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女川日記

10月中旬、2泊3日の日程で女川町に行きました。きっかけはホニャララLIVEにもご出演くださったNPO法人アスヘノキボウ代表 小松洋介さん。数年前から何かご一緒できれば良いですねという話をしており、時々情報交換をしていました。

今回は星読みのyujiさんと一緒です。yujiさんと行動をともにするのは久しぶり。すっかり星の人としてお馴染みですが、こういう機会に色々と話をするほどに、この方のあらゆる文脈への造詣の深さにはいつも驚かされます。

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女川を訪れたのはこれで2度目です。1年以上前から何度か訪ねる話は出ていたのですが、台風やら緊急事態宣言やらで幾度となく延期を重ね、ようやくこのタイミングで実現したという経緯があります。延期は良い部分もあって結果的に良い時期だったみたいで、日々忙しくされている町長を初めたくさんの女川の方にお会いすることができました。

これを読んだら女川が好きになる

yujiさんに、"風の時代のコミューン(風の谷)の一つに違いない"と言わせる女川町の魅力は、なんといっても文字通り風通しの良さなんだろうと思います。風通しとは地形や気候がもたらす地理的な風通しもそうですが、人が織りなす地域というコミュニティの風通しの良さもあります。

女川町は牡鹿半島基部に位置するとても小さな町です。仙台から車で1時間程度、電車だと1時間半の場所です。今回僕たちは電車で行きました。仙台からだとしても夜までゆったり楽しんでほしいから、宿泊する前提で行くことをお勧めします。宿泊施設もいくつかあります。駅から一番近いものだとホテル・エルファロがあります。小松さんの女川での最初のプロジェクトです。

遠いけど電車でのんびり行くのも心地よいものです。小さな電車の旅は手段としての移動ではなく、移動そのものが目的になり得ます。電車に揺られながら沿岸部の風景を眺める時間はちょっとだけ幸せな気分になれます。

駅の改札口を出るとすぐ真っ直ぐにテナントが軒を連ねる商店街が伸びています。商店街を抜けるとすぐに女川漁港に出ます。

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複雑に入り組んだリアス式海岸の入江の海はとても静かです。夕方近くには多くの地元の人が釣りを楽しんでいるようでした。周囲に目をやれば四方を山に囲まれていることがわかるのですが、車なら山上までもすぐに行けちゃう距離です。海と山がとても近いのは女川の地理的特徴の一つ。周辺はトレイルランニングのメッカとしても知られ、ランナーやハイカーもたくさん訪れるそうです。近年人気の聖地、金華山も近いです。

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独特の地形がもたらす風通しの良さ

一つ目の風通しの良さはこの地形がもたらす、いわば地球の恵。嫌な"気"なんて全部飛んでいってしまうであろう"抜け"があります。毎日強風ということではないのですが、山に囲まれていながら風が通り抜ける感じは印象的でした。また山と海が近いので山のミネラルはそのまま海へと降り注ぎます。潮の流れに恵まれていることもあり、良質な漁場として古くから栄えてきたそうです。

日本中の港町に名物の海鮮丼はありそうですが、女川の海鮮丼はその具材の多さからご飯が少なく感じるくらいの代物です。その名も女川丼!ドーン。

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地元の方は夏には山側でキャンプを楽しんだりもするそうです。海の印象が強い女川ですが山も魅力的。港からでも車で15分も行けば見晴らしの良い場所に出ます。眼下に広がる港の景色はとても素晴らしいものです。雨男じゃなければ。(僕たちは何も見えませんでした。気持ちは良かったです!)↓

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風通しの良い人間関係

さて、女川町といえば震災復興に際して当時の商工会会長が「還暦以上は口を出さない」と宣言し、次世代を中心にした町づくりを推進した自治体です。この辺りは小松さんご出演のホニャララLIVEをご覧ください。配信当初は視聴者の方からたくさんの反響をいただきました。自分たちの町は自分たちで作るという想いが女川の方はとても強く、その精神が現在の起業家が集う町としての顔を作っている部分もあるのだろうと感じます。

商店街はテナント型商店街として運営。テナントだからこそ志せば誰でも出店のチャンスがあり、常に入れ替わりも起こるためシャッター街にはならずいつでも活気にあふれています。そのための仕組みもユニークで、「お試し移住」や創業支援の「創業本気プログラム」を積極的に展開しています。どちらも強制力をあえて持たないのが女川らしいところです。お試し移住はお試しの後で移住しなくてもOK。創業支援は他の自治体で創業しても応援するというスタンス。まさに風の町。要するに人口を増やす仕組みではなく、愛着を増やす仕組みなんだと思います。こんなスタンスで応援されるといつか女川で仕事したいと思うのが人の心です。女川には町民以外の神輿の担ぎ手がたくさんいると言います。商店街の活気も上野のアメ横や心斎橋とは雰囲気がまるで異なり、淀むことのない川の流れのような優しさにあふれています。

この町の楽しみの一つは夜だと思ってます(笑)。商店街でちょいと一杯飲んでいようものなら、たくさんの人にお会いすることができます。役場の人も近隣の人もみんな並んでお酒を飲むわけです。もちろん観光の人にも開かれています。ビールを飲むならガル屋さんへぜひ。うまい!

