令和元年度 予備試験論文 民法 設問2の答案(解説用)

令和元年度 予備試験論文 民法 設問2の答案(解説用)

配信する解説動画で使用するための答案なので、実戦的ではない部分があります。
また、適宜加筆修正していきます。

設問2


1 CのDに対する請求は、本件土地の所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求である。
この請求が認められるためには、①Cが本件土地を所有していること、② ①の所有権をDに対抗することができること、③Dの抵当権がCに対抗できないこと、が必要である。


2 贈与による所有権取得について
①CはAから贈与によって本件土地の所有権を取得した。②この贈与による所有権の取得については未だ登記がなされていないが、Bに対する訴訟に勝訴すれば所有権移転登記がなされることになる。Bは贈与者であるAの唯一の相続人であり包括承継しているので、Cに対して本件土地の所有権移転登記手続きを行う義務を負う。そのため、CのBに対する訴訟はCが勝訴することになる。③しかし、Cが登記未了の間にBがDに対して行った本件抵当権は、設問1で説明したようにCに対抗することができる。
よって、Cは贈与による所有権取得を理由として設問2の請求を行っても認められない。


3 取得時効による所有権の取得について
時効取得(162条)は原始取得なので、Cにこれが認められれば時効完成前に行ったBのDに対する抵当権設定はCに対抗できなくなる(397条)。
Cには、これから説明するように本件土地について短期取得時効(162条2項)が完成している。
Cは、平成20年4月1日に本件土地の引き渡しを受けて占有を開始し、現在に至るまで継続して占有しているので10年間(162条2項)占有している。
そして、186条によって、この占有は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と行われたと推定される。
Cの本件土地に対する占有は、Aから贈与を受けて引き渡されたことによって開始されているところ、この時点では本件土地について他人の権利は存在しなかったのだから、他人の権利の存在についての注意義務違反もない。
よってCは162条2項の取得時効が完成しているので、これを援用(145条)することによって本件土地の所有権を取得することができる。
そして、時効取得した本件土地の所有権は時効完成前の第三者に対しては登記なくして対抗することができるので、Cの所有権はDに対抗することができる。


4    以上より、CのDに対する請求は認められる。


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