家が斜めになっている。

貧しさは、住む家に出るものだ。
貧乏は田舎に集まる。
田舎に集まるから賃金が安いのか。賃金が安いから家賃の安くなる田舎に集まるのか。
田舎が先か、貧乏が先か、どちらにしろ田舎と貧乏は切り離せないのかもしれない。

私の家は、敷地の入り口からボロアパートの雰囲気を出していた。色褪せたベージュの壁と、濃い赤のトタン屋根が、時代から取り残された空間を演出する。

そんなボロアパートの1室で、貧乏1家はひっそり暮らしていた。
部屋は畳が敷かれていたが、ところどころ床下が腐っており、床が凸凹になっていた。
ゴルフボールなんて高級品は無かったので、試すことはできなかったが、テーブルの上で転がしたら、割と良いスピードで転がったはずだ。

母は良く言っていた。
「この家で暮らすとバランス感覚が鍛えられる。」
貧乏だけど、ポジティブ。
いや、全員バカなだけかもしれないが、我が家に貧乏を悲観するムードは、あまり流れていなかった。

そんな凸凹ハウスにも終わりは訪れる。
凹んだ部分が抜けてしまったのだ。
2畳分ほどのスペースが地面と一体化してしまった。
平坦な地面を歩いてるのに、エレベーターで下っているような動きをするパフォーマーがいるが、我が家は幸か不幸か、全員がナチュラルにパフォーマーとなることができた。

それでも母は引っ越しを考えていなかった。
今覚えば、なんて強靭なメンタルだろうと思う。

あまりに不憫に思ったご近所さんが、抜けた部分に足場を設置してくれた。あの工事現場でよく見る"足場"だ。
信じられないと思うが、我が家はそれで住み続けられると考えていた。そして、実際足場の上で工事現場の真似事をして遊んでいた。

でも、勘違いしないで欲しい。
貧乏人は知らないのだ。すこし考えれば大家さんに相談したりできるかもしれない。でも、知らないから、ただ住むことしかできない。































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