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年末の大捕物 RME Fireface UCX II

先日「今年買ったオーディオインターフェイスのレビュー詰め合わせ」というレビューを書きましたが……、あれは嘘でした!

実はこの記事を書いたあと、今年も残るところわずかというタイミングでもう一台増えてしまいました!!

noteで何度も欲しい欲しいと書いていたRME Fireface UCX IIが売られているのを偶然に、偶然に捕捉!!!
で、そのままソッコー確保しちゃったんです。そう、またもやオーディオインターフェイス!

RMEとは

オーディオインターフェイスの分野などで圧倒的なプレゼンスを誇るドイツの会社で、日本だとみんなアールエムイーって呼んでいますがYouTube見てるとアァミって聞こえます。どの発音が正しいんだろう。

RMEはDTM初心者のうちから名前の聞くことの多いBabyfaceをはじめ、Fireface UFXというラックマウントのオーディオインターフェイスやそれにまつわるコンバーター、さらにマイクプリなんかも作ってます。

特徴は「原音に忠実に」っていうこと。

クロック精度の高さやマイクプリの味付けのなさなどとにかく徹底的に原音にこだわっています。企業での音響製品製造の際に測定用として使われるなどミュージシャン以外のプロからも信頼が厚いです。オーディオインターフェイスを作っているメーカーの中でも業務用デバイスっぽい立ち位置という印象ですね。

また、旧製品であってもファームウェアの更新が長期間継続され、長く使い続けられます。ドライバに関してもOSアプデへの追従性がすごく良くて新OSがリリースされてすぐにスッと更新ファームウェアを提供してくれます。最新OSを入れておく必要のある人に一番向いてそう。

このようにハードウェアとソフトウェアの開発力を高いレベルでバランスさせているメーカーで、MacのM1プロセッサへの移行という大きな変化にもきっちりついてきました。

RMEのオーディオインターフェイス

ラックマウント系のFireface UFX、ハーフラックサイズのFireface UCX、そのほかコンパクトなタイプでBabyfaceというラインナップが主力でしょうか。ほか、業務用ではMADIやDANTE、AVB、ADAT接続可能なものなど、多種多様なオーディオインターフェイスをリリースしています。

最近は精度をさらに高めたSteadyClock FSというクロックを搭載した製品がリリースされ始めています。その精度はフェムト秒レベル。フェムトっていったい……ってなりますがフェムトはミリ、ナノ、ピコときてさらにその下の単位なんですね。FSはFemtosecondの略なんでしょうか。とにかく高精度なクロック。クロック精度のみを変更して聴き比べなどはしたことがありませんが、オーディオ再生音の解像度ってサンプリング周波数よりもクロック精度に依存しているんじゃないかと今までオーディオインターフェイスを買いまくった経験から思ってます。

マイクプリは味付けをするのが最近のトレンドのようですが、RMEはそんなのどこ吹く風で質実剛健路線を突っ走っています。
原音さえ記録しておけばその後にプリアンプのエミュレーションを掛けたりするのは容易いですからね。なのでRMEのマイクプリはいわゆる「クリア系」に分類されると思いますが、「クリアに聴かせる」ではなく原音純度が高いということを考えると「原音忠実系」と呼ぶのがいいのかもしれません。

マイクの特性評価にもきっちり使えそうです。エンジニアの人なら一つは持っていたいオーディオインターフェイスじゃないでしょうか?

Fireface UCX II

このUCX II、FirefaceのうちUCと付くものはハーフラックサイズです。Ultra Compactの略なんですかね。アナログに加えADATやAES/EBU、S/PDIFによる入出力も含めると合計20入力20出力。バランスよく機能が詰め込まれているタイプで性能は妥協ありません。コンパクトなので持ち歩きにも便利ですね。

RME Fireface UCX II

マイクプリは2チャンネル。RMEのマイクプリがもっと欲しい場合はQuadMic、OctaMicなどといった製品がリリースされています。

前のモデルUCXとの比較

スペックを見るだけでも着実に性能が向上してます。
そのうちマイクプリはゲインが全モデルは65dBだったのが75dBになり、ダイナミックマイクもかなり余裕を持って使えるようになりました。ダイナミックマイクなど感度が低めのマイクはマイクプリの性能がコンデンサーマイクより大きく関わってくるので嬉しいアップデートです。
ディスプレイも同社のADI-2 Pro FSから導入された高精細のものに変更され、音量などが視覚的に把握できるようになりました。
UCX IIがUSBホストとして機能し、接続したUSBドライブに直接オーディオデータを書き込めるDuRecという機能も搭載です。記録フォーマットが面白くて、マルチチャンネルのWAVファイルなんです。だいたいのDAWでこの形式に対応しているそう。
ほか、なんと全てのアナログ出力端子がDC Coupled対応となってCV/Gateを出力できるようになりました!
もし今UCXを持っていてUCX IIを買おうか悩んでいるならUCX IIを買い増してADAT接続することでアナログ入出力を拡張するっていうのもアリかと。特にWindowsは複数のオーディオインターフェイスを束ねることができないので役に立つ場面がありそう。

