月と雨と。⑴〜僕の願い〜
昔読んだ本を思い出した。
結ばれるべき2人が、些細なきっかけですれ違い別々の道を歩むことになる、悲恋の物語。
本好きの君に薦められて僕も読んでみたが、はっきり言って嫌いだった。
どうして想いを伝えない?素直に行動しない?
一歩踏み出せば上手くいくのに「運命のいたずら」なんて言葉で片付けることが気に入らなかった。
でも。
これじゃあの本と同じじゃないか。
君の笑顔が欲しかっただけなのに、プライドに負けて素っ気なくして。
変に気を使って思っていることを言えなくなって、結果君を傷つけて。
「さようなら」
そう言ったのは君だけど、自分から突き放したのと変わらない。
最後に想いを言葉にしたのはいつだ?
あれから数週間。あの日以来の雨。
出て行った君の方、ベランダから眺めると水溜まりに丸い月がいた。
もう遅いかもしれない。
でも、まだ届くかもしれない。
滲む視界で、震える指先を必死に動かした。
本を読まない僕に、君が教えてくれた唯一の言葉。
今日も変わらず、月が綺麗ですね。
いいなと思ったら応援しよう!
サポートいただけると大変嬉しいです…!
いただいたサポートは様々な創作活動に使わせていただきます。