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未来の自分を助けるために贈与によって人間関係を貯める

『きみのお金は誰のため』は経済教養小説。

「お金の謎」と「社会のしくみ」を知ることができる。


今回のテーマは『未来には贈与しかできない』。


世界は贈与でできているんや。

自分から他人、他人から自分への贈与であり、過去から現在、現在から未来へと続く贈与なんや。

その結果、僕らは支え合って生きていけるし、より良い未来を作れる。

それを補っているのがお金やと僕は位置づけている

きみのお金は誰のため

あなたが子どもに食事を作ってあげる。

子どもがあなたの家事を手伝ってくれる。

贈与によって支え合って生きていける。


1992年にIBMが世界初のスマートフォンを発表した。

そのおかげであなたはスマートフォンを使える。

今、多くの人が生成AIを使って試行錯誤している。

そのおかげで未来に生産性が向上するかもしれない。

贈与によって経済は発展する。


贈与経済に詳しい文化人類学者はこう語る。

タンザニアでは、14歳以上の銀行口座保有率がいまも20%程度にとどまっています。(中略)

それは単に貧乏というだけではなくて、稼いだものを誰かのための別の事業に投資したり、あるいは支援するために人にあげてしまうから。

彼らはそうやって「人間のかたちで貯金している」ようなものなんです。

DIG THE TEA

タンザニアではお金を貯めない。

誰かに投資したり贈与したりする。

贈与によって人間関係を貯める。

タンザニアの人は、困っている人がいたら助けはするけれど、すぐに贈与したものを返してもらおうとはしません。

むしろ、積極的に多くの人に貸しをつくる。(中略)

そういう人を周りにたくさん作っておいて、いつか自分が「本当に困ったとき」に助けてくれればそれでいいと思っているんです。

DIG THE TEA

すぐにお返しをしてもらうことなんて望んでいない。

いつか自分が困った時に誰かがお返ししてくれればいい。


日本でも贈与の文化はある。

いわゆるお歳暮とかお中元とか、そういう類の贈与は減少傾向にあります。

でもその義務的贈与も、嫌々ながらもやっていたのには意味があるんです。

そういう文化がなかったら、近隣住民との縁はあっという間に切れてしまう人がいるのです。

しょうがなくでも贈与をすること、なにかものを渡すことで、災害が起こったときや、自分が独居老人になったときに、ご近所さんが見にきてくれる確率は絶対に上がるはずです。

もちろん鬱陶しさは切り離せないとは思いますけどね。

DIG THE TEA

お歳暮やお中元がそう。

実家から送ってきた野菜をお隣さんにおすそ分けするのもそう。

そうして家族以外との人間関係を貯める。

そうすればいざという時に助けてもらえる。


国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が12日発表した世帯数の将来推計によると、1世帯あたりの平均人数は20年の2.21人から減少し、50年には1.92人となる。

50年には65歳以上の一人暮らしが1083万人と20年比47%増加する。(中略)

社人研の推計では、50年時点では高齢単身世帯に占める未婚者の割合が、女性で30%、男性では60%にのぼる。

今後は子どもを持たず、いざというときに頼れる近親者のいない高齢者が急増する可能性が高い。

日本経済新聞

今後、日本は家族のいない単身高齢者が急増する。

単身高齢者こそ家族以外の人間関係を貯めておいたほうがいい。

そうしないといざという時に助けてもらえない。


仕事上の人間関係は会社内や会社間の関係に過ぎない。

会社の外に出て肩書が剥がれれば人は見向きもしない。

そんなことに退職してから気づく。

若いうちから人間関係を貯めておけばよかった。

年を取れば新たな人間関係を築くのが億劫になるから。

いや、今からでも遅くはない。

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