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美しい服を迎えた日

 私には憧れのワンピースがあった。たっぷりの柔らかな袖先に美しい刺繍があしらわれた、美しいシルエットのワンピース。凛として清涼な空気すら感じるその作品に憧れて、いつかお迎えできることを願っていた。そんな、完璧な一枚が先日私の手元に届いた。今日はその感動をnoteに書こうと思う。

 そのワンピースを知ったのはちょうど1年ほど前だったように記憶している。雑貨中心のTwitterアカウントを立ち上げて様々な美しいものを見て癒されるだけのタイムラインを形成した直後くらいだったと記憶している。薄暗い空間に存在感のあるモデル、そのモデルが着るシンプルだけれど見るだけで質がいいとわかるワンピース、そして両腕に施された美しい刺繍が完成された美を際立たせていた。見るだけで胸が高鳴るようなワンピース。一瞬で心を奪われた。そのままWebサイトに向かったけれども、sold outの文字がついているだけだった。そっと、その作品を作り上げる方のTwitterをフォローし眺める日が始まった。

 そして、今回の椿が出るまで、何度かその作品を迎えるチャンスは訪れた。でもちょうど私は自分の胸の大きさに合うブランドに夢中になっていた。だから憧れてはいても、財布に折り合いをつけることができなくて、憧れるだけの日々が続いた。けれども、財布に折り合いをつけられたなかったのは、何より最初に憧れた単色の美しいワンピースをお迎えしたいという気持ちが強かったからかもしれない。

 秋口、そのワンピースのシルエット写真がタイムラインに流れてきたとき、息が止まった。あまりにも素敵なシルエットで憧れが詰まったような生地の質感を感じ取ることができて写真に光が差しているように思えた。その上、施される刺繍は椿だという。花の中でも特別に好きな刺繍が施されると聞いて何があってもお迎えしようと決心した。そのシルエットのワンピースに椿の刺繍が施される想像をしただけで幸せになれるそんな気持ちになった。それをクリスマスプレゼントにしていいと言ってくれた配偶者には心から感謝している。

 椿の花が当初白だけだと語られた時、少し残念な気持ちになったのは事実だ。私の中で椿といえば紅で、真白い雪の中で色彩を放つ美しい存在だった。けれども、創造者たる人が、白であることが必要だと感じたのならばそれが一番良いものなのだろうと感じた。こだわりのある作品だからこそ、妥協で作ることは出来ないのだろうと感じていたから。けれど、赤椿を出してくださることになった。天の思し召しのようにも感じるほど嬉しい出来事だった。サンプルとして出された絵も美しく、これほど胸躍ったことも少ないだろう。益々お迎えする日が楽しみになった。

 そして、先日、その美しい一着が届いた。箱からして美しい。そして、開いてみてため息がついた。一目でしたのわかる上品な布に美しい赤椿が鮮やかに刺繍されていた。釜覗きの藍のように、少しだけ灰色が混ざったような白がまるで本当の雪のように椿を包み込んでいた。触る前には思わず手を洗った。そしてしっかりと水分をとってふれた。目で見て質の良い布は触っても当然質が良かった。そして、椿を見つめた。花びらや葉っぱはただ色を乗せるためだけの刺繍が施されているわけではなかった。まるで生きているかのように葉脈を感じるような凹凸が表現されていた。うっすら影のような異なる色味も入れられ、本当の椿がそこにあるように感じた。着用した時、思わず背筋が伸びた。このワンピースは背筋を伸ばして、美しい自分になって着用したい。そう心から思える一着である。

 そして、ワンピースを眺めながら、思った。将来子供ができたら、このワンピースを子供記念に着用しようと。このワンピースは一着で私を主役にしてくれまするが、大切な誰かに寄り添うときにその大切な人を際立たせることができる一着でもあると思う。誰かのかがやかによりそう花のように、子供の成長によりそう母としての服にとても合うと感じたのだ。まだまだ、子供はできていないけれど、将来この服を着た私の隣に配偶者とまだ皆我が子を想像して、何ともいえない幸福感を覚えた。たった一着の服が、うららかな春の日の希望を照らしているようだった。

 ここまで書いてきて、ブランド名もワンピースの名前も書いていないことに気がついた。ブランドの名前はiCONOLOGY、ワンピースの名前は「花を着るワンピース#03【赤椿】」である。本当に美しいワンピースなので、ショップサイトを覗いてみるだけでも十分心が癒されること請け合いだ。今度は、ちゃんと自分のお財布とも折り合いをつけてまた美しい服をお迎えしたいと思う。美しい服を着る喜びを心から楽しめるように、明るい世界になってほしいと心から願っている。

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