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ホニャララLIVE #017 (食)ソウダルア

ソウダルアさんは出張料理人だ。しかしながら、そう一言で括ってしまって良いものか悩ましい精神性をお持ちで、それに基づいた活動をされている方でした。

ルアさんの思想に触れるには、このヴィデオの視聴をお勧めする。

LIVE当日には、別の土地で行われたものをみんなで試聴し、のっけから痺れる回になりました。

このヴィデオの中で、ルアさんは皿を使用していない。聞くと皿とは「境界線だ」と話してくれた。皿を使わないことで境界線は曖昧になり、皿にのせるという所有の観念をなくすのだそうだ。

つまりはみんなのものを、みんなで頂くということを体現されている。みんなとはおそらく自分を中心に眺める誰かを指しているのではなく、地球あるいは宇宙といった巨視的な視点から眺める全体のことを指しているのだろう。おしゃべりが進む中でこの感覚は理解できてくる。

5歳の頃から料理が趣味で、そのまま料理の仕事についている。自分の店を構えていた時期もあるそうだが、その時には「メニュー」があるということに違和感を覚えていたそうだ。メニューがあるということは準備をしなくてはならないということ。それはつまりロスが出るし、その時のベストの食を提供できない可能性を生むということだ。と語る。

そんな中で2011年の東日本大震災が起きる。ほぼ同時に放射能汚染の問題が発生する。食の安全性が極めて不透明になるわけだが、その時に料理に値段をつけることをやめて、いわゆるドネーション制の店に変える。それだけでもすごいことだが、その後しばらくして店を構えること、そのものもやめたそうだ。

通常料理人とは店にお客様を招き入れるものだが、料理人の方が全国に足を運び料理を振る舞う「出張料理人」というスタイルをとるようになる。

ここまでの話をルアさんご本人の口から聞いていると、いわば店という根っこに縛られていた種子が、風に乗ってふわーっと飛び立ったような自由さや、軽さのようなものを想像した。

その種子は今度は全国のあらゆるところに根を張って、その土地のものになっていく。そして、その土地の料理を振る舞うのだ。

ちなみに出張料理をする際には、最低3日間は取り止めもなく、その土地をプラプラ(ブラブラ?)するそうだ。細胞のサイクルは72時間だから、その土地のものに細胞を入れ替える。それがルアさんにとって、地のものを振る舞うための準備であり、「資格」なのだ。

そして、米を炊くならその土地の水で。肉を供するならその土地の野菜と。極め付けは生息域や海抜から揃えるという。つまりその肉が食していたであろうものを隣に並べるというわけだ。究極のマリアージュと言っていいのではないか。

yujiさんはルアさんを「シャーマン」と評していた。言葉を媒介に大きな通念を伝えるかの如く、食(料理)を通じたメディウムとしての存在という意味だろう。

それを裏付けるかのように、前出のヴィデオのパフォーマンス中は記憶がないという。自分の意思で行っているようでありながら、自分の意思を超えた何者かによって動かされるような感覚なのだろう。

ルアさんがご自身のことを「受動的な人間だ」と仰っているのも興味深い。これがどういうことなのかは、ぜひ本編をみていただきたい。長いけど(笑)

冒頭10分で引き込まれる。食は毎日のことである。食べることは自分の命を支える行為だ。それは地球の大きな営みの中に自身を置くことにも近いのだろうな。空腹の状態で観るのもいいかもしれないな。

2020年8月1日


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