ITストラテジスト試験 あまり参考にならない合格体験記

 4月にITストラテジスト試験を受けてきました。つい先日、合格発表があり、上記のツイートのとおり無事に合格していることを確認しました。やったね。
 ちなみに発表当日、Twitterでは「合格しました! 嬉しい!」というストレートな喜びが綴られたツイートが多くみられ、皆さんの嬉しさが確と伝わってくる中で、こんなふざけたツイートをしていたのは私だけでした。いいのかそれで。

あらすじ

・大学は文系で情報学やらメディア論やらをやるタイプの学科出身。プログラミングなどの授業も少しは履修したものの、最終的には言語学のうっすい論文を書いて卒業。情報技術をきちんと勉強したとは言い難い。
・社会人経験は今年でおよそ10年目。うち半分くらい情シスの仕事をしてきた。
・新卒で配属になった部署はITとは関係がなく、窓口対応などで悲惨な思いをする。一方で、周囲にITに強い人があまりいなかったことから「勉強したらもうちょっと報われるかもしれない」という思いでIPA試験の勉強を独学でスタート。仕事の9割がITと関係のない状態の中、基本情報(2016年)と応用情報(2017年)に独学で合格。
・2018年度に初めてIT部門に行くが、この年は出向で長時間労働やパワハラが横行するところにいたため、何もできず終了。2019年4月から3週間くらい勉強して、情報処理安全確保支援士に合格。同年の10月にネットワークスペシャリストに挑むが、午後1がボロボロで不合格。
・以来、転職のすったもんだがあったり他の資格試験を受けて鳴かず飛ばずだったりでIPA試験からは遠ざかっていた。が、結局いちばんノウハウを持っているのはIPA試験じゃないか、せっかく挑戦するなら最難関と言われるものを、ということでITストラテジストに。
・クオリティはともかくとして、他の人よりも文章を書くことに抵抗は無いと思っている(こんなものを書いたりしています)。基本的にアナログ人間なので紙とペンが無いと物が考えられず、手書きには抵抗がない。丁寧な字を書く自信はあるが、筆記スピードは遅い。


参考書

 参考書は主に以下の3冊を使いました。

 この他にも、先人の方々の合格体験記を読み漁ったり、論文のネタ集めのために東洋経済やダイヤモンド・オンラインなどを定期的に読んだりしていました。

学習期間と内訳

 おおむね12月初旬からスタートして、以下のようなスケジュールで進んでいきました。基本的には出勤前に職場近くでコーヒーを飲む30分〜1時間と、昼休みの1時間を学習時間に充てています。帰宅後は疲れているので勉強はできません。休日も基本的にはクイズをしに行ったりYouTubeを見ていたりするので、試験直前の2週間前くらいまでは勉強時間に充てていません。

12月初旬〜1月初旬>
・『ALL IN ONE』で午前2の問題を全部解く。
1月初旬〜2月中旬>
・『ALL IN ONE』で午後1の問題の解法を読み、掲載されている例題(過去問)を解く。ついでに午後2のテクニック解説のところを読む。
・2022年度から遡って4年分くらいの午後1の問題を解く。
2月中旬〜試験直前>
・急に午前1が不安になったので、『高度試験午前1・2』を全部解く。
・引き続き午後1の過去問を解く。
・午後2のために『合格論文の書き方・事例集』の写経をする。
・論文のネタ集めをする。
・試験直前くらいに、午後2の論文を2〜3本書く。

以下、各科目に対する所感です。

午前1・午前2

 今さら私が説明するほどでもないですが、午前1・午前2の短答試験は過去問からそこそこの割合で出題されます。実際、試験の直前まで過去問を回していたところ、実際に1〜2問同じ問題が出てきたので、ありがたいなあと思いながら答えたりしていました。こちらのサイト(応用情報技術者過去問道場)がおすすめです。
 全部の問題を過去問で攻略できるわけではないですが、午前試験のありがたいところは、テクノロジ・マネジメント・ストラテジの知識をパーフェクトに覚えていなくても、高校レベルの国語・数学・英語の能力で凌げる問題が多い点だと思っています。

 例えば以下のような問題。

JVNなどの脆弱性対策情報ポータルサイトで採用されているCVE(Common Vulnerabilities and Exposures)識別子の説明はどれか。

ア コンピュータで必要なセキュリティ設定項目を識別するための識別子
イ 脆弱性が悪用されて改ざんされたWebサイトのスクリーンショットを識別するための識別子
ウ 製品に含まれる脆弱性を識別するための識別子
エ セキュリティ製品の種別を識別するための識別子

