで、すべての人が社会の一員として実質的に平等に扱われる環境を作ることが目的だからです。つまり、障害者が自立し、全社会的な参加を果たすためには、個々のニーズに対応した支援が不可欠とされています。

このように、平等性と公平性は障害者の権利の文脈で補完的な関係にあり、一方が他方よりも単純に優先されるわけではありませんが、公平性により焦点を当てたアプローチが障害者支援においては特に重要視されています。

自国民が国外で経験した障害者に関わる問題は、自国内に訴えるべきでしょうか?それとも現地でしょうか?

自国民が国外で障害者に関わる問題を経験した場合、どこで対応を求めるべきかは、具体的な状況や問題の性質、関連する法律によって異なります。以下の点を考慮することが重要です:

現地での対応

  • 法的権利と義務: 多くの場合、問題が発生した国の法律が適用されます。その国の法制度や障害者に対する権利がどのように保護されているかを理解することが重要です。

  • 迅速な対応: 現地で問題に対処することで、より迅速な解決が期待できる場合があります。特に、物理的なバリアや差別的な扱いなど、直接的な改善が必要な場合は、現地の機関や団体に連絡することが効果的です。

自国での対応

  • 外交的支援: 自国の大使館や領事館は、海外で困難に直面した国民を支援するためのサービスを提供しています。特に法的な問題や人権侵害が疑われる場合には、これらの機関が介入することで解決への道が開かれることがあります。

  • 国際的な法規制: 国際人権法や障害者の権利に関する国際条約(例えばCRPD)が適用される場合、自国での訴えが有効な手段となる場合があります。これは特に、問題が発生した国で十分な保護が提供されない場合に考慮すべきです。

考慮すべきその他の要因

  • 言語の障壁と法律の複雑さ: 現地の言語や法律に精通していない場合、自国での支援を求めることが適切な場合があります。

  • 長期的な影響: 問題が将来にわたって影響を及ぼす可能性がある場合(例えば、障害が慢性的なものである場合など)、長期的な対策を考慮する必要があります。

最終的には、具体的な状況や利用可能なリソース、期待される解決策の効果を総合的に考慮して、最も適切なアプローチを選択することが推奨されます。

その場合、大使館などをあてにすることが出来ますか?

はい、自国民が海外で障害者に関わる問題や他の困難に直面した場合、大使館や領事館は非常に重要なリソースとなり得ます。大使館や領事館の主な役割は、自国民の権利と安全を保護し、支援を提供することです。以下のような支援を受けることができます:

  1. 法的支援: 大使館は法的問題に関する情報を提供し、現地の法律家を紹介することがあります。また、法的な手続きで何を期待すべきかについての助言も行うことができます。

  2. 通訳や翻訳サービス: 言語の障壁が問題となる場合、大使館は通訳や翻訳サービスを提供して、現地の法律や制度を理解しやすくすることがあります。

  3. 外交的介入: 特に重大な人権侵害や差別の問題がある場合、大使館は外交的ルートを通じて問題の解決を図ることがあります。これには、現地政府との交渉や、必要に応じて国際的な注意を喚起することも含まれます。

  4. 緊急事態への対応: 急激な健康問題や事故など、緊急事態に陥った場合、大使館は緊急医療サービスの手配や家族との連絡を助けることができます。

ただし、大使館の具体的なサポート内容は、その国の法律、国際条約、外交政策によって異なる場合があります。また、大使館が直接的な法的代理人として機能するわけではないため、一部の法的手続きには限界があることを理解しておく必要があります。したがって、問題に対する具体的な対応策を検討する際は、大使館や領事館に事前に連絡を取り、どのような支援が可能かを確認することが重要です。

自国で受けられたサービスが、そのまま諸外国で享受出来ると期待しすぎるもの、考慮すべきでしょうね。

その通りです。異なる国々では、障害者に対する支援やサービス、アクセシビリティのレベルが大きく異なる場合があります。国によっては障害者への配慮が十分ではないこともあり、特に発展途上国ではインフラや支援サービスが整っていないことが一般的です。そのため、自国で享受しているサービスや支援が他国でも同様に提供されると期待することは、しばしば誤解を招く原因となります。

考慮すべきポイント

  1. 事前の調査: 旅行や移住を計画している国の障害者支援の状況について事前に調べることが重要です。具体的には、その国の障害者に対する法律、アクセシビリティの基準、利用可能なサービスや支援プログラムについての情報を集めると良いでしょう。

  2. 適応と柔軟性: 異なる環境や文化に適応し、利用可能なリソースを最大限に活用する柔軟性が求められます。すべてのニーズが満たされるわけではないため、状況に応じて調整する必要があります。

  3. 地元のコミュニティとの連携: 現地の障害者団体や支援組織と連携することで、必要な情報やリソースを得ることができます。これらの組織は、現地の文化や制度に精通しており、実用的なアドバイスやサポートを提供できる場合があります。

  4. 国際的なネットワークの利用: 国際的な障害者支援組織やネットワークを活用することで、より広範な情報やサポートを受けることが可能です。これには、国際連合障害者権利条約(CRPD)などの国際規範に基づく権利の主張も含まれる場合があります。

海外での生活は多くの挑戦を伴いますが、適切な準備とサポートがあれば、障害を持つ人々も国際的な環境で活躍できる可能性があります。

国際連合の障害者の権利に関する条約(CRPD)は、国連加盟国のうち、どのくらいの国が批准していますか?

