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賞罰欄

 すっかり忘れてしまっていたのだが、わたしは罪人だ。他人の気に入らない部分を見つけては誹謗中傷を繰り返した。それなりに生きてきたはずの人間とは思えないほど、わたしは幼かった。

 どうかこの短編は、わたしの諸作品と一緒に読まれてほしい。その方が、隠された欺瞞に気がつけるだろうから。

 大学に入ったわたしは、それまでと同じようにTwitterを始めた。そこにはもう、あまりにも痛々しい大学生が、落ち葉のようにたくさんいて、腐り切っていた。それで、つい口が滑ってしまった。滑った口というのはなかなかに厄介な代物で、これがよく「バズる」のだ。わたしはその快楽に溺れてしまって、いつの間にか怪物になっていた。無論言うまでもなく、痛々しい大学生の例には、わたしのような冷笑するものたちも含まれているのだが。そして、大学生活をやや歪んだ形であっても謳歌する彼らの方が、正しく美しいことは、さらに言うまでもない。

 わたしが犯した誹謗中傷の数は本当に数えきれないほどあって、また覚えてもいないというのが正直なところだ。加害者は自分勝手である。犯した罪を忘れ、あまつさえ幸せになれるのだから。

 誹謗中傷の仔細を書き記そうかとも思ったが、加害を文章にする行為そのものが加害である気がしてきたので、ここでは書かない。ただ、人の理性では考えつけないような迷惑を、それはもう大勢の人々にかけてきたとだけ記しておく。本当に、申し訳ございませんでした。今はただ、償いの言葉を述べるしかできない。そして、過ちを繰り返さないことだけが、償いになるとだけ、理解している。

 わたしにはすきなひとができて、わたしは幸せになった。その事実は隠していたのだけれども、ついに隠し通せなくなり、友人たちの耳に入る運びとなった。反応は様々で、祝福してくれる人もいれば、わたしの過去を引いて批判してくる人もいた。それは当然のことで、わたし自身も覚悟していた。人を傷つけた悪人が、幸せになってはいけないのだから。

 わたしはしあわせになってしまった。

 被害者の皆様、誠に申し訳ございませんでした。

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