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七月大歌舞伎 松竹座

一昨年以来の七月大歌舞伎の昼の部を見物
12:30開演で14:35に終わると言う短さで一等席16000円は高い。

伊勢音頭恋寝刃
福岡貢                                  松本 幸四郎
油屋お紺                               中村壱太郎
料理人喜助         中村隼人
油屋お岸          中村虎之介           
徳島岩次実は藍玉屋北六      中村寿治郎
藍玉屋北六実は徳島岩次   片岡松之助
今田万次郎         片岡孝太郎
仲居万野                               中村扇雀
油屋お鹿          中村鴈治郎

お祭り
鳶頭            片岡仁左衛門
芸者                                       片岡千之助
芸者                                       片岡孝太郎     

幸四郎さんの貢さんは二度目の見物だが今回は残念なことに肝心の 名刀「青江下坂」 で人を切りまくる場面が縮小され憎き万野とお鹿、北六と岩次を切りつけるだけで名刀が持つ妖の力につられてなのか血を見て貢の中で何かが狂って操られるかの様に次々と人を殺める場面がほぼカット。憎っきはコロナ感染か。

万野は想像していたよりは薄口な演技。玉三郎さんの万野は凄みすらあり仁左衛門貢を責め立てる。秀太郎万野は関西独特のネチネチとしつこく言いつのり仁左衛門貢を閉口させる。猿之助万野は幸四郎貢の怒りを買いそこに油を注ぎ怒りの炎を燃え上がらせる。貢が手にした「青江下坂」で打たれて切られる場面は猿之助万野と幸四郎貢しか記憶にないが万野は切られたと騒ぎ貢は口を押えとうとう切ってしまうのだが、猿之助万野はそう簡単には死なない。切られてからが猿之助万野の真骨頂だ。くるくると舞い散る様にたっぷり時間をかけて屏風の裏まで行きゆっくりと30秒くらいかけて屏風の裏に沈んで消える。万野の死がまるで舞踊の一場面の様に演じられるのだ。そんなことを期待しながら扇雀万野の演技に期待したがお家の型が違うのか貢さんの前で軽くえび反りしてそのまま死んでいった。

もう一つのお楽しみ鴈治郎さんのお鹿も少し消化不良。12日まで濃厚接触者として舞台に立てなかったせいなのか、貢さんとの掛け合いが少し間が悪い。心根の美しさを表現するために本意気で女形の声を出されていたが、ルックスとあわない。2階席は声が通ったが1階後方の席の友人はお鹿の声が届かなかなかったという。2日目の舞台だったせいかも知れない。先日亡くなられた秀太郎さんがどれだけ稽古してもダメ、毎日舞台に立つことが一番の稽古だと仰っていたとしみじみ話してくれた歌舞伎の友人の言葉が染みた。

恋寝刃で出色の出来は隼人君の料理人喜助。仁左衛門さんに習ったであろう上方の言葉を巧みに使い身のこなしも立派。幸四郎さんと隼人君が並んだ一瞬は「大富豪同心」が甦ったけど隼人君の成長に瞠目。


「お祭り」の仁左衛門さんは玉三郎さんと桜姫東文章で二枚目と悪の華を演じられてたせいか、色気も男っぷりも上がりまくっている。こちらもコロナ禍で「待ってました!」「待っていたとは嬉しいねぇ」をすっ飛ばして清元の浄瑠璃に乗せて舞踊が続く。息子の芸者と孫の芸者に手に手を取られモテまくる鳶頭は格好いいの一言。
孝太郞さんの踊りをじっくり観たことがなかったのだが実に色っぽい。千之助君を心配そうに見つめる孝太郞さんは親の顔。にんまり見つめる仁左衛門さんはお祖父ちゃまの顔。松嶋屋三代が大阪の地で仲良く舞台を勤める姿は関西の人間として嬉しい限り。千之助君が成長してくれる事を願う。
朝ドラ効果なのか松十郎さんが鳶頭に絡む良いお役。華やかなお祭りの打ち出しは気持ちも明るくなった歌舞伎見物。

本来なら愛之助さんも仁左衛門さんと共にここに立って欲しいところだ。



                             

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