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オシロスコープ選定の基準

ゆかりです。
先日情報解禁しましたが現在自作キーボードのノウハウを活かして、量産に向けた製品開発を行なっています。

オシロスコープ導入の経緯

射出成型用の金型を発注し設計屋さんから設計データが届き、基板の開発に移行したため、そろそろ本格的な電気的検証のためにオシロスコープの導入を考えています。

僕自身は自作キーボードを始めるまでは電子工作の知識もなく、独学で電子工作の知識をなんとか得てきました。ここ数年はテスターのみを使ってデバッグをしており特に困ることもありませんでした。

しかし製品開発となると話は違うように思えます。
意図通りに信号が出ているのかどうかの確認をするにはオシロスコープでなければ評価できませんし、また何かエラーが起こったときの問題解決はテスターでは限界があります。
そこでこの度素人なりに低価格帯オシロスコープの導入を検討しましたので、備忘録程度にまとめてみます。

(前述の通り素人ですので間違っている点は多々あるかと思いますが、その場合は優しくご指摘をお願いします。)

オシロスコープスペックの簡単な説明

オシロスコープは以前の会社で自作シンセサイザーを組んだ時にその波形をお遊びで確認する程度でしか使ったことがありませんでしたので、素人なりに選定するための情報収集を行いました。

どのオシロスコープも公式サイトにてスペックが公開されています。
まずはそのスペックからいくつか特に大事そうなものをピックアップしてその意味を調べました。

チャンネル数

オシロスコープは電気信号の電圧の変化を連続的に(デジタルオシロスコープの場合は厳密には違いますが)測るためのものです。
チャンネル数とは計ることができるチャンネルの数です。

基本的には2,4,8チャンネルのものが多く、この数が上がると価格も跳ね上がります。
周波数帯域等は後からオプションの購入で制限を解除できるものが多いですが、チャンネル数に関しては制限解除できないものがほとんどのためもし足りなくなってしまった場合は買いなおす必要があります。

また最近はロジックアナライザ機能を内蔵しているオシロスコープもたくさんあります。
ロジックアナライザは電圧の変化を非連続的に(0,1のデジタル信号として)計り解析するものです。
ただしほとんどの機種においてデフォルトではこの機能が有効化されておらず、また専用のプローブも別途買いなおす必要があります。
このプローブが最低でも数万かかるものなので低価格帯だとかなり痛いです。

必要であればそれを念頭に置いて検討しましょう。

周波数帯域

ぱっと見一番目立つ基本的なスペックです。

素人目には「それ以上の周波数は全く測定できないのかな?」と思っていましたが実はそうではなく、測定結果が本来の振幅の70%まで減衰してしまう(-3dB)周波数の限界のことです。
結果的に帯域以上の周波数成分が減衰してしまうため、波形のエッジが正確にでなくなります。
例えば10MHzの理想的な矩形波を想像してみましょう。波としては10MHzの周波数ですがフーリエ変換を学んだ人ならわかる通りその中にはそれ以上の高周波が無限に含まれます。

そのため周波数帯域は測定したいものよりもかなり大きめに考えておく必要があります。
よく言われるのは5倍の法則だそうです。つまり50MHzのオシロスコープでは10MHzの信号までしかまともに扱えないということです。
製品によってピンキリですが据え置き型のオシロスコープの場合低価格帯でも50MHzくらいからスタートすると思います。上を見ればキリがないですし価格もどんどん跳ね上がっていくため、自分に必要そうな周波数帯域を探す必要があります。

ただしこのスペックは大抵の機種においてオプションを購入して制限解除する形になります。
例えばRIGOLのDS1000Zシリーズの場合、50MHz, 70MHz, 100MHzとラインナップされており、それらはソフトウェアで制限がかけられているだけです。
そのため最初は50MHzで購入しておいて困ったときに適宜アップグレードするという使い方ができます。
逆に言うと例えば最低でも100MHzの周波数帯域が必要な時にDS1104Z-S Plus(DS1000シリーズの4ch 100MHzモデル)を購入してしまうと、その後帯域が足りなくなった時に機種ごと買いなおす必要があります。

このような理由から周波数帯域は上にまだまだ余裕のあるスペックのものを購入した方が良さそうに思えます。

サンプリングレート

時間軸の分解能です。1秒間に何回サンプリングできるかという数値です。

例えばRIGOLのDS1000Zシリーズの場合は1GS/sなので1秒間に1,000,000,000回サンプリングできることになります。これは内部に存在するADC(アナログデジタルコンバーター)のスペックに依存します。

ただしこの数値には罠があります。
この分解能は複数ch同時にサンプリングするとその分低下します。
それは公式ページに書いていることもあればあまり表には書いていないこともあります。