令和3年度春期 情報処理安全確保支援士試験 午前2 問8

 情報処理安全確保支援士も通ってきたし、現に今の仕事でもセキュリティに携わっているのでCVEやJVNはもちろんお馴染みなのですが、仮に知らなかったとしても問題文中のCVE(Common Vulnerabilities and Exposures)という注釈がヒントになります。”Vulnerability=脆弱性”ということが分かっていれば自ずとイ,ウのどちらかに絞りたくなるもの。あとは「Webサイトのスクリーンショットなんか要らないのでは?」と思えば答えが求まるといった具合。
 年をとってきてから単純記憶の定着が難しくなってきた中で、自分が若い頃に頭に入れておいた知識から推論できるという構造は本当に助かります(逆に法律系の資格ではそれが通用しないのでめちゃくちゃ苦手)。
 学習期間の項で”急に午前1が心配になって問題を全部解く”と書きましたが、仕事のスキマ時間に20分くらいでガサガサと解いたら2問くらい足りなかったので不安にかられた模様。今なら無勉強でも多分大丈夫。

 なお、午前2の最後の問題にOSINTが正解となる問題が出題され、OSINTファン(?)としてはテンションが上がりました。

午後1

 これも先人が多く説いてきたように、いわゆるスペシャリスト系資格の午後試験とは全く別の、国語の問題として解く気概の方がうまく行くだろうと思います。『ALL IN ONE』の午後1の攻略法を読んだもののあまり要領を得ず、結局、過去問を数こなしていくことで「何を問うているのか」の肌感覚を掴んでいったところが大きいです。ミステリ小説を読んでいて「たぶんこれ伏線になるだろうな」と思って付箋を貼っていく作業に少し似ているかもしれません。
 当日は最終的に問3と問4を選択しました。最初に自分の経験した業種に近い(というか同じ業界)の問2を解こうとしたのですが、設問1を読んであまりにもフワッとしすぎて何を書けばいいか分からず、慌てて問題を選び直しました。結果的に10分くらい時間を無駄にしてしまったものの、問3・問4は相性が良かったらしく、なんとか命拾いをしたところ。

 伏線の拾い方の部分で言うと、例えば次のような意識を持って取り組んでいました。例えば問3の設問4(3)。

[CTOからのコメント(抜粋)]
・買い物カゴの利用方法に関連して、データ分析基盤からあるメッセージを生成し、会員に通知する。

設問4
(3) Y氏の指摘②について、買い物カゴの利用方法に関連して、会員にどのようなメッセージを通知するべきか、30字以内で答えよ。

令和5年度春期 ITストラテジスト試験 午後1 問3

 この問題で対象となったECサイトではウィッシュリストの機能がないらしく、今後購入したいものをとりあえず「買い物カゴ」に入れておくような使い方をする会員が多いのだそう。それで、気がついたら品切れになっていて残念な思いをする顧客が多い、ということが先述されていました。上記のCTOのコメントは、間違いなくこれを受けての指摘であることは言うまでもないでしょう。
 ではどんなメッセージを発出すれば良いかというと、次の記述に注目。

(2) データ分析基盤
・データ分析基盤には、会員データ、購買データ、在庫データ、買い物カゴデータ、モバイルアプリからの投票結果データと感想データが蓄積できる。

令和5年度春期 ITストラテジスト試験 午後1 問3

 問題の焦点となっている買い物カゴのデータはデータ分析基盤に蓄積されているそうなのですが、そこには在庫データも蓄積されているようです。つまり、在庫の有無と買い物カゴのデータを結びつけることができると分かれば「買い物カゴの商品の在庫が僅少になったことを知らせるメッセージ」あたりが落とし所になるだろう、という感じで本番も解いていました。
 こういう思考プロセスは、ミステリ小説やリアル脱出ゲームを彷彿とさせる気がします。そうでもない?