TotalMix FX

RMEのオーディオインターフェイスはTotalMix FXというソフトウェアで制御します。これが手触り感よくてめっちゃいいです。なんとiPad用のバージョンも有償ですが提供されています。

ルーティングが自由自在で、マトリクスビューから直接音量まで操作できます。MOTUのソフトウェアとは違って横軸が入力、縦軸が出力となっています。

TotalMix FXのマトリクスビュー(iPad)

まだ使い始めでそれほど設定していませんがこんな感じで。

ミキサービューではDSPを利用したEQやコンプ、ディレイやリヴァーブなど、もうちょっと細かい設定が可能です。

TotalMix FXのミキサービュー(iPad)

こんなことがTotalMix FXで、さらにiPadを利用してできてしまうなんて感激でした。
ほか、TotalMix FXはいろんなことができるんですが

  • リボンマイクなどの感度の低い機材を使う場合でマイクプリのゲインに余裕を持たせたい場合はアナログCh1にマイクを接続してAnalog Outからある程度増幅した信号を出力し、そのままアナログCh2に入力してさらに増幅してコンピュータに取り込む

  • 上の応用(?)で、感度の低いマイクのゲインを20dBから30dBほど持ち上げた信号を出力して外部のマイクプリを利用する(インラインマイクプリ代わり)

  • 外部マイクプリでゲイン調整した信号を入力し、TotalMix FXを利用してEQ、コンプをかけて録る。

  • DAWから出力した信号をハードウェアエフェクタに通してセンド・リターンで使う

  • 他のオーディオインターフェイスとADAT接続し、AD/DAコンバーターとして利用する

  • 外部のシンセやドラムマシンから出力した信号を取り込み、コンピュータやiPadなどでエフェクトをかけてさらに外部に出力

  • MIDIやOSCでリモート制御(ちなみにTotalMix FX Remoteというネットワーク上のTotalMix FXを制御するソフトウェアもあります)

なんてことも思いのままです。

ちょっとわかりにくかったのは入出力の規格(?)変更(+4dB, +13dB, +19dBの切り替え)くらいですかね。

実はiPadにUSB接続した状態でルーティングなどの制御ができるオーディオインターフェースってめちゃめちゃ少ないんですよ。iPad用の多チャンネル対応のインターフェイスとして最高峰なんじゃないでしょうか。さすがにファームウェアの更新にはMacやWindowsが必要になりますがそれでも嬉しい。
これでiPadをエフェクタ、録音機材として使えそうです。
ただiPad Pro 2021って通常時のサンプリング周波数は44.1kHzに固定される仕様で、オーディオソフトウェアなどでサンプリング周波数を48kHzなどにしてるとアプリを切り替えるごとにサンプリング周波数が変わってしまいます。
ということでOptical接続するなら対向の機器を選びます。せめて48.0kHzにして欲しかったです……。

他のオーディオインターフェイスとの比較

インターフェイスに楽しさや面白さを求めるのなら他のメーカーでも良いのかなと。
ですが頼れる一台を探しているのであればRME Fireface UCX IIがオススメです。今までの実績から考えても将来に渡ってファームウェアやドライバ更新などのサポートが続き、長く使い続けられる一台になることでしょう。鉄板の選択肢です!
iPad Proの2021モデルからThunderbolt 4が搭載されました。ところがサードパーティ機器との接続ってあまりテストされていないのか、繋いでいるだけでiPadが延々と再起動したりするものもあるんです。今のところ、自分のiPad Proではそういう変な挙動には遭遇してません。さすが。

残念なのは主力製品群に使われているAKMチップが工場火災で入手難になったうえに追い打ちをかけるように半導体不足となってしまい、供給が全然安定しなくなってしまったことですが、それでも待つ甲斐はあると感じています。

まとめ

UCX IIを年内にmngできて嬉しみの極み。しかしデジタルで多チャンネルやるとなるとMADIやらDANTEなどが出てきますが、それほど距離の離れていない状況で安価に利用可能なDDってなかなかないものなんでしょうか。ADATは帯域の制限がきつくて96kHz以上を使うとチャンネル数減っちゃうし。ソフトウェアで仮想オーディオインターフェイスを構築してネットワークを介して他のマシンとやりとりができると嬉しいな。いちおうAppleのAirPlayでも利用されているRemote Audio Output Protocolというものはあるのだけれど・・・。

ということでまとめると、満足したので来年はもうオーディオインターフェイス買わない!(たぶん)


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