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東京、中途半端まっしぐら

戦後76年で一番、人気のない街、東京の朝方、人の行き交う音もなく始まるこの時間が、今最も味わい深い瞬間かもしれない

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有象無象はどこに眠っているんだろう。みんな息を潜めて、次のプランでも練りながら今をやり過ごしている。

「なんか中途半端だな〜」

緊急事態宣言下だからといって静まり返っているわけでもない、20時を超えた、ただ貧している東京の夜空にやっぱりまだ綺麗に星は見えないと、海ぶどうを作る男に愚痴ったらそう言われた。

やかましくブロックパーティでも始めなけりゃならんぞそろそろいい加減にと、思うも、いや待てよ、時たまやってはいるし、中途半端な東京とは、バブル後にしか知らぬ自分にとっては、ずっとだよと思った。着飾り、しみったれていて、あるようでない、ないようである、上も下も、真ん中も、人も動物も自然もなにもかもが突き抜けぬ、半端者の寄せ集め大江戸でござい、誰もが夢の中だ。

懐古に取り憑かれ、あの寅さんの帰る下町とも違うただのゲットーに巣食う、ピリついて、荒っぽい粗野な人間たちに囲まれ、東京を軸としながらも、街を、国を転々とし今まで育った自分は、徹底的に中途半端の権化、マスターくらいなもんだと思い、中途半端を味わい尽くす感性に自惚れてしまう。

まともな神経じゃ生きていけないこの街に、まともじゃない状況が重なり、まともでない人間が歓喜している、それは自分だけではないとみた。

コロナが始まった頃の猛烈なワクワク感が、生活における悩みに気圧されて、忘れがちになっていたが、そうよ、この世はワンダーランド、弱肉強食、完全なる不平等ゲーム、それを逆さまに考えていた自分が可笑しくって仕方ない。久々に、いや、もしかすると初めてそれを完璧に理解した今、その逆さの視点で見つけた自分の使命を、逆さだったんだから…と捨ておかず、新しいやり方で達成できると解を得た、気持ちいい。

半端者が自分に一等賞をあげるための道筋は、大胆に、怖がらずに仕事をして、喜びを人にだけでなく自分にも与え、家族、夫婦の愛情を大切に、隣人を大事にし、今いる所を桃源郷に変える運動量とバランスの良い食事、適度な酒と、控えめな煙草に煙、時に未来を語らい、美しい音と共に、深い眠り、夢見心地な朝に冷たい水、大抵のことはなんとかなる、いつも、いつでもどんな時でも心に太陽を、遙かなる島に想いを馳せたりなんかしたりして、生きる、生きる、生きる、達成する、喜怒哀楽、感謝感激雨霰、邪な心に喝を入れて、起きろ、目覚めよ、生き抜け、今を。

「あらゆる事象は満月だ、丸だ、おっぱいだ!」

Music : NONMIXMIX by 山本純子
Location : 世田谷、東京、半端者の寝床の中


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