低価格帯オシロスコープの場合、RIGOL DS1000ZシリーズはADCが1つなので2ch同時で500MS/s、4ch同時だと250MS/sになります。
それに対してほぼ同価格帯のSiglent SDS1000X-Eシリーズは4chモデルだとADCが2つ搭載されているため、奇数チャンネルを使用すればどちらも1GS/s、4ch同時で500MS/sになります。

ビット数

サンプリングレートが横軸(時間軸)の分解能であれば、ビット数は縦軸(電圧軸)の分解能です。
一部を拡大すればするほどビット数が大きいかどうかは大きな問題になります。

主に8bit, 10bit, 12bitがあります。高いに越したことはないですが、僕やこの記事をご覧になっている方の用途であれば8bitあれば問題ないでしょう。
垂直分解能が必要になるのは主にハイダイナミックレンジな波形が発生する場合だそうです。

8ビットおよび12ビットの各オシロスコープの基礎と最新の12ビットオシロスコープの使用法

取り込みレート

周波数帯域が取り込めるサンプルの正確性・サンプリングレートが時間軸の分解能・ビット数が垂直軸の分解能であれば、取り込みレートはそのスナップショットを1秒間に何度まで取り込めるかというスペックになります。

この数値が大きい方が見逃す波形が少なくなり、間欠的で捉えにくい信号をとらえられる可能性が高くなります。
繰り返し性の高い信号であれば取り込みレートはそれほど必要ありませんが、繰り返し性の低い信号をサンプリングしたい場合は重要になります。

メモリ長(レコード長)

一度に取る波形の長さに関わってきます。
メモリ長をサンプリングレートで割ったものが波形の取り込み時間になるため、メモリ長が長ければ長いほど長時間の波形を連続的にサンプリングすることができます。

この数値が短いと時間軸を縮小してある程度長時間の信号の動きを確認したいというときにデータが存在しません。

スペック外の見えない違い

上記は大体公式HPやスペックを調べれば書いてあるカタログスペック上の機能の違いです。
ただし機械の使いやすさというのはそれだけではないです。ここからはそれ以外にチェックしておきたい項目を上げてみます。

起動時間

これはよっぽど売りのこと以外はほとんど明記されることがないです。
YouTubeで機種名を調べると大体起動時間を計ったものが見つかることが多いのでそれを参考にします。通常は大体1分半程度から高性能なものは2分半とかかかったりします。
逆に起動時間の速さを売りにした機種だと10秒とかもあります。

僕の場合は、常に机に据え置きにして電源を入れっぱなしにするという運用ではなく使うときに用意をすることになるので起動時間は遅いよりは早い方がいいなと思ってます。

製品サイズ・重量

持ち運ぶことが多い場合はサイズや重量も重要です。
僕の場合はあまり大きいと作業机に置くのが大変なので特に奥行きは短めの方がいいなって思ってます。
重量もあまり重いと持ち運びが大変なのと普通に危ないです。

画面サイズ

オシロスコープは画面が大きい方が使いやすい気がします。

横幅が大きければより長い時間の波形を一度に見ることができる=水平スケールを弄る頻度が低くなる
縦幅は大きければ複数チャンネルをスタックして確認しやすい

最近の機種はどんどん大きくなってるようです。

PCから接続できるかどうか

僕は基本的に目の前にPCがあるのでPCから接続できるならその方が楽じゃないか?と思ってます。これは使ってみて印象が変わるかもしれない。でもできないよりはできた方がいいです。

少なくとも波形のスクリーンショットをUSBメモリに保存してそれをPCに移動させるよりは、PCの画面に波形を出してスクリーンショットを撮る方が圧倒的に楽です。

UI/UX

こればっかりは使ってみないとわからないのですが、メニューの階層・画面の構成など操作上のUI/UXはメーカーによってかなり差があるようです。

ちょっと調べた感じ以下の特徴が見つかりました。
Tektronix : メニュー階層を極力浅くしている。深くまで潜る必要がない。
Rohde & Schwarz : 画面左上にユーザーが機能を選んで配置できるバーがある。(機種によるかも)

動作のサクサク感

機種によっては複数Chを表示するとどうしても動きがもっさりしたりするようです。
これもYouTubeを見たら動作が見られるので確認した方がいいです。
ただしこれも使ってみないとわからないかな・・・。

特に最近の機種はタッチパネル対応のものが増えているのですが、タッチパネルであんまりラグいと結構ストレスを感じそうな気がしています。

国内サポート

困ったときにサポートが手厚い方がありがたいけど、これはほぼ価格帯やメーカー・代理店の違いみたいになりそうなのでこれについて思うところは次回以降に書きます。

おわりに

大体ざっと挙げるとこんな感じだと思います。
他に思いついたものがあれば追記したい。

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