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語学の勉強で漫画を使う

 さて、初級用の会話テキストの内容を暗記していくことは初級レベルで大変重要です。単語や熟語、表現を丸々覚えると、ある一定のレベルまで上がります。

 私の場合、英語があまり成績は良くなかったので、一浪時に代ゼミの英語の人気講師の授業を取りました。その先生が最初におっしゃったことは、「中学高校までの単語と熟語はすべて即座に覚えよ。中高の英語もマスターしないで大学は受からない」とある種の脅迫のように聞こえました。考えてみると確かにそうです。そもそも中高でそんなに難しい英語の内容が出てくるわけでもなく、そこに出てくる単語や熟語は平易なものばかり。それも覚えずに難しい単語を覚えていても本末転倒。早速、片っ端から覚えたものでした。

 結果、この作業が今にも生きているようです。基本中の基本を押さえたことで、その後の成績も上がり、今もってそのときの単語や熟語は忘れていません。あれがなければ、今の自分もなかったと言っていいでしょう。

 社会人でいまさら中高の教科書を引っ張り出すのも大変かと思います。そのため、初級用の会話テキストが役に立つのです。そのなかの表現を片っ端から覚えましょう。今後のレベルを上げていくにはこれも必要な作業なのです。

 さて、もう一つ初級レベルまたは中級レベルで会話のレベルを上げる方法があります。それは各国語に翻訳された日本の漫画を読むことです。

 インドネシアに留学したとき、当時は「クレヨンしんちゃん」が大流行で、翻訳された漫画も売られていました。金額もかなり安い。日本語で言っているものが翻訳されているので、これを見ない手はありません。特に何がいいかというと、漫画は口語体なので、日常会話で使われる表現がふんだんと使われているのです。この表現を覚えない手はありません。初級用会話テキストにも出てこない表現も出てくるので、積極的に辞書も引いて覚えていきましょう。そして、その表現をどんどん使っていくのです。私は「クレヨンしんちゃん」のおかげでインドネシア語の会話が上達したと自負しています。

 中国語やカンボジア語を勉強する場合も同様です。文字が違うので、すぐに発音はできないのですが、それも丹念に調べて意味を汲み取っていくことは非常に重要な勉強法だと思います。

 日本の漫画は世界に知られており、なかでも「ドラえもん」はどの国でも翻訳されています。テレビでもよくやっているので、「ドラえもん」が英語で話しているのを聞いて覚えるのもいいでしょう。何も難しい表現を使っていることはありません。なにせ子ども向けなのですから。小学生でも中学生でもわかる表現を使わないと理解されません。これを逆手にとって日本人が外国語を学ぶ際にも利用してみましょう。きっと思わぬ効果も出てきます。

 ただ、一つだけ気をつけないといけないことがあります。それはその漫画の日本語はどのように使われているかです。例えば、私の嫌いな「こち亀」こと「こちら葛飾区亀有公園前派出所」は日本語でもかなり下品な言葉を使います。その下品な言葉使いも翻訳で使われてしまうところも多く、逆にこういった言葉を覚えてしまうとのちのち厄介なことになります。外国語で下品な言葉を覚えるのはご法度です。それを覚えるくらいなら、別の上品な言葉を覚えましょう。

 そもそも日本語でも外国人が下品な言葉を使って話されたら、あなたはどう感じますか。私のマレーシア華人の古い友人はその昔、誰に対しても「テメー」や「おまえ」と呼びかけていました。日本語としてはどう考えたって下品です。私はこういう日本語を日本人が使ったら、その人の人格と品格を疑います。喧嘩沙汰でもないのに「あなた」の意味で「テメー」を使われたら、非常に不愉快な気持ちに私はなります。そうではないですか。この友人にはこういった言葉は一切使うなと申し伝えました。

 本人はどうもそんな下品な言葉とは思っていなかったようです。「知らない」ということは恐ろしいことです。もしあなたが勉強している言語で、下品な言葉かどうかわからなければ、調べるようにしましょう。英語でしたら調べるのは容易です。マイナー言語の場合は使うに越したことはなく、できるだけ上品または「標準」の表現を使うようにしましょう。

 上品な言葉を使っていれば、どのシーンになってもそれは困ることはありません。逆に「あの人の言葉は丁寧だ」という評価につながることだってあります。初級でなかなか下品か上品かを判断するのかは難しいですが、通常の会話テキストに出てくる表現はほぼ間違いないでしょう。翻訳漫画を利用する場合はくれぐれもご注意を。言葉は慎重にしないと恐ろしい道具になりかねません。

写真:サン・テグジュペリ『星の王子さま』の翻訳版(左から英語、原作のフランス語、クメール語、日本語)。右は広東語版ドラえもん。




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