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飄と縹と鏢-ちかごろ見ているおもしろ中国ドラマ

秋から見始めた中国のドラマがどれもこれも面白くて6本くらいHDDに溜まっているので、同じ読みの文字が入った3本をまとめて「いいぞ」していきます。現代恋愛、ファンタジー、歴史ものとなっています。

花とゆめ武侠「淑女飄飄拳(しゅくじょひょうひょうけん)」

全24話で、今9話まで見ています。

原語の副題はSweet Taichi、スイート太極拳です。中国のどっかにあるスポーツと芸術の名門大学を舞台に、おじいちゃんから太極拳を教わったお転婆で負けず嫌いの風飄飄(フォン・ピャオピャオ)と、太極拳の流派統一を目指す衛楚(ウェイ・チュー)が太極拳したり恋愛もするドラマです。(原作小説は「CMFU大学シリーズ」っていうシェアードワールド恋愛小説らしい)

恋愛もの、正直あんまり好きで見るタイプのジャンルではないのですが、原作者が「古龍(武侠小説家)がめっちゃ好き」と公言している人で、えっじゃあ見てみようかな……って見てみたら面白くて。「大学と武林って同じなんだ!」っていう気持ちで見ています。

基本的に、飄飄が顔のいい男(ハイローのテッツこと劇団EXILEの佐藤寛太くんも出てる)とのロマンスや親友との友情とか悪役令嬢となんやかんやする日常パートと、衛楚が絡んだ時に発生する立ち回りや夜襲、修行なんかの武侠パートがあり、双方が作用しあいながら話が前進します。個人的にはその塩梅が気持ちよくて、恋愛パートも甘すぎず有難い。

衛楚がやろうとしているのは門外不出の掟を廃した門派の統一で、これは武侠だと悪い奴がやりがちのやつなんだけど、今回はそれを廃れていく太極拳を盛り返したいという気持ちから始めるっていうのが好きです。

あとは、大学のロケ地とか飄飄の実家とかが古民家リノベしてるふうで、古装劇に出てくるあの雰囲気の中で大学生活を送っているのが見てて楽しい。校章を象った佩をかざして学内の買い物してるのとか、小道具にちょいちょい武侠みがあって好きです。

このまま恋愛と武侠が良い塩梅で進んで終わって欲しい。

友情は運命に抗えるのか「九州縹渺録(きゅうしゅう・ひょうびょうろく)」

全56話、今は8話まで見ています。

いくつもの氏族や異種族が割拠する九州を舞台に、三人の若者が運命的に出会い、友情をはぐくみ、たぶん離散するファンタジー歴史武侠です。

去年めっちゃ楽しく見ていた「海上牧雲記」と同じ九州という世界を舞台にした、海上牧雲記より7~800年ほど昔の時代の物語です。7〜800年前っていうと、日本なら現代から鎌倉くらいまで遡るので、もう全然別物の文化や権勢の話になってます。海上牧雲記については知らなくても大丈夫。【海上牧雲記が気になる人向けの海上牧雲記の紹介はこっち

あらすじは上の公式サイトが分かりやすいです。今見てるところまでだと、村を実父に焼かれた上に実父から次期族長になる旨言い渡され人質として他国に預けられたアスラ(長寿という意味)王子が、他国で無理やり婚約者にさせられた女の子と、祖国との親善試合で武勇を振るった少年と堅い友情を結んだところ。

女の子は羽然(う・ぜん)、羽族っていう背中に羽があるタイプの異種族で、跳ねっ返りのお嬢様。男装して街に出て博打やったり酒飲んだりするのが好きで、義侠心に篤い子です。少年は姫野(き・や)。没落氏族の側女の子で、家族からさえ見下されていた少年が、武名で成り上がるという野心を抱いています。海上牧雲記を見ている人には、「ああー、こいつがあの子のご先祖」っていうポジションの人。そこまでドラマでやるかは分からないけど。で、肝心のアスラ、高潔なんだけど体が弱く、あんまり自己主張をしない少年。それも完全にアウェイ状態がずっと続いているせいだと思うので、どこかで自分のエゴを出してほしい。