午後2

 さて、間違いなく最大の鬼門であるところの午後2。
 そもそも2時間で3000字弱の論文を書かなければならないことも苦しいポイントなのですが、どちらかというと私の場合、手元の参考書だけではかゆい所に手が届いておらず、ネットなどで調べておかなければ当日に慌てていたであろう落とし穴があったこともポイントでした。そして、この記事の最大の目的は、その「かゆい所」に手が届くように情報を補足しておくつもりで書いています。


論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要

 まず最初は論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要の存在。『ALL IN ONE』では、446ページにこんなことが書かれていました。

”論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”は必ず書こう!!
R3年の本試験から”論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”を全項目について記入していない場合や項目と本文の構想、計画策定、システム開発などが異なったり、項目間に矛盾があるなど、適切に答えていない場合には減点されることが、明記されました。必ず記入するようにしましょう。

『ALL IN ONE パーフェクトマスター ITストラテジスト 2023年度版』(TAC出版)446ページ

 ちなみに、『ALL IN ONE』で「論述の対象とする〜」に言及されていたのは、自分の見落としがなければ当該ページのこれだけでした。ALL IN ONEとは……?
 ”適切に答えていない場合には減点される”と言っているのに、その書き方に関する解説もなければ、そもそも何を問われるのか、どういった様式なのかさえ言及されていません。仮に『ALL IN ONE』1冊で勉強し、このたった1ページのコラム同然として書かれた文章を見落とした人がいた場合、本番の試験で見たことのない様式が出てきて、しかもその記入も2時間の中で賄わなければならないと初めて知ることになるのです。これは怖い。
 なお、私は『ALL IN ONE』の該当箇所は読み飛ばしており、3月中旬くらいになって論文試験をネットでいろいろ調べたり、『合格論文の書き方・事例集』で言及されているところでその存在を初めて知りました。ネットで探すと様式も出てくるのですが、直接ご紹介するのは憚られるかもしれないので割愛します。

 さて、”論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”の存在が分かったところは良いとして、今度はその内容が大変です。特にシステムの形態と規模、総工数、総額、期間、チームの構成人数などといった項目は、ちゃんとシステム開発に携わった人であれば大体の目安が分かるのかもしれませんが、私はそこまで本格的な仕事をしたことがありませんので、規模や数字が全くピンと来ません。結局、『合格論文の書き方・事例集』にいくつか記載例があったものや、ネットで見つかった情報などをもとに、1人月あたりの金額がどれくらいかとか、単位期間あたりの金額がどれくらいなのかといった目安を自分の中で決めることにしました(結局、後述のとおり大規模な開発をする話にならなかったため、それはそれで命拾い)。


解答用紙

 もう一つかゆいところに手が届かなかったのが、実際の解答用紙の様式やサイズの情報が手元の参考書では分からなかったこと。練習で書いていた解答用紙と本番のものが大きく違うと戸惑うのではないかと思うのですが、参考書には付録で原稿用紙がついているようなことはありませんでした。結局、これもネットで探せば様式が出てきたため、それを練習に使っていました。A3サイズで印刷したものが本番と同じようなサイズです。
 ただし、これは『合格論文の書き方・事例集』にも言及があったとおり解答用紙はホッチキスで冊子のように綴じられているため、実際に論文を書くにあたっては鉛筆が裏移りしないように本番でも気を配っています。


 さて、論文の練習は大まかに以下のような流れで行いました。
 ・写経
 ・ネタ集め
 ・執筆
以下、それぞれのステップについて書いていきます。


写経

 文字通り、実際の解答例をそのまま書き写すこと。この工程で、実際に2時間で書ける文字数の目安を掴みます。もともと筆記スピードに自信が無く、2時間で書ける文字数が限られていることを再認識しました。この時にそれまで使っていたシャープペンをHBからBに替えています。
 ただし、何でも写経すれば良いというわけでもなく。例えば『合格論文の書き方・事例集』で言うと344ページにあるような、どう考えても2時間で書ききれないほど原稿用紙ミチミチに書かれた論文とか、一方で311ページにあるような規定文字数を満たしていない論文を書いても仕方ないというか。
 私は手書きで物を覚えるタイプの人間なので、この写経のついでに論文で使いやすいフレーズや論の展開などを覚えることにしました。