国際連合の障害者の権利に関する条約(CRPD)は、現在186の国によって批准されています。この数字は、ほぼ全ての国連加盟国が障害者の権利と尊厳の重要性について合意していることを示しています。

逆に、批准していない国はどこでしょうか?

現在、国際連合の障害者の権利に関する条約(CRPD)を批准していない国は、アルメニア、アゼルバイジャン、ブルガリア、チェキア、ハンガリー、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、スロバキア、そしてイギリスです。これらの国々は、様々な理由で条約の批准を行っていませんが、多くの場合、国内法の調整や政策上の問題が影響していると考えられます。

旧東側の国が多いように見えますが、理由は何でしょうか?

旧東側の国々が国際連合の障害者の権利に関する条約(CRPD)を批准していない理由は、主に政治的、法的、および歴史的背景に起因しています。以下に、その理由をいくつか挙げます:

  1. 法的・制度的な課題: 旧東側国家では、社会主義体制下での障害者へのアプローチが中央集権的であり、障害者を社会から隔離する政策がとられていました。このため、障害者の権利と社会参加に重点を置くCRPDの理念とは大きく異なります。条約を批准するには、広範な法的および制度的変更が必要になりますが、これが大きな障壁となっています。

  2. 経済的な制約: 経済的に困難な状況にある国々では、障害者の権利を保障するための追加的な財政支出が難しい場合があります。CRPDの実施には、教育、雇用、アクセシビリティ向上など、多岐にわたる分野での投資が求められるため、これが批准を躊躇する一因となっていることが考えられます。

  3. 政治的な優先順位: 政治的な不安定さや他の優先課題が存在する国々では、障害者の権利が政治議程の中で後回しにされがちです。旧東側諸国の中には、政治的な遷移期にある国も多く、国内の他の緊急問題に対処することが優先されています。

  4. 文化的な要因: 障害者に対する文化的な認識や偏見も、CRPDの理念を完全に受け入れる障壁となっています。特に、障害者を社会の負担と見なす古い観念が残っている社会では、障害者の権利と自立を支持する動きに対する抵抗が存在します。

これらの複合的な要因が、旧東側諸国におけるCRPDの批准を妨げている背景となっています。

イギリスは何故批准しないのでしょうか?

イギリスが国際連合の障害者の権利に関する条約(CRPD)を批准しない主な理由の一つは、条約の解釈と国内法の矛盾です。特に、精神疾患を持つ人々に対する合理的配慮としての強制治療の必要性と、CRPDが推進する自由と自立の権利との間に生じる問題があります。CRPD委員会の解釈によると、障害の有無にかかわらずすべての人が平等に法的能力を有するとされていますが、イギリスの現行法では、一部の精神疾患を持つ人々の自由を制限することが可能です。この矛盾は、特に精神医学の分野で強制治療が必要な場合に、個人の自由をどの程度保護するかという問題と直接関連しています​ (Cambridge University Press & Assessment)​。

さらに、CRPDがイギリス国内で完全に適用される場合、精神疾患のある人が自らの意志に反して医療施設に留め置かれることなく、コミュニティ内での生活が可能になるという期待がありますが、現実にはこれが適切な支援やサービスの不足により困難であるとされています​ (House of Commons Library)​。これらの理由により、イギリスではCRPDの完全な実施に向けた課題が依然として存在しており、条約の理念と国内法の間に矛盾があると見なされています。

ということは、批准国の中でも理想的には対応が必要と考えていても、実際には対応し切れていない国も多そうですね。

はい、その通りです。CRPDを批准している国々でも、条約の理念を完全に実現することは困難な場合が多く、多くの国で障害者への十分な支援とサービスの提供が追いついていないのが現状です。理想と現実のギャップは、資金の不足、インフラストラクチャの欠如、政策の実施における課題、社会的な偏見といった様々な要因によって引き起こされています。

例えば、多くの国で障害者の雇用や教育への完全な統合が進んでいないことや、アクセシビリティの基準が十分に適用されていない場所が多いことが挙げられます。また、政策の制定や改正が進んでいるにも関わらず、その実施において具体的な進展が見られないことも一因です。

国際社会では、CRPDの精神に則した改善を目指し続けることが求められていますが、それには各国の状況に応じた具体的な行動計画や資源の確保、さらには国際協力の促進が不可欠です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?