水車小屋のネネ
終わってしまった。
今は、心も体もじわじわじわっとした幸せ感に満ち溢れております。
結構長い物語でしたが、飽きることなく毎日コツコツと読み進めることができました。
とてもしんどいスタートから始まった物語でした。
もしかしてまた今流行の、「嫌な感じのお話」なのかなぁと一瞬危惧しましたが、徐々に違うものであることがわかり、読み進めることができました。
小説なので、物語の内容について書かないほうがいいと僕は思っています。
これから読む人のためにおいしいところは喋っちゃいけない、書いちゃいけないと思うので、この辺でやめておきます。
その代わり、この本から誘発された自己体験を少しだけ書きます。
昔、40代の中頃、親しい友人を介して、農業運営する方としりあいました。そして、その方の農業に対する志に共感して、
数年間田植えと稲刈りの時期に手伝わせていただいたことがありました。
東京から長野の高遠まで、車で往復6時間以上かけて通いました。
それだけ私の心を惹きつける場所でした。
この物語は東京に住んでいた18歳の高校生と8歳の小学生の姉妹が、義父の愛のない行為から逃れるために、田舎に向かうシーンから始まります。
二人が降り立ったその地のシーンを読みながら、昔、通った農家さんの体験が蘇ってきた。
空気のおいしさ、
川のせせらぎ、
春蝉の鳴き声、
そして涼しい風、
など、目で見た鮮やかな緑の山やたんぼ、そして耳で聴いた自然の音、などが体の奥から蘇ってきた。
そんな自己体験を思い出しながら、ずっと読ませていただきました。
実は最初Audibleで聞き始めました。
津村 記久子さんは好きな作家さんでしたので、街の新刊書店でこの本を見かけたとき読みたいなと思って手に取ったのですが、あまりの分厚さにびびってそのまま買わずに帰ってきました。
そんな時にAudibleが解禁になりました。
Audibleなら聞いていてもあまり負担にならないので、何かの作業してる間に聞くと言うながら聞きができます。肩に力の入らない目も頭も疲れないとてもとっつきやすいのがAudibleの良いところだと思います。
しかし、聞けば聞くほど、どんどん物語の中にめり込んでいきました。登場人物の理佐や律の健気な生き方や街の人々の良心ある行為に触れるたび、ドンドン感情移入していきました。
そうなると、聞き流すのではなく、文字をしっかりと読み取りながら味わいたくなりました。
結局、物語の半分を過ぎたあたりで、わざわざ書店に行き新刊を買ってきて最後まで読み切りました。
読み終わった時の爽快感はこの上ないものでした。
この本を一生自分の本棚の見えるところに置いておきたいと思います。
そして、時々開いては心の清涼剤として大事に取り扱っていきたいと思います。
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