ネタ集め

 先人たちの受け売りになりますが、実際に本番で書けるようなネタをいくつかストックしておけ、ということで東洋経済やダイヤモンド・オンラインのような経済系ニュース、あとはDX系の記事を読み漁っていくようなかたちで頭の中に大まかな展開を思い描くことにしました。
 これは論文を書かされる時に何となく自分が心がけていることなのですが、なるべく自分にとっての得意分野に近づけていく、自分の土俵で論文を書くということを念頭に置いています。というか、自分にとって興味のある分野ならそこそこの話を書ける一方、興味のない分野には全く筆が進まないので、それはそう。
 そんな感じで、本番前のネタとしてストックしていた一例は以下のようなものでした。これ以外にもいくつか準備していましたが、後述のとおり本番では日の目を見ることはなかったため、ここで供養します。

<古書買取業における自動査定システムの導入>
(事業概要)
 A社は都内・関東近郊に10店舗の古書店を展開する企業。店頭での買取のほか、買取冊数が一定数を超える場合、スタッフの訪問による買取事業を行っている。
(事業特性)
 活字離れや電子書籍の普及、フリーマーケットアプリの普及によりマーケット自体は縮小傾向にあるが、一方で「終活」や「断捨離」に代表されるような私財の整理にともなう買取ニーズと、貴重な本をなるべく安価に手に入れたいという販売ニーズが一定数存在している。
(システム導入の背景)
 古書の買取においてはその本の傷み具合や書き込みの有無など、その価値を正確に見定める目利きが重要であり、これは経験により養われるところが大きい。現にA社においては、買取事業はベテランスタッフによることが多かった。しかし、訪問買取のためにベテランスタッフが店舗に不在となった場合に、経験の浅いスタッフにより店頭買取業務を行わなければならない場面がある。もちろん買取業務のマニュアル等を整備し、研修も行っているが、それでも実際の古書の市場価値よりも高く買い取ってしまう事例がいくつかあった。このような課題に対し、単なる人材教育だけでは人の入れ替わりによってその投資が無駄になってしまうおそれがあり、その抜本的な解決を経営層から求められたことが、今回のシステム導入に至った経緯である。
(システム概要)
 スマートフォン端末で買取対象の古書を撮影することで、その本が古書流通市場においてどのくらいの価格であるかを自動で判定し、また本全体やページをめくる様子を撮影することで目立った傷や書き込みがないか、AIの画像認識処理によって判断し、汚損による価値の減耗を判定する。本をめくって各ページを撮影する手法については、書籍をデータ化する技術により既に実現されているため、それを応用する。
(工夫した点)
 データベースとして、A社が加盟する古書店組合が限定公開する書籍情報のデータベースと、eコマースによる価格情報のデータベースをシステムへ流し込む。なぜならば、古書店市場に限らず一般のeコマース市場における価格も適切に反映させることで、より現場に即した価格を判定したいから。ある書籍がテレビやSNSなどで紹介されることによって爆発的に人気が高まることがたびたびあり、特にそれが絶版となっている本の場合、価格の高騰が著しい。そのような書籍を適切な価格で買取できるよう、リアルタイムでのデータベース更新が必要であると考えた。

 個人的には事業概要で訪問買取を行っている旨を書いたうえで、だからベテランスタッフが不在になる→経験の浅いスタッフが高く買い取ってしまう→ミスを減らすついでに人材教育のコストカットもできる、というコンボを決めると、採点者の肚落ちにも繋がって良いのではないのかな、と思っていました。
 なお、このネタは最近よく見ているYouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」でVALUE BOOKSの見学に行った回を一部参考にして書きました。ゆる言語学ラジオ、面白いのでみんな見よう。


執筆

 前のステップで集めたネタを頭に突っ込んで、実際に時間を計りながら本番同様に論文を書いていきます。結局、試験本番までに書いた論文は2〜3本くらい。コピー代の問題もあってあまり原稿用紙を手元に用意ができなかったことと、結局たくさん書いても本番で発揮できる力には限度がある、と思ったのでこれくらいの本数になりました。ただ、試験前日に1本書くことだけは決めていました。なぜなら『合格論文の書き方・事例集』にそう書いてあったから。
 一般にITストラテジストの午後2試験では”攻めのDX”と”守りのDX”の問題が一つずつ出題される、と言われていました。
 そのため「だったら、とりあえず”攻めのDX”だけ準備していけばいいじゃん! これだけDXによる改革が声高に叫ばれているんだから、攻めのDXをとりあえず押さえておけばいけるでしょ!」という気持ちで本番に臨むことに。