今は一緒にお酒を飲んで笑い合っている少年少女の友情なんか関係なく、周辺の国はきな臭いし、呪術集団がアップを始めているし、アスラ自身もなんかの呪いを受けているようだし、大きなうねりに揉まれて行くだろう主人公たちに情緒を見出しています。だって、男2女1の三人組だよ……良い予感しないよ……

主人公たちを取り巻く大人も皆が善人ではなく、氏族の存続とか、愛した人の遺児を守るとか、できればアスラを暗殺したいとか、いろんな思惑が重なりあうので、いずれ逃れえぬ対決や避けられぬ別れなんかが主人公たちを待っているんだろう。

架空の世界を作るにあたって、礼儀作法や服の素材、武器のこしらえから何から、とにかく細部までこだわってるので、Wowow公式サイトのムービー見てほしい。セットも説得力のあるデカさをしている。

11月4日(つまり今日ですが)からWowowでキャッチアップ放送やるらしいので、ぜひ見てほしいやつです。


斜陽を追う「鏢門 Great Protector」

全38話で、今5話まで見ています。

清という時代が終わろうとするとき、同様に消えゆく「鏢局」という職業集団にフォーカスした歴史もの武侠ドラマです。

鏢局の人々は街道沿いの山賊から積み荷を守る、武術の使える護送屋でした。刀より銃が主流になり(鏢局のみなさんも銃武装が許可されている)、年々仕事も減っていく。生活の不安から、密輸や荷物の横流しに手を出す従業員も出てくる。

若い主人公の劉安順は、先代から一代で築き上げた太谷鏢局の大鏢頭を任されたばかり。鏢頭として掟を重んじる安順は、積み荷の横流しで私腹を肥やした古株を厳しく処断します。従業員の感情が悪化する中で、別の大きな失態を犯した安順、周囲の突き上げと自分を許せない頑なな性格のせいで、太谷鏢局を自ら去る決断をした、ところまで見ています。

ストーリーは重たくてやや暗め。序盤に安順への受難を畳みかけてくるのですが、それが何も解決しない。しないから安順は鏢局を出て行くことになるんですが、この安順が、5話まで見てて「まだ伸びしろがある若者」であるのが、斜陽の美学みたいなものをやりたい、っていう感じがあって好きです。

安順、自分の内心を人に打ち明けないから誤解されるし、些細な驕りででかいミスしちゃうし、まじめすぎて自分にも他人にも厳しいし。安順が一人前の鏢師になるのが先か、鏢局がなくなるのが先か、みたいな状況。

いずれ廃れていく業界に身を置いて、生き方がど下手くそなんだけど実直でひたむきなウォレス・フォが見られるだけで拝んでいるんですけど、予告見る感じ辮髪の時代が終わった後も主人公の人生が続いているのでどうなるのか気になる。山猫っていうヴィランも魅力的なので今後どう絡むのか楽しみ。

これは個人的な好みの話になるんですが、日本だと明治~大正、中国だと清末ぐらいの、西洋文化と自国の文化が混ざり合って新しいものが生まれる時代のファッションが好きなので、早くその辺のエピソードまで追いつきたいけど話が重いのでゆっくり見ていきます。

おわりに

上から順番に、軽い→重い、っていう自分の印象のまま紹介しました。お好きな人はどっかに引っかかってもらえると思います。急におもしろ武侠ドラマめちゃくちゃ入ってきて、ちょっとエンタメ摂取する胃がびっくりしているんだけど、来年ぐらいまでに振り落とされなければ全部見て楽しかった! って言いたい。

あと、今期は「陳情令」と「隋唐演義(日本語の副題は長すぎるので略)」を見ているので、陳情令の方はアニメの方と一緒に「ウワーッ好き」みたいな話やれたらいいなと思っているところです。