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フェリスタス:ただの音階の上下行なのに,何とカラフルな

次の楽譜,ただの音階の上下行。歌えますか。ソファミレドレミファソ。ただし,短調です。

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もう少し続けてみましょう。

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まるで音階の基本練習。
ところが,リズムを変えるだけで,印象ががらっと変わります。

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どんな楽器で鳴らすかでも印象が変わります。たとえば,MIDIのクラリネット

よかったらダウンロードして鳴らしてみてください。
どうでしょう,哀愁を帯びたメロディーになったと思いませんか。

今度は,MIDIのトランペットの音色にします。

少し印象が変わります。

これが,MIDIでなく,実際の楽器で演奏されるのを想像してください。
始めは,アルトサキソフォン。ただし,クラシック系の,です。
ジャズのサックスとクラシック系のサックスでは,まったく音色が違うと思ってよいでしょう。たとえば,ラヴェルのボレロや,ムソルグスキーの展覧会の絵で出てくるサックスです。
クラシック系のアルトサキソフォンで演奏すると,MIDIのクラリネットより一層哀愁を帯びたメロディーになります。
これが,トランペットになると,一転して,哀愁を帯びつつも,決然とした,ファンファーレ風の音楽になるのです。
さらに木管の合奏(ほんとは弦だといいのですが,吹奏楽曲なので・・・)と続くと,音色の変化がまさにカラーバリエーションとなります。

 これ,青木進作曲の「フェリスタス」のテーマ。ただし,上の楽譜とは調がちがいまが。ずっと以前に吹奏楽曲のコンクール課題曲として作曲されたものです。
メロディックなテーマの提示に続き,急,緩,急と展開していき,再びこのメロディーに戻り・・・ 課題曲なのでほんの数分の曲ですが,見事なものです。

YouTubeにあります。リンクが切れなければ聞けるでしょう。
演奏は東京佼成ウインドオーケストラで,サックスはおそらく須川展也です。クラシック系サックスの名手。

ところで,先ほど書いたように,同じアルトサキソフォンでもジャズ系とクラシック系は音色が違うのです。では,吹奏楽ではどうか。YouTubeには,当時の全国コンクールの演奏の他,いくつかの吹奏楽団の演奏があるのですが,高校生の吹奏楽部ではクラシック系の音色は難しいのか,東京佼成ウインドのものとは音色が違います。聴き比べると,東京佼成ウインドのものが断然秀逸。青木進自身が解説している「甘くかつもの悲しい情感を込めて」を具現しているといえましょう。