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ひったくり被害に遭った私が、引きこもって手芸をしているうちにハンドメイド作家になった話。

気づいたときには、カバンがなかった。


ドン!!

ものすごい衝撃音がしたとき、私はもう転んでいた。

肘や膝は激しく擦りむいて、出血している。
右手に持っていたのは、ハンドバッグの持ち手部分だけだった。

どうやら、自分は誰かにカバンを盗られたらしい…
と理解できたのは、通りすがりの方が声をかけてくれたときだった。


白昼堂々に事件は起きて、スピード解決した。


当時、私は学童保育の施設で働いていた。
この日は同僚とお茶をする約束をしていて、まだ明るい時間に家を出たばかりだった。
自宅からわずか100mの距離で、後ろからバイクが近づいてきた。
その音を聞いて、私は道路の右側に寄ろうとした。

すると、バイクがなぜか右から通り抜けようとする。
いま思えば、バッグを右手に持っていたからだろう。

今度は左に寄ってバイクを避けようとすると、「ドン!!」という音がして、カバンの本体を強奪され、自分の右手には引きちぎられたバッグの持ち手だけが残っていたのだった。

頭の中は真っ白でパニック状態だったが、通りすがりの方の協力で、すぐに警察へ通報した。
事情聴取の合間に、カバンに入れていたiPhoneを探す機能を利用することを思いつき、通報してくれた女性のiPhoneを借りて位置情報を調べる。

警察の方にその情報を知らせ、犯人はわずか30分後に見つかった。

被害者である私の証言と、犯人の特徴が一致し、即日逮捕に至ったのは、事件発生から4時間後のことだった。


そこまでは良かった。

すぐに家族に連絡もできたし、大きな怪我もしていない。


大変なのは、ここからだった。


携帯は犯人によって三枚おろしにされ、誰とも連絡が取れない。
その上、盗まれた全てのものが証拠品となるため、しばらく返却できないという。

家の鍵も、
愛用していた自転車の鍵も、
身分証も、
現金も、
キャッシュカードも、
クレジットカードも。

何もかもがカバンの中だったので、何もかもが押収された。

幸い、携帯の代替え機を借りることはできたが、鍵のスペアがなかったので、出かけるには家族の協力が不可欠だった。
即時解決したとはいえ、テレビを付ければ地元のニュースで事件が報道されている。
事件に関する警察からの連絡は、自宅の電話に来ることになっていた。

そうした小さな理由が重なって、私は2週間ほど仕事を休むことにした。

その間は、外へ出るのが怖かった。

もう二度と被害に遭わないように、ハンドバッグやトートバッグは全部捨てた。
同じ時間に、同じ場所を通るのはやめた。
後ろから車やバイクや人が近づいてくるときは、必ず振り返って確認する。

できるだけの対策をしても、あの瞬間を思い出すと、やはり怖かった


ぽっかり空いた2週間の休み。


何をしようか。
何も考えたくないから、没頭できて手を動かせるものがいい。

思い浮かんだのは、何かものづくりをすることだった。

職場の学童には、廃材がたくさんあった。
子どもたちは自由に好きな材料を取り出して、好きなものを作れる。
何を何個使うかも、何を作るかも、いつ完成させるかも、途中で諦めるのさえ自由だった。

真剣に取り組む表情や、出来上がったときに自然と浮かぶ笑顔は、今でも忘れられない宝物だ。

あの子たちを思うと、なんだか自分もやってみたくてたまらなくなった。

家族に頼んで、大型店舗の100円ショップへ行くと、入り口に山盛りの造花やドライフラワーの木の実が並べられていた。

季節は秋。
かぼちゃのオブジェや、松ぼっくり、名前も知らない木の実に、紅葉した葉っぱの造花。
くすんだ色味のコスモス、秋色のバラ、リースの土台と、アクセサリーの金具、グルーガンまである。

ワクワクしながら材料を買い込み、見よう見まねでリースを作った。


初期に作っていたリース



ただ土台に貼り付けるだけの、拙い作り方ではあったけど
大きさや色のバランスを考えてひとつひとつ仕上げるのに夢中になった。

引ったくり被害に遭ったことを知って連絡をくれた友達に
「時間潰しで作ったよ」と写真を送ると、思いがけない言葉が返ってきた

「これ、売ってみたらいいんじゃない?」

引ったくりの被害に遭って、
2週間も家にいて、
どれだけ落ち込んで過ごしているかと思ったら、
出来上がったリースを片手に、私がニコニコしている。

その様子をみて、友人は率直にそう思ったらしい。

この一言がきっかけで、私は変わった。

自分の作ったものを、誰かが必要としているかもしれない。

地元のマルシェへ出展するのを皮切りに、
大型イベントへチャレンジしたり、ワークショップをやってみたりした。

百均で買っていた造花を、自分で手作りする布のお花に変えた

今では日本最大のイベントにも出展している。

仕事も二度変わり、今では学童で関わった子どもたちと会うこともない。


それでも、楽しそうにものづくりに取り組んでいたあの子たちと
私を心配して連絡をくれた友人が
私に変わるきっかけをくれたことは、心から感謝している。


人生何が起こるか分からない。

だけど、悪いことも良い方向へ変えていけるかもしれない。

何かのきっかけで、変われるチャンスは起きる。

悪いことが起きて、どん底まで沈んでも、
その先をどんな未来にするのかは、自分次第なのだから。

もし、あなたの人生にどん底がやってきたら

ハンドメイドを始めてみませんか?



#ハンドメイド #ハンドメイド作家

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