この高原とコテージで いつかの那須に思いを馳せて
神宮前で逢いましょう
番外編
【この高原とコテージで ~いつかの那須に思いを馳せて~】
皇族の方が夏などにご静養されている様子をテレビで見かけるこの土地の事を、この所よく調べているのは外でもない。
マヌルネコ、という世界最古のネコ族の姿を一目拝みたいから……というのが第一の理由である。
元々エキゾチックショートヘア、ペルシャ猫などずんぐりむっくりで、目つきが悪く鼻も潰れているような所謂“ブサかわ”と呼ばれる猫種が大好きなので(猫と言うのは偉大である。鼻が潰れていようが気性が荒かろうが生きていれば魅力的というのを体現されているのだから)目が常に三白眼でボテッとしていて意外と凶暴なマヌルネコを一目、那須どうぶつ王国のYouTubeチャンネルで見るなり虜になってしまったのだ。
山荘地帯からでも“カワイイ”が発掘できるのだから、この国は大したものである。
ステンドグラス美術館の祈りの絵が描かれた硝子窓に差しているであろうみどりの山の澄んだ日差しが届く静かな街。
これはインスタを見るようになってから知ったのだが、西洋のお屋敷さながらのペンションが点在している。
客室数は多くないので早めに予約した方がいいだろうが英国のアンティーク家具やキャビネットの中にウェッジウッドの飾られたインテリアや木製の天蓋付きのベッド(リネンもラルフローレンのものだったりする)とヨーロピアン・クラシックな別荘に泊まり、朝はバスケットに入ったパンやオムレツの洋朝食をとれる所もある。
ロリィタを着て泊まりに行けたらさぞかし素敵な小さなホテルである。
服部まゆみの“この闇と光”というゴシック・ミステリの傑作をまず連想した。
那須にいつか旅行する日が来たら、好きな本をキャリーに忍ばせて物語の中に出てきたであろう背の高い天蓋のベッドに潜り込んでさながらレイア姫に(先述の本の主人公。スターウォーズじゃないよ)なった心持で美文によって編まれた物語の世界にチェックアウトするまで囚われてみたい気持ちがある。
まぁ、キャリーバッグを置いたらひょいひょいと英国紅茶カフェやら雑貨店に山荘を飛び出していってしまわれるだろうが……。
(なんならその後夕飯に餃子とラーメンを平らげている可能性もある)
那須にはテディベアミュージアムがあるくらいなので、先程紹介した素敵なホテルのロビーにはゴブラン織りのソファの上にシュタイフ製のコがくつろいでいる事もある。
これを書いている10月現在、その那須テディベアミュージアムにはLINEスタンプでよく見かけるうさぎとピスケがバイトで作ったぬいぐるみを手に取る事ができる。
今の20~30代はガラケー時代にポエムと女の子の待ち受け画面にお世話になったであろうイラストレーターのカナヘイとコラボしているのだ。
カナヘイさんが描く優しいタッチのイラストが元になっているもあるとは思うが、テディベアそのものの持つ温もりやどこか“包まれているのか、自分が包んでいるのか分からなくなる”優しい手触りは何なんだろうか……。
ビスク・ドールなどの人形は“永遠の生命を持っている”ように思え、冷たい瞳でこちらを見据えてくるので何となく恐いがぬいぐるみのヴィンテージ品を見ても、なぜか余り怖いとは感じない。
どんなに頑張っても布で出来たものなので経年したが故のちょっとしたキズや例えば同じキャラクターなどでも、どのコも(実は)違う顔をしている。
ここは余談で、かつ横道にそれるが。
ディズニーシーなどでダッフィーの売り場を見ると、ダッフィーの顔を一個一個入念に覗き込んでいるお客さんがたまにいるが…彼らは“顔立ちをチェックしている”のだといつだったか母に教えられた事がある。
大量生産とは言え、顔立ちはちょっとの縫製の差で鼻が高い子もいるし笑っている子もいるらしい。
好みの顔のコをお迎えするためにマニアは余念がない。
大人になってから、ロリィタブランドでクマちゃんのポシェットをお迎えするときに彼らの気持ちをようやく理解した出来事がある。
限定の苺のずきん(マイメロディの頭巾の苺バージョンを想像して頂きたい)のクマの女の子のポシェットをお迎えするとき、常時販売の同じキャラクターのポシェットを店頭で見比べてみて素人目にも、
(アレ、苺頭巾のコの方が若干童顔じゃないか……?)
と感じた事がある。
そこを意識し出してから、テディベア売り場の見方もだいぶ変わってきたように思う。
那須へ行けど、変わらずカワイイもの探しに明け暮れているだろうか……。
空想でここまで綴ったが実際に行ってみないと草原を吹き抜ける高原の風や美術館のステンドグラスの厳かさというのは分からないものである。
執筆 むぎすけ様
挿絵 麻菜様
投稿 春原スカーレット柊顯
©DIGITAL butter/EUREKA project
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