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ミニストップの呪い 

      



 来年から新NISAで投資を始めようと思ってるあなたに言いたい。この世には絶対に手を出してはならない株があるのだ。オレはその株をうっかり買ってしまったために大変なことになっている。その失敗を繰り返させないために、オレは敢えて訴えようと思っている。どうか理解してもらいたい。それは東証プライムに上場されているミニストップ(9946)株である。

ミニストップ (9946) : 株価/予想・目標株価 [MINISTOP CO.,] - みんかぶ(旧みんなの株式) (minkabu.jp)



 12月8日のミニストップ株の終値は1514円、これを最低単位の100株買うのに必要なのは15万1400円である。そこに証券会社の手数料が加わることになる。配当利回りは1.32%しかない。ただ、ミニストップで使えるソフトクリーム無料券が半期ごとに五枚ずつ、年間で10枚もらえるのである。配当金は税引き前で年間2000円しかないが、税込み412円のソフトクリームが10回、つまり優待が4210円分あるわけだ。配当金+ソフトクリーム分と考えれば配当+優待利回りは4%を超える。そういうわけでソフトクリーム好きな人は株主になろうと思うかも知れない。




 ただ、このミニストップのソフトクリーム券を行使するためには、ミニストップに行かないといけない。そのミニストップの店舗は関西には少ないのである。関西で多いのはやはりローソン、ファミリーマート、セブンイレブンのコンビニ御三家である。限りなく少ないミニストップの店舗に、わざわざ交通費をかけてまで出向くならば、390円のソフトクリームよりもその交通費の方が高いということになる。




 そういうわけでオレはクルマを運転しているときはいつも「絶対にミニストップの存在を見落としてはならない」という強迫観念にさらされているのである。これをオレは「ミニストップの呪い」と呼んでいる。




 その日の最高気温が0度以下の寒風吹きすさぶ日であっても、ミニストップの店舗をうっかり発見すれば必ず立ち寄って手元の「ソフトクリーム券」を行使しなければならないのである。寒くても、お腹がいっぱいでも、どんなに困難な状況下にあっても、そのソフトクリーム券を使わないといけないのだ。なんと苦しく困難なノルマなんだろうか。全然食欲がなくても、388円の「とろけるフォンダンショコラ」421円の「プレミアムショコラソフト」、410円の「台湾蜜いもソフト」、どうしてもチョコが無理という人は270円の「バニラソフト」を食べなければならないのである。これはもう拷問である。どうして食べたくもないソフトクリームを食べないといけないのか。オレはその理不尽な拷問のために歓喜の涙が出ることさえあるのだ。





 どうしてそんなノルマが課されるのか。それは関西でのミニストップ店舗の圧倒的な少なさ故である。残念なことにオレが通勤経路にしている道筋にはミニストップは一軒もない。他のコンビニはいくらでもあるのに、残念なことにミニストップだけはないのである。だからどこかに出かけたときにミニストップを発見すればそこに立ち寄ることはもはや義務と化しているのだ。そうでないと年間に10枚も押しつけられるソフトクリーム無料券を使い切れないのである。




 もしもあなたがうっかりミニストップの株主になってしまえば、この「呪い」をあなたも受けることとなる。あなたはあの濃厚なプレミアムショコラソフトを10本も食べる自信があるだろうか。オレには無理だ。オレはどうしても他の「台湾蜜いもソフト」や「バニラソフト」と組み合わせないと無理だ。いくら美味しいソフトであっても、10本も食べる前に飽きてしまうのである。しかし、他の安いソフトを選ぶたびに本来行使できるはずだった金額の一部を放棄するという悲劇が起きてしまうのだ。損失を出さないようにするには「プレミアムショコラソフト」を我慢して食べるしかないのである。好きなものを自由に食べるという人間本来の権利を奪われてしまうのである。





 あなたはその「呪い」を知っていても、それでもミニストップ株を買おうとするだろうか。もしも買おうと思ってるなら、オレのこの忠告を聞いてもそれでもミニストップ株を買うならば、あなたは大馬鹿野郎だ。ただのソフトクリーム好きの甘党馬鹿だ。呪いに支配されることを望むマゾヒストだ。




 オレはこの「ミニストップの呪い」にかかってしまったことを激しく後悔している。これを乗り切る方法は一つしか無い。ただただソフトクリームを喰うだけだ。がんばって年間10枚のソフトクリーム券を克服するしかないのである。なんと甘美な苦行だろうか。


モノ書きになることを目指して40年・・・・ いつのまにか老人と呼ばれるようになってしまいました。