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Team Geekを読んだ感想

9/18(土)に開催されたXP祭り 2021の書籍プレゼントで、ずっと気になってはいたものの手を出せずにいたTeam Geekをいただきました。
他の積読本を読んだりしてなかなか手を付けられていなかったのですが、XP祭りから約2ヶ月経ったこのタイミングで読み終わったので感想を書きました。

全体を通して

HRTについての本
これに尽きるなという印象でした。

HRTという言葉自体はいちばんやさしいアジャイル開発の教本で出てきたり、はっきりとは覚えていないけれど他の本でも目にしたことがあるような記憶があります。
しかしHRTは謙虚(Humility)、尊敬(Respect)、信頼(Trust)からなるというようなシンプルな説明になっており、具体的に言うとどういうこと?という疑問がずっとありました。

本書では

あらゆる人間関係の衝突は、謙虚・尊敬・信頼の欠如によるものだ。

と冒頭に書かれていました。
またエピローグでは

HRTはあらゆる影響「範囲」に適用可能だ。まずは、君自身に適用できる。すべてのコミュニケーションに影響するものだ。次に、チームに適用できる。謙虚・尊敬・信頼のあるチーム文化は、内輪争いに時間を欠けずに、コーディングに時間をかけることが可能だ。それから、チームをリードする方法に適用できる。能力のあるリーダーはチームに奉仕するのであり、その逆ではない。また、チームの外部とのやり取りにも適用できる。そこには、いい人・バカ・機能不全の官僚制も含まれる。最後に、最も重要ながグループであるユーザーとのやり取りにも適用できる。

とも書かれている通り、HRTを様々な範囲にどのように適用していけば本来やりたいコーディングなどに時間がかけられるかを、各章を通して具体的に説明してくれています。
人間関係の衝突に悩んでいるのであれば、本書を手に取りHRTを中心に学び実践していくことでソフトスキルを磨くことができると思います。

また同時にチーム全員で読みたいとも感じた一冊です。


ここからは印象に残っている部分について具体的に触れていきたいと思います。

1.7 批判の配分と対応を学ぶ

「この部分の制御フローがよくわからないのですが、xyzzyコードパターンを使えば読みやすくなるでしょうか?」にすればいい。相手に対する疑問ではなく、自分の疑問として謙虚に聞くのである。相手が間違っているのではなく、自分が理解できないだけであることを強調する。

コードレビューの際の振る舞いとして挙がっていた具体例で、HRTの実践と改善のためのフィードバックはコンフリクトするわけではない、ではどうしたら良いかを理解できた良い例だと感じました。
HRTの中でも謙虚が一番イメージが難しく、エゴはなくすけれど自信がないこととも違う謙虚な姿勢がよく現れていました。

他にも批判の配分を間違えたときの弊害について触れられており、時折うっとなりながらもコミュニケーションの中心にHRTを置くとはどういうことかを感じることができました。

2章 素晴らしいチーム文化を作る

文化という言葉もあり、全体的にユニコーン企業のひみつを思い出しながら読んでいました。
良い文化は自然発生するものではなくチームリーダーや創業者が丁寧に育て、チームメンバーが定義・維持・防御に責任を持つという話で、現在良いチーム文化の必要性を感じているけれどどう作っていったものか悩んでいる状況だったためうなずきが止まりませんでした。

みんながチームの方向性に合意して、すべてを正確に理解するには、相当な手間が必要となる。だが、こうした手間は生産性の向上とチームの幸せのために必要な投資だ。

個人的には文化というと生産性向上の面の意識が強くありましたが、幸せのためという考え方にはハッとさせられ、そういう文化の中で仕事がしたいと思わされました。

3章 船にはキャプテンが必要

本書の中ではリーダーはマネージャーとは異なる存在であり、公式に任命されたかどうかは関係なく、リーダーがいなければやる気があって我慢のできないタイプがリーダーになる、そして目指すべきはサーバントリーダーだと書かれています。
そんなリーダーがあるべき姿、HRTを取り入れた振る舞いについての章ですが、最後に

リーダーには絶対にならないと決めていても、本章の考えは押さえておいたほうがいいだろう。君のチームリーダーの行動を理解できるからだ。

とも書かれており、ここもうなずきが止まりませんでした。

どこかでフォロワーシップを発揮するにはリーダーシップを理解することが必要だなんて話を読んで記憶がありますが、リーダーとより協調して働くためにチームメンバーは本章を読んでリーダーの行動を理解すると良いと感じました。

4章 有害な人に対処する/5章 組織的操作の技法

最初目次を見たとき、この2つの章に銀の弾丸を期待した気持ちがありました。

内容としてはざっくり言ってしまうと、HRTが欠けた有害な人※に対して大人な対応をしましょう、工夫して組織を動かして自分が居心地のいい場所を作り出そうという感じです。
どこかで一度は聞いたことがあるような考え方や行動が主でしたが、結局一発逆転できる銀の弾丸などは存在せず、当たり前に感じてしまうこともあるようなことを地道に忍耐強くやっていく必要があるのだと改めて理解しました。
HRTを意識し、定期的にこの本を読み返して、いきいきと仕事ができるチーム・組織になるため自分がやるべきことをコツコツ積み上げていきたいと思いました。

※「有害な人」という章タイトルですが、中では排除するのは振る舞いであり個人ではないと書かれています。


最後に

改めて、HRTを中心に学ぶことができる本です。
しかしこの本を読んだだけでHRTを取り入れた振る舞いができるかというとそうではなく、常日頃から意識し実践を積み重ねていく必要がありそうです。
定期的に読み返してソフトスキルを磨き続けていきたい、チーム全員でも読みたいと感じる、とても素敵な本でした。

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