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【感想】ホース・ガール

2021年 アメリカ
監督 ジェフ・ベイナ
主演 アリソン・ブリー
   デビー・ライアン
   モリー・シャノン

あらすじ

主人公のサラは手芸店で働くちょっとだけ変わった内気な女性。超常現象がテーマのドラマを見るのと乗馬が好きで、人付き合いはちょっぴり苦手。最近の悩みはなんだか不気味な夢を見ること。
そんな彼女だったが、ルームメイトの紹介で素敵な男性と巡り合う。人生いい感じかもと思った矢先、悪夢が徐々に現実へと侵食していく。記憶と時間が飛んだり、夢で出てきた男が現れたり…。
これは妄想なのか、はたまた現実なのか。精神病体感型の新感覚スリラー映画。

感想

もうこれは言ってしまっていいと思うんですけど、今作は統合失調症を患った主人公の目線で語られる話です。信頼できない語り手、という言葉がありますが、まさにそんな感じの映画で、どれが現実でどれが彼女の妄想なのか、見ている側には全くわからない。

だがしかし、そこを細かく考察することはこの映画の楽しみ方ではないと思う。『私もおかしいと思う。おかしいと思うけど、私にはそれが現実なの』というセリフが出てくるが、まさにその通りで、彼女が見たままを追体験しながら、ただ感情に流されて胸の苦しみを味わうのが最もこの映画を堪能できる鑑賞法だと思った。

一番きつかったのは中盤あたりで、明らかに主人公がおかしくなり始めているのに、まだギリギリ日常生活を送れているところ。周囲とのギャップに苦しむ様がもう見ていられない。共感性羞恥に弱い人は要注意。

さて、本作の特筆すべきポイントですが、主演のアリソン・ブリーの演技は外せません。本当にやばい。序盤のちょっと抜けてる女の子って感じからどんどん容態が悪化していく様が、リアリティの連続を感じられて素晴らしい演技だった。めっちゃ早口で陰謀論を語るところとか、いっちゃってる目つきとか、あれ、この人本当に病気なんじゃないの、って疑いたくなるくらいの熱演である。

本作の脚本にも彼女は加わっているようで、自身の体験談も映画にはブレンドされているとのこと。だから、入り込み方がすごいんだと思う。あとフルヌードになるくらいの体当たりっぷりも凄まじい。身体も結構えっち

万人におすすめできるジャンルの映画ではないが、彼女の演技だけでも超絶見る価値があると思うので、その部分だけでお勧めしたい一作である。

次に不満点。後半、はっちゃけすぎだろと思いました。じわじわと主人公が狂っていく様に苦痛を感じるのが楽しい(?)映画だったんですけど、後半戦はもう振り切っちゃって滅茶苦茶。多分そこまで予算もない映画だと思うので、そのぐちゃぐちゃになった世界の映像がチープに感じられて、前半の余韻が吹き飛んでしまいました。

頭にアルミホイルならぬ謎の生地をぐるぐる巻きにしている主人公の姿は面白かったのでいいですけどね。見た目完全に忍者。

あとは、主人公のバックグラウンドをもう少し丁寧に描写しても良かった気がします。精神病になるきっかけで、重要なファクターを含んでいるはずなのにその辺りの説明は簡素に済まされてる感じがした。一つの物語として、そこは省くべきではなかったと思う。

はい、不満点はそれくらいにしておいて、最後まとめに入ります。

よく『気分が落ち込んでいる時は見ない方が良い』って言われる映画があるけど、本作はその手のタイプの最新版って感じです。あともう一度言いますがアリソン・ブリーの演技はマジでアメイジングクレイジーなので、そこだけでも気になる人は見る価値ありな映画でした。

以上、お疲れ様でした。

視聴:ネトフリ

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