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ミル挽きのコーヒー

 我が家には少し、高性能のコーヒーメーカーがある。豆を挽いてくれる昨日までついた自動コーヒーメーカーだ。だけれども、一つだけ難点があって、豆挽きからコーヒーを入れようとすると一杯ずつしか作れない上に、ミルモーターが高温になるため、次のいっぱいを入れるようになるまでに少し待たなければならなくなる。せっかく昼下がりに豆から入れたコーヒーを配偶者と一緒に飲もうと思っても飲む時間がずれてしまうのである。

 そんな折、東急ハンズにふらりとやったところ、コーヒーミルのコーナーがあった。手挽きのコーヒーミルがいくつも並べられていた。豆さえ挽けばコーヒーメーカーさんは、しっかりと2人分のコーヒーを抽出してくれる。豆を引くという手間をかけるかということは頭をよぎったが、豆から作るコーヒーは休日の昼下がりにしか飲まないのであるから、いいではないかということになった。色々考えて、安くはない程度のコーヒーミルを買って家路に着いた。

 買ったばかりのコーヒーミルを調整するのは配偶者だ。配偶者はそういったことに心得があるので頼もしい。さっと洗って、乾くのを待って豆を挽いてみる。せっかくならばと一番細かく挽けるように設定されたためか、時間がかかるし力もいる。けれど、削るたびに豊かなコーヒーが香り、豆を削るガリガリという大きすぎない音がなんともリラックスさせてくれるのだ。機械引きの時はなんとも言えない工業的な大きな高音が鳴り響くのでそれと比べればなんとも柔らかな時間である。削り切ったコーヒーは粉で買うコーヒーよりも段違いに細かくふわふわとしたものになった。

 ふわふわのコーヒー粉をコーヒーメーカーにセットする。いつものようにボタンを押し、コーヒーが抽出されるのを待つ。出来上がったコーヒーはなんともコクが深い、今まで感じたことのないようなしっかりとしたコーヒーの味を感じ取れる代物であった。牛乳を加えても決してコーヒーの味は負けず、美味しいカフェラテになってくれたのである。コーヒーミルで手挽きすることでこんなにも違うのかと思い知らされた。これは、良い買い物をしたと配偶者と笑いあうことができた。

 こういうものを、丁寧な暮らしということもあるのだろう。我が家のきっかけは、コーヒーを飲むタイミングがずれてしまうということだったけれども、そんな理由でもいいのかもしれない。今時もっと高性能のコーヒーメーカーであれば豆挽きの細かさも指定できるようだが、そんなに高い買い物ができるわけでもない。自動化できることは自動化していきたい夫婦だが、あえて自動化せずにコストパフォーマンスを高める活動をするのも面白みがあるなぁと思う日々である。

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