【創作】きれい好きの団子屋(5/5)

「大工の手伝い……」
常連だった弟は、団子屋の主人の反応を待たずに続けました。
「決して、適当に言ってるんじゃあないよ? 家を建てる大工ってさ、柱一本立てるにも慎重にならなきゃあならないだろ? でも、柱一本だけに時間を掛けてたら一向に家は建たない。 細かい所と建物全体と、どっちも疎かにできない大切な仕事さ」
団子屋の主人は小さく唸りながら納得しました。
「けど、それが私に務まるとは思えないなぁ。 だって夢中になってしまったら……」
「だからこそ、全体を見る棟梁がいるんじゃあないか。 棟梁や沢山の仲間の言う事なら、柱一本に夢中になるなんて事はないだろ?」
「確かに……」
「一人だとそれこそ〈木を見て森を見ず〉になりやすいところを、周りと関わっていくうちに加減を覚えていけるんじゃあないかなぁ」

「ありがとう。 大工になるの、ちょいと考えてみるよ」
そう言って主人は帰っていきました。
弟は、主人が少し希望を持てたような顔を見て嬉しくなりましたが、少し寂しくも思いました。
「あの団子、もっと食べたかったなぁ」

(おしまい)

フォローやスキも歓迎です・・! いつもありがとうございます!