【自己効力感】世界一の協同問題解決力を活かすには
WIT Kyoto (Work & Women in Innovation Summit)でキーノートスピーチに登壇。だが、自分の話より、日米双方で新薬の上市と上場をされたまさにイノベーションの体現者である久能祐子先生の基調講演、その話を受けての日頃から親しくさせていただいているゴールドマン・サックス副会長キャシー松井さんやOECD東京事務所長の村上由美子さんのスピーチに、沢山のインスピレーションをいただいた。
中でも、村上由美子さんのOECD調査「16才までを対象とした協同問題解決力はOECD国の中で日本人女性が一位なのに、自己肯定感が低い」の指摘にハッとさせられ、自信について考えてみたので、これをnoteしてみたい。
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【自信の2種類】
最近、自己肯定感について話題になることが多い。自信には自己肯定感と自己効力感の2種類があり、改めてここで整理しておきたい。
・自己肯定感:過去の自分に対する自信
・自己効力感:未来の自分に対する自信
自己効力感(self-efficacy)は、未知で未経験な修羅場や試練の機会に直面した際に「あー、私ならできるかも」ってヤツ。ある意味、根拠のない自信、大いなる勘違い、とも言える。
ビジョナリーな起業家は自己効力感が高い。ユーグレナ社長の出雲さんが500社に断られても501社目の伊藤忠商事にアタックし成功した話は有名だが、彼の自己効力感は半端ない。
そして、非連続の成長を模索している企業にとっては、この「自己効力感」のある人材こそが非連続の成長=イノベーションの起爆剤だと私は見立てている。失敗はイノベーションの母。失敗を失敗ではなく挑戦の過程、と捉えられる人。企業内部の成功体験によって培われた固定概念のバイアスを外せるのはこのタイプだからだ
【なぜ自己効力感が低いのか】
さて、冒頭の協働問題解決力が高いのに自己肯定感が低い問題。
協働問題解決力とは、チームで課題を解決する力。企業のこれからの非連続成長には、最重要なポテンシャル能力だろう。OECD調査にある、CPUは世界一高いのに、自己肯定感の低い16才以下の人材、社会人になった時に何が起きるのか。
せっかくの潜在能力を試す機会への挑戦に躊躇する。とにかくハイリスクな挑戦をしない。口癖は「私なんてまだまだ…(その挑戦の準備ができていない)」
中でも女性は特に過小評価傾向が強い。リクルートグループで毎年グループ横断の28才、100名を選抜したCareer Cafe 28で講演やワークショップを5年ほどさせていただいている。あの前のめりなリクルート、しかもかなりの倍率で選抜された100名でさえ漠然とした不安を感じている。
入社して約5年、周囲にライフイベントを迎える人も増え、ノイズと選択肢が多すぎて、悩みすぎて仕事に全力疾走できなくなる。「自ら機会を創り出し…」どころではないのだ。リクルートでさえこうなら、もっと保守的な企業ではどうだろう
ポテンシャル能力を見抜いた誰かに抜擢、登用されても、まだまだ病で自らチャンスの芽をつんでしまう。こうして最初のわらしべを見逃してしまい、早回しで実績を積むチャンスも自己効力感を培うチャンスも手放してしまう人が多いのだ。
善意の失敗を許容する文化の企業もまだ少ない。挑戦するインセンティブが少ない企業、いわゆる挑戦する者負け、の企業なら尚更、自己効力感を培う機会が与えられないのだ。
【自己効力感を上げる要素】
心理学者アルバート・バンデューラによれば、自己効力感を上げる要件は以下の4つ。
1)達成経験(やりきった体験)
2)代理体験(身近なロールモデル)
3)言語的説得(あなたならできると期待される)
4)生理的情緒的喚起(心身ともに健全)
なかでも、最も影響が大きいのが、1)の修羅場をやり遂げた経験。
【自己効力感強化の処方箋】
非連続の成長を担う「これから」の人たちは、遅かれ早かれ、過去の経験則が効かないビジネスを担うこととなる。極論すれば、過去の自分に対する自信(スキルへの自己肯定感)は不要になるかもしれない。
むしろ、不確実な状況下で意思決定した体験の場数の多さ、挑戦数、こそが比較優位性になる。
したがって、なるべく失うものの少ないキャリアの早い時期に、とにかくハイポテンシャル人材を発掘して、意思決定の場に「登用」する。
・機会開発 > 能力開発
・登用 > 研修
・傍流 > 本流配置
長年、経営者育成の現場にいると、発掘と配置こそが後天的にでも自己効力感を育む最強の方法ではないかと思っている。
【将来世代の可能性】
ユーグレナ では、18才以下限定のCFO(Chief Future Officer)を募集し、510人の応募があった。私も最終選考に同席したが、18才以下の将来世代のポテンシャル能力の高さに感動した。
CFO小澤杏子さんもsummit member に選ばれた9人を見ても、10代でビジネスプランコンテストに出場したり、研究論文が雑誌掲載されたり、と荒削りではあるが、実経験に基づいた高い自己効力感を持っている。そして、近くに必ずと言っていいほど、チャンスをくれる大人の存在があったのが印象的だった。
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世界一の協同問題解決力を持つ将来世代がいるだなんて、なんて希望の持てる宝の山なんだろう。
私たち世代にできることは、とにかくキャリアの早めに試合(意思決定の場)に登用して、せっかくの宝の山を腐らせない、自己効力感を育む支援をする、ということに尽きるのではないかな、と確信している。
経営力を上げて、もっと良い未来をみんなで。
では、また〜。
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