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ホニャララLIVE #091 松浦美穂(スタイリスト)

自分の預かり知らぬところであらゆる事象はつながりを持っている。仮にそれが自分を中心とした出来事だとしても。あるいは人生とはそういうものなのかもしれない。自分を支えている価値観や思考、その技術のルーツを遡ってみれば、「影響を受けた」と自らが回顧することのできるものと、記憶には残っていないものの細胞のように体が覚えていることの2種類があるのかもしれない。

松浦美穂さんは言うまでもなく業界を代表するような人物でありながら、どこか独特な存在感を放っている。トップランナーでありオルタナティブであるようだ。ご自身が経営するサロンtwiggy. は30周年を迎えたという。30年続けられるというのは素晴らしいことだと思うし、凄まじいなと弱輩ながら。

とにかく楽しいお話の時間でした。聞くにつれ、幼少の頃から現在に至るまでの全てが線としてつながり、その独特なポジションの地盤となっているのだと気付かされました。

髪の毛というのは不思議な存在です。自分の身体の一部でありながら、自分ではどうすることもできない。爪のように自分で切ることもできず、お化粧のように自分で自分のやりたいようにするには簡単にはいかない。もちろん切るだけなら誰でもできるが、自分の望むようにはいかない。誰かにこの身を委ねないことにはままならないのが髪の毛=ヘアスタイルなのだろう。

松浦さんは髪の毛は「気」だと言います。確かに心機一転する手段として髪の毛をバッサリ切るということは古くから(?)行われている。気分を変えるとはまさにです。松浦さんはお客様とのやりとりの時間を「セッション」と表現していたのはとても興味深いものでした。

セッションとはJAZZをみればわかるように一人でなし得るものではありません。誰かと一緒になすものであり、そこに生まれる共創こそがセッションの醍醐味です。つまり、自分の身体の一部であり、自分らしさを体現する一つの手段である髪の毛は、自分以外の誰かに委ねるしかなく、委ねられる側の松浦さんが共創するスタンスを持っていらっしゃったのは印象的でもあります。神々しくもある。

最も、自分らしさというのは誰が決めるものでもありません。そもそもその人の持っているものなのでしょうから、誰かにデザインしてもらうものでも、自分のエゴで形作るものでもないのでしょう。ところがそれとは裏腹に自分らしさとはなかなか見つけづらいものでもあります。松浦さんのお話を聞くうちに僕はスタイリストという仕事の中に、仏師の姿を垣間見ました。仏像を掘る人たちです。

その心はぜひアーカイブをご覧くださいな。合掌。

活動内容は全く異なるにもかかわらず、どこかyujiさんのやっていらっしゃることとの共通性も感じました。ヘアサロンで自分らしさを手に入れるための心得もありましたよ。

2022年2月13日


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