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自動翻訳でもあなたの言語能力が問われます。

 翻訳についてこれまで手作業でやっていたものが、インターネットの発展で翻訳もかなり自動化されつつあります。数年前までの自動翻訳はかなりいいかげんで、だいたいの意味を汲み取る程度のものでしたが、その質と性能はかなり上がってきています。自動翻訳で英語から日本語にする場合、結構まともな文章が出てくるのは驚きです。でも完璧ではありません。

 言葉ができる人にとってはほとんど自動翻訳は必要がありません。原文を読めるからです。自動翻訳は知らない言語または自分の意思をその外国語で文章にできない人向けあるいかその原文の意味を理解するため、自動翻訳するのかもしれません。しかし、その言葉をまともに知らない人が相手方にその翻訳文をコピペして意思を伝えるのは大変危険です。また、英語から日本語にするのは精度が上がっていますが、日本語から英語にするには相当注意が必要なのです。

 日本語から英語に翻訳する場合、しっかりとした日本語の文章を書く必要があります。日本語では主語をいっさい省きますが、英語では主語の記述は必須なので、両言語の違いも十分に理解したうえで自動翻訳は使う必要があります。

 以前、ある会社の管理職の方がグーグル自動翻訳を使って日本語から英語に訳した文章をそのままメールに貼り付けて指示を出しました。しかし、その後、受け取った部下は「どういう意味かさっぱりわからない」と苦情をいい、再度指示内容を説明する有様。時間の無駄が発生したのです。

 ここでなぜ受け手がわからなかったのかは翻訳元の日本語の文章がしっかりと書かれていなかったからです。特に日本文化では、前にも書きましたが、「察しの文化」があるため、英語の文章に沿った日本語を書かなくても意味が通じてしまうことがよくあるのです。
 
 しかし、「察しさせる」文章は自動翻訳ではまったく通じません。自動翻訳は単語を基準に翻訳していくため、書いていないことは訳さないのです。このため、基本的に書いていないことを相手側に伝えることはできないのです。(そもそも英語や中国語は言葉に表現していない内容は相手に通じません)
 
 また、話し言葉のような言葉を入力してところで、全体で意味が通じるような翻訳にはならないのです。つまり、日本語の場合は日本語をかなりしっかりと書かない限り、それを読み手に理解させる翻訳文として生成させることはできません。要は日本語力も問われるのです。

 さらに、自動翻訳にかけられた言語についてもよく知っていない限り、相手方に伝えるには大変危険です。これは英語なら、英語にかなり通じていないと難しい話なのですが、まとまった文章を自動翻訳させる場合、その翻訳文が英語なら英語の論理に従っていないといけません。そうしないと通じないのです。英語の論理通りに日本語を書いていくのなら別ですが、それも上記といっしょでやはり日本語力を問われることになります。

 つまり、本当にちゃんとした翻訳文を生成させて相手方にもしっかりと伝えたいと思った場合、自動翻訳といえども伝える側の言語能力が実は問われるのです。

 となると、自動翻訳を使わずに自分でやったほうがいいのではないかとも思いがちですが、実際はそうでしょう。ただ、言語に通じている人でもやはり表現に限界があったりします。そのときに自動翻訳を使ってみると「なるほど」と思うような表現が出てきたりするので、そういった場合に利用価値はあるでしょう。
 
 また、大量の翻訳があったり、急いで大量の文章を作成しないといけない場合も自動翻訳が使えます。先にもお伝えしたようにそれでもやはりしっかりと真意を伝えるのであれば、両言語の能力が必要で、生成された翻訳文の校正は自分でしないといけないのです。

 ちなみに、私の場合はときおり、英語⇔マレー語/インドネシア語などで自動翻訳を使います。この場合は文法的に同じ形態であることから日本語よりもかなり精度の高い翻訳文が出てきます。それでも出てきた翻訳文は必ず目を通して異なった意味で取っていないか、文法的に間違えではないか、微妙なニュアンスは出ているかをチェックします。

 おそらく、読者のなかには「自動翻訳/通訳があるから、その言語を勉強しなくてもいい」と思っていらっしゃる方がいるかも知れません。しかし、それでは正確に自分の思いを相手に伝えることはできません。「愛しています」を多言語に自動翻訳して伝えることは可能ですが、ではそこから先の雑多な細かいコミュニケーションはどうするのか。いちいち自動翻訳通訳させるのか。「あれをあれしておいて」と日本人はよく言いますが、自動翻訳ではまったく意味不明の訳が出てくるでしょう。

 いずれにしても、言語を全く知らない人が自動翻訳を使ってしまうと相当のしっぺ返しを喰らいます。そうならないためにはやはり努力して語学を習得するしかないと思っています。翻訳通訳の自動化は将来もたぶん日本語に限ってはかなり難しいのではないでしょうか。

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