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文科省の情報Ⅰ教員研修用教材第4章を検討する(1)情報通信ネットワーク

 第4章は「情報通信ネットワークとデータの活用」である。教科書の見本が来ていないので,教科書での扱いはわからないが,この研修用教材の内容を検討してみよう。なお,以前と違って,見本は持ってこないかもしれない。規制が強まっているからだ。しかし,中身が見られないのではどの出版社のものを採用するのか判断に困るだろう。実教出版は早々とWebにダイジェスト版を載せたが,やはりダイジェスト版では判断しきれない。

 「情報通信ネットワークとデータの活用」には3つの内容がある。

(ア)情報通信ネットワークの仕組みと役割
(イ)情報システムとデータの管理
(ウ)データの収集・整理・分析

本単元の取り扱いとして,次のことが書かれている。

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どうだろう。
(ア)小規模なネットワークを設計する? これをやった経験のある教員っているのだろうか。たとえば校内LAN? その設計は教員の仕事ではない。
(イ)これができれば望ましいが,かなり難しい。まず,生徒の理解度。高校1年生では無理。進学校の2年生でも難しいだろう。
もっとも,先を読んでいくと,それほど大それたことは想定していないようだ。
(ウ)についてはよいだろうし,これから望まれる学習内容だ。

では,今回は(ア)について見ていこう。

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ここでは,身近なLANとして,家庭内の情報機器で構成するLANを考えている。しかし,設計といっても,情報機器をつなぐ図を描くくらいだ。ツールには,draw.io を使う例が示されている。この draw.io は知らなかったが便利に使えそうだ。Web上でいろいろな図を描くことができる。実習で使うにはいいと思う。

 次に,有線と無線のLANについて。次の演習が示されている。

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公衆無線LANについてのこのような情報が得られるかどうかもあるが,そもそも教室で実習できる内容ではない。教員用研修資料だから,教員対象ということだろうか。「公衆無線LAN」「SSID」といった用語でネットを検索して,これらの意味を調べるくらいの学習活動しかできそうもない。
 さらに,こんなことが書いてある。

安全が確保されていない無線 LAN では,VLAN を設定するなどの知識も生徒に理解させること も必要になる。安全性が確保されていない無線 LAN には,できるだけ接続しないようにする。

VLANを設定するなどの知識も生徒に理解させる? そう簡単ではない。VLANとは何かを理解する段階で,その前に理解しなければならない用語が多すぎる。おそらく,教科書には載らないだろう。

次は,学習19

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「ここでは,実際に必要な機器を用いてLANを設計し,構築していくことを考えよう。」となっているが,教員向けだろう。実習で生徒ができるものではない。その他いくつか書いてあるが,いずれも教員向けで(教員用研修教材だからあたりまえ)授業での生徒実習としては無理があると思われるものが多い。

 以上,学習18と19についてざっと感想を述べた。前述のように,教科書にどのくらいの記述が載ってくるかによるが,高校生の現状を考えるとあまり高度なことはできないのではないだろうか。