紀尾井町家話二十二夜
紀尾井町家話が始まった途端に既に酔っている猿之助さん。
山田五十鈴さんが住んでというたホテルの部屋でにんまりしながら猿之助さんの手がヒラヒラと動いてなんだか可愛い。
松緑さんの本名は藤間あらし、その本名のあらしさん、あらしさんを連発する猿之助さん。暁星の頃の話からそれぞれのお家の芸や、習った先輩の話まで盛り沢山。
同世代の中で幸四郎さんが一番上できおいちょ、そして猿之助さんの順だがきおいちょと猿之助さんは学年違いの同い年だ。「あらしさん、ほんとに暁星でした。僕全然お見かけしなかったんですけど」きおいちょは「今ほどインターネットが発達してなかったから今月は歌舞伎です。って言ったら休めた」
と優等生の猿之助さんからは考えられない返事に
「悔い改めよ」の紙を出すお茶目さを発揮する。
話は色々飛んでいったが、紀尾井町家話初参戦の方々が多かったみたいだが、紀尾井町家話皆勤賞組としてはきおいちょの真摯な姿勢とまっすぐに物を言いながら幸四郎愛、猿之助愛を見せてくれて猿之助ファンでありきおいちょファンである私は笑いと感動の3時間弱だった。
猿之助さんが物真似が止まらない。しかも旨い。
先代芝翫さん、先代雀右衛門、先日亡くなられた山城屋も、そして猿翁さんに『四ノ切』を教わりに行った時の猿翁さんの一言「あんたやってなかった?」。猿翁さんはそっくり。四ノ切を習いに行ってやってなかったかと猿翁さんに言われた話は他でも聞いてるが「習ってねえよ」とべらんめえで語気強く怒る猿之助さんは初めてで可愛い。この二人相手だから素顔が出てしまうのだろう。
猿之助さんは耳がとてつもなく良くて記憶力が抜群だ。だから物真似がこんなに旨いのだろう。イントネーションが素晴らしいので聞き入ってしまう。
記憶力の良さといえば、紀尾井町家話に出演される俳優さんの話を聞くとどの俳優さんも昔の話をいっぱいされるので歌舞伎俳優は総じて素晴らしい記憶力だと感心する。先輩に学ぶ歌舞伎俳優ならではあろう。折に触れ芸談が聞けるのも紀尾井町家話ならではだ。3人の紀尾井町家話は今後も続くかも言う期待を持てる終わり方。
来年最初は当代の雀右衛門さんが満を持して紀尾井町家話に登場されるときおいちょの説明を聞いた猿之助さんが一言「先代雀右衛門はいりませんか?」
きおいちょ「当代だからね」面白すぎる会話が止まらない猿之助さんを見てると亀ちゃんの頃から全く変わっていない。
司会の戸部さんから3人に「お互いの変わったところ変わらないところは?」と言う質問に猿之助さんは「心の距離は変わらない。何年会ってなくても会えばすぐ元に戻る」と答えた。歌舞伎はみんな家族、一生付き合っていく仲間だと常々話してる猿之助さんだが、年の近い仲間は特別な思いがあるのだろう。8月の歌舞伎座が始まる前にきおいちょからLINE。普段は全然交流が無くても大切な時には必ず連絡をくれる大切な仲間。猿之助さんときおいちょはさほどご一緒の舞台に立つ事は無いが、お互いに深い所で信頼しあう。事ある毎に「あらしさん」を連発する弟感がたまらなくチャーミング。一座の座頭として見せる顔からは想像出来ない愛らしさだ。こんな猿之助さんを見ると、きおいちょの南郷でおもだか屋の弁天猿之助を観たくなる。
40半ばの普通に考えればおじさん達だが、また3人でやりたいって猿之助さんから指切りと小指を画面に差し出すと、他の二人も小指を差し出し指切りするのはもうクリスマスプレゼント級のレア画面。画面からハートが溢れ出す。キラキラした天使の指切りだ。
猿之助さんの話で一番驚いたのは猿翁さんの教え。初めてのお役をするときはこの世に残っている映像を全て見る。全て見てから平均点を導き出す。そんな勉強をしてから先輩に習いに行くのだ。
酔っ払いながらも興味深い話をさらさらと喋ってくれる。紀尾井町家話ならではの楽しさ爆発だ。
幸四郎さん、猿之助さんが紀尾井町家話に登場するから初紀尾井町家話参戦された人も多かった様だが、コロナ禍の中紀尾井町家話を二十二回も続けてくれたきおいちょに頭が下がる。今回の家話を楽しんだ方々が次回の紀尾井町家話も見てくれる事を期待したい。もちろん私は既にポチってる。楽しみ。
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