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Cinderellaで数学:いろいろな曲線:補助円を利用した円錐曲線

 高校の数学の教科書では,「2点F,F'からの距離の和が一定である点の軌跡」として楕円を定義し,方程式を求めています。この定義に沿って図を描くには,2点を画鋲で留めて,糸をピンと張ったまま動かす,というのがあります。
 「曲線の事典」(礒田正美他編著:共立出版 2009)には,「補助円を利用した円錐曲線」として,作図器を用いた楕円の描画がありますが,それがこの定義に沿ったものになっています。他にも,双曲線,放物線があります。

 点A,Oおよび,点Oを中心とする半径$${\ell}$$の円$${\gamma}$$が与えられている。円$${\gamma}$$の円周上に点Cをとり、四角形ABCDは点Cの位置にかかわらず常に菱形となる。点B,Dを通る直線dは動径OCに連動する。点Cが円$${\gamma}$$の円周上を動くとき,直線OCと直線dの交点Pは円錐曲線をかく。

「曲線の事典」(礒田正美他編著:共立出版 2009) p54

楕円

$${\ell}$$>OAのとき,点Pは焦点O,A,長軸の長さ$${\ell}$$の楕円をかく。また,直線dは点Pにおける楕円の接線となる。

同上

Web上にも図があります。次のページ,左の目次から「円錐曲線」に進みます。

 では,Cinderellaで作図しましょう。背景の軸と方眼は必ずしも必要ではありませんが,分かりやすくするために表示しました。
① 2点A,Bをとる(元の図のAとOに相当)
② Bを中心に円を描き,円周上に点Cをとる。
③ ACを線分で結び,中点Dをとって,この点を中心とする円を描く。
④ Dを通る垂線を引き,円との交点E,Fをとれば菱形ができる。
⑤ 直線EFと直線BCの交点Gをとる。
⑥ 軌跡ツールを選び,動かす点としてC,軌跡を描く点としてGを選ぶ。

 この図は,図2.34 の図(以下,元図)を見ながら作図しましたが,写真と図は合っていません。点の名前などを元図に合わせ,写真と合うように点Cの位置を変えたのが次の図です。Webにあるカラーの写真と並べてみました。

 作図器の方には縦に1本の棒がありますが,これは点Aのところで菱形を回転させるためのものでしょう。
 点Cが乗っている円の大きさを変えると,楕円が変わりますが,Dを中心とする円の大きさを変えても楕円は変化しません。ということは,菱形の大きさ・B,Dの位置は無関係ということです。ACの中点を通る垂線が必要であって,AとPを結んでみると,AP=CP ですから(PはACの垂直二等分線上の点)AP+PO=OC となって「2点からの距離の和が一定」という条件を満たすことになります。菱形を作図器で作っているのは,ACの中点を通る垂線(菱形の対角線)を作るためであるといえます。

双曲線

 $${\ell}$$<OAのとき、点Pは焦点O,A,焦点間の距離$${\ell}$$の双曲線をかく。また,直線dは点Pにおける双曲線の接線となる。

「曲線の事典」(礒田正美他編著:共立出版 2009) p54

 楕円の図で,点Aを円の外側に持っていくと軌跡は双曲線になります。

 点Pが見えるようにCの位置を変えて,補助線APを引いてみました。

AP=CPなので,AP-OP=OCとなり,「2定点からの距離の差が一定」という双曲線の定義を満たすことになります。
 また,タイトルの「補助円を利用した」ですが,この補助円とはOを中心とする円のことで,楕円の場合も双曲線の場合も AP=CP ですから,「補助円の点と点Aとの距離が等しい点の軌跡」ということです。
 したがって,作図ツールでは,菱形を描かなくても次のように描画ができます。

放物線

 軸aは平行線r,r'を直線ガイドとして平行移動できる。点Cを軸aと直線rとの交点,点Aを平行線rとr'の間に固定された点とする(点Aを無限遠点上においたので、点Cは円でなく直線上を動く)。点B,Dは軸aと連動して動く直線d上の点で、かつ四角形ABCDは菱形をなす。このとき、軸aと直線dの交点Pは焦点A、準線rである放物線をかく。

「曲線の事典」(礒田正美他編著:共立出版 2009) p54
同上

「点Aを無限遠点上においた」がわかりにくいですが,Web上の図では,単に「放物線の場合は補助円は直線となる」と書いてあります。なお,写真と図は上下が逆ですね。また,ABCDは菱形にはなっていません。
 作図は簡単でしょう。BDは菱形の対角線なので,PA=PC もすぐわかります。すなわち,直線rが準線,点Aが焦点ということです。
 次の図は,説明文と図にならって作図したものです。点の名前は作図順になっています。作図中の円は菱形を作るためのものです。

直線r' や菱形は,作図器の棒として必要なものですが,作図ツールで描くには必要ありません。必要な要素だけ描いたのが次の図です。

 Web上のページには,放物線の作図器の写真は載っていません。そこで,本の写真を見ながら,線を追加して作図器を模したものを作ってみました。 (タイトル画像) 動かせるものが次のページにあります。

線分を棒にする方法は,「交叉平行四辺形を利用した円錐曲線作図器」のページで説明しています。

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