本番

「攻めのDXが無い!!!???」

 というわけで"攻めのDX"、ありませんでした(今あらためて午後2の問題を見直すと、問3のIoTが少しだけ"攻めのDX"っぽい、という向きはあるかもしれません)。
 焦って心臓バクバクの状態で問題を見直し、とりあえず考えること5分。「システム改修」という文字列を見て、そういえば新卒で配属された部署でも(利用部門として)、IT部門にいたときもシステム改修の話をいくつか聞いていたな──という記憶を思い起こして、いざ筆を取ることに。
 ぶっつけ本番で、だいたい以下のような内容を書きました(内容を一部省略・改変しています)。

<住民情報系システムにおけるシステム改修の検討>
(事業特性・概要)
 A市は関東に位置する人口約X万人の自治体。企業の本社が多く位置し、それを背景とした税収から、住民に対し手厚いサービスを提供している。
(分析の対象となる業務とITシステム)
 今回、市長からシステム利用部門である介護福祉課に対し、年齢や閾値以下の所得などの一定条件を満たす住民に対する市独自の給付金制度を実施するように、というオーダーが下りてきた。A市では決裁処理や予算執行などを行うための業務システムの他に、住民票の発行や税業務、介護保険や健康保険といった窓口業務で使われる住民情報系システムがある。今回、介護福祉課から住民情報系システムを使ってこの給付金制度の事務を実施するためのシステムを急いで追加してほしい、という要望があった。
(情報収集と分析・問題の真因の特定・工夫したこと)
 まずは今回の給付金制度の内容を把握するため、補助金制度の実施要綱を介護福祉課の担当者と一緒に読み込んだ。すると、今回の補助金の支給対象となる住民を抽出するための条件の大部分は、介護福祉課の権限で参照することができ、帳票出力機能によって絞り込みもできることが判明した。担当者はその機能の存在を知らなかったので、問題の真因の一つには利用部門がシステムを熟知していなかったことが挙げられる。また、給付対象者の一覧を出力し、それを振込や現金を手渡しするための元データにするという一連の業務は、別の課で数年前に行われていた臨時福祉給付金業務の流れと酷似していたため、その時に使ったシステムを流用することができるのではと考えた。
(関係部門との協議・対応方針)
 利用部門である介護福祉課の上長と担当者2名のほか、情報住民系システムのベンダー担当者とともに協議を実施。実際のシステム画面のスクリーンショットを並べたうえで流れを説明し、大部分の処理が現行システムでも可能であることを説明した。ただし、一部に現在の介護福祉課権限では参照できないデータがあるためそれを参照できるようにすることと、過去に行われていた臨時福祉給付金業務のシステムを転用することで利用部門のニーズを満たすシステムとなることを全員で確認した。これにより開発期間を短縮できるため、給付金の事務が始まるまでにシステムを用意することができる目処がたった。システムが導入されれば、ベンダー担当者やシステム部門もまじえたうえで研修などを実施する。

 結果的にこのような内容を書いたため、先述した「論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要」の内容もだいぶんコンパクトな話になりました。費用総額の単位が百万円に設定されていたので、私はとりあえず6百万円と、諸々の記入例から比べると破格のお値段で提出しました(これくらいの規模の改修なら600万円もかからないと思うのですが、その時は小数点を打つという考えが無かったため)。

まとめ

 結果は最初にお伝えしたとおりですが、こんな状況下で論文を書いていたため、それはもう合格発表で「およよよよ」となって然るべきでした。
 ただ、この論文で合格できたことにより、SIerや民間の情シスの話ではない論文でも合格させてもらえることが分かったのは一部の人にとって参考になるのではないか、と思っています。事例集を見ても行政まわりの論文がほとんど見当たらない中で、設問によっては民間経験がない人でも十分に自身の経験を論文にぶつけられる、という好例になったなら幸いです(ただし、問題文に「企業」の条件が入っていると、定義上”企業=営利目的”となるので、公営・公有企業くらいに限定されてしまうのではないかと考えています)。言われてみればぶっつけ本番で書いたとはいえ、「あなたが携わったITシステムの改修要望の分析」という題意に近いものを書いたという意味で、小手先の真っ赤な嘘を書くよりかは却って良かったかもしれません。

 が、このスケジュール感もさることながら、ぶっつけ本番で論文を書くという凌ぎ方も”綱渡りの成功例”に過ぎないので、あまり参考にしないことをお勧めします。以上!


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