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町の皆様はとても気さくな方ばかりです。初めてお会いしたのに、昔からお世話になっている先輩という感じでとてもカジュアルに接してくださいました。その関係づくりに美味しいビールが手伝ってくれていることは間違いありません。

初めて女川を訪ねたときも僕はガル屋さんでビールを頂いたのですが、この時は町のみんなに愛される地元の中華料理店、金華楼の大将がいらしてお話を伺ったのを覚えています。ひとしきり盛り上がった後でショップカードを頂戴したら、それがギターのピックという洒落っぷり。皆様とてもユニークだこと。

女川にはたくさんの専門店があります。港町だからといって海鮮ばかりではありません。その多くがこの地で起業をされたお店です。絶品のピザはテイクアウトもOK。若者が夢を語りお腹を満たすラーメン店。体が冷えたらカフェで一服。フレーバーティーの専門店もあります。スペインタイルの絵付けを体験できる工房はお土産にもぴったり。女川の町はたくさんのスペインタイルで装飾されています。

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もちろん起業家だけではありません。古くから地元で愛されるお店も多数あります。は地元の海産物を使ったメニューも多数。

女川で80年以上続く老舗の蒲鉾店、高政の蒲鉾は食事にもお酒にも合う逸品。四代目となる現社長は蒲鉾店という枠を超えて女川の魅力を「世界」に伝え続ける人物の一人です。取り分け興味深いのは芸能事務所WACKと共催で開催しているONAGAWACKという音楽イベントです。過去には2日間のイベントに1万5000人以上もの人が女川を訪れたと言います。町長自らも町民バンドのメンバーとしてパフォーマンスしているそうな。

企業にとって事業というのは手段でしかないのかもしれません。コーヒーショップが提供するのはコーヒーですが、その意味を突き詰めて考えれば、居心地やショップで過ごす時間を提供していると考えた方が本質的です。高政の事例はその意味でもとても刺激的です。蒲鉾店が音楽イベントを仕掛けるのには確かな意味があるのだと思います。

買い物にはスーパーにも行ってみてください。旅先で地元のスーパーマーケットに行くのってワクワクしませんか?旅という一時的な滞在ではなく、その土地の暮らしを垣間見ることができるようで僕は好きです。女川にはおんまえやというスーパーがあります。スーパーという場所は買い物のためだけの場所ではなく、地元の人たちが集い何気ない会話を楽しむための場所だという考えから、カートがすれ違える広い通路の幅を設けているそうです。その土地に必要なものを提供するのがマーケットの役割だとすれば、交流の場が必要だということなのでしょうね。

進行形の町、女川

震災から10年が経ちました。女川は小さな自治体ですから当時そんなに大きなニュースにはなりませんでしたが、その被害は東北地方の中でも群を抜いて大きなものだったそうです。この10年はとにかく復興に向けて皆ががむしゃらに活動していたと、多くの方が口を揃えて言います。

「還暦以上は口を出さない」と宣言した当時の商工会会長は、復興に10年、そこから町が評価されるのにさらに10年かかると話して次世代へバトンを渡されたそうです。ならば2021年の現在は次の10年のスタートラインとも言えます。今度は町の中で個人の輝きをいかにデザインしていくか?という時代なのかもしれません。

コミュニティとは常に一定の流動性を保たなければ廃れてしまいます。女川はそのユニークなまちづくりを持って絶えず人の流れを生み出すことに成功している自治体です。テナントは変わらずとも新しい試みを取り入れ、関わる皆が自分ごととして町に参加することでいつでも活気と笑顔に溢れています。

僕も隣町まで散歩するくらいの感覚でちょいちょい足を運んでみようと思います。また違う季節に。誰にも言わずふらりとビールを飲みに行くくらいでちょうどいいかもしれません(笑)。新な出会いを楽しみに。

ホニャララキャラバン

今回の旅はホニャララLIVEから派生したようなもので、ホニャララキャラバン構想のテストケースになったかもしれません。お声がかかれば日本各地へふわっと風に乗って楽しみに行けるようでありたいものです。

※ホニャララキャラバン
地域の魅力を味わい旅をしながら、配信を通じて発信したり体験やコンテンツを提供するような何